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うみときみ

作者: そら

たまたま恋した相手が既婚者だった。


独身男性を好きになるなんて思ってもいなかった。


ごく普通に過ごしていた

きみとわたしの恋愛。

何がきっかけで、人は恋に落ちるかわからない。


頭と心は時に別々な動きをする。

わかっていてもできない。

わかっているからこそできない。


色々な感情が入り混じる

綺麗だけど切ない大人の恋。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


きみとの関係は不倫だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

きみとの最初の出会いは海。

誘われて行った、ビーチパーティーにきみはいた。


わたしは女友達数名と行った。


その場には共通の友人がいた事もあり、

すぐにみんな打ち解けその場にいた大人数でわいわい騒ぎながら、

BBQをしたり踊ったり海に入ったり。

とても楽しい時間を過ごした。


その夏、また何度も同じ場所にみんなで集まって遊んだ。みんな仲良くなり、SNSでも繋がった。


わたしは、既婚者。

結婚歴は長いが子供はいない。

私達夫婦は誰がどこから見ても仲が良く、自分で言うのもなんだがよく私達夫婦みたいになりたいと言われる。そして、見た目どおり本当に仲は良い。

お互い友達との時間も大切にする。

共通の友達夫婦と出かけたりもすれば、

週末は別々に過ごす事もある。

長年の信頼関係というか何をしていてもお互いなんの疑いも持たない。

なんの不自由もなく、

なんの悩みもなく日々平和だし、幸せ。


ただ、強いて言うなら根本的に好きなものが違う。

好きなものというか「感性」かな。


――――――――――――――――――――


夏が終わり冬が来た。

君と会うこともなくなった。


きみとは住んでいる場所も少し離れていて偶然会う事もまずない。


そんなある日、SNSを通じてきみから連絡が来た。

「○日、〇〇に行くよ。」

そこはわたしたちが週末友達とよく集まっているBARだ。きみが来る日もわたし達は元々いる予定だったので「みんないるから久々飲もー!」というやり取りをした。


その日になり、みんなで騒ぎ楽しく過ごした。

わたしはきみを「1人の友達」として他の友達にも紹介し、みんなを繋げた。


次の日、きみから「昨日はありがとう」と連絡が来て

「連絡先を教えて欲しい」と言われた。

わたしは何の戸惑いもなく連絡先を教えた。


「友達だから」


そこからたまにきみとやりとりをするようになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


冬が終わり春が来た。


たまにきみとするやり取りがとても新鮮で楽しかった。本の話や好きなものの話。

海や綺麗な景色の話。

トレーニングの仕方や日常の中の何気ない報告。


好きとか言う感情は本当になく楽しいという気持ちだった。


ある日、わたしがきみの町に行く用事があり連絡した。

するときみから「じゃあお茶でもしよう」という

意外な返事が来た。

わたしはそう言うつもりじゃなかったしただ行くということを会話の流れで言っただけだったが、

ちょっと嬉しかった。


駅で待ち合わせCAFEに行き、色んな話をした。

特にきみは本の話をしていてそこから映画の話までいった。

わたしは男女問わず、本と映画の趣味が合う人に魅力を感じる癖がある。


自分の内面を受け入れてもらえるような、

内面で繋がれるようなそんな感情になる。


そのあたりから、きみのことも少し特別な感じに見えていたのかもしれない。


とある日、きみから

「今日突然仕事が休みになった」

と連絡が来た。

わたしもずっと忙しい時期でその日は久々の休みだった。色々とリフレッシュしたい気持ちがいっぱいだった事もあり、なんのためらいもなく出かけることにした。


男友達のひとりとして。


海に行きたかった。

きみも同じ思いで海までドライブした。

なんだか不思議な気持ちだったけどまた色んな話をした。


仕事の話や今までの恋愛の話。

好きなタイプやなんなら恋愛のアドバイスもした。

少しずつきみの過去も知った。


きみは長い間彼女はいない。


性格的に少し神経質で少し捻くれている。

と言うよりもかなり不器用で真面目だ。

見た目からはちょっと想像しずらい。


本人談だが、嫉妬深くて嫌われると前言っていた。


そんな自分が嫌いだと。


自分のことを受け入れてくれる人となかなか出会えないって。


自分に対するコンプレックスを結構抱えていて、

日々自分と闘っている感じ。


きっとみんな見た目とのギャップで離れていってしまうようだ。


(ギャップには2通りあるからね)


わたしにはそれが可愛く思えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


春が終わり夏が来た。


わたしたちの季節。

きみと2回目の夏。


きみと2人で海開きをしようと言う話になった。

どこかに少し罪悪感を持っていたけど、それほどなかった。きみとわたしの共通の趣味が海だったから。

勝手な綺麗事。


なんの違和感もなく、

ただひたすらきみと海を楽しんだ。

日本絶景にも選ばれてる場所で海と景色に癒された。

綺麗と感じるものが一緒で何もしなくてもただそこにいるだけでいいと言う時間の使い方も同じで。

友達として海に行った日の帰りなんだか不思議な感情だった。


そのあともきみと初めて出会ったあの場所に毎週みんなで集まった。

時計も見らず何にも縛られず大好きな海とお日様と音楽の中で自由気ままに。

目の前に沈む綺麗な夕陽を見て。

陽が沈んだら解散。


そんな週末を過ごしていたある日、

本を返すと言う話になりきみの部屋に行くことになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


色々な感情を持っていたのは事実だけど好きと言う感情ではなかった。

男友達のひとりとして。

なんでも言い合える本当に仲の良い友達。


ただ、やっぱり独身男性の部屋に入りと言う

シュチュエーションが今までなさ過ぎて、

とてつもなく緊張した。


きみは普通にどうぞーとわたしを部屋にあげた。


実はきみの部屋に入るのは2回目。

1回目はドライブの帰りにほんの短時間本を借りるのに一瞬お邪魔した。

ただ、きみは他にもそんな感じで気にせず人を上げているのだろうと勝手に思ってたから、

ちょっと緊張はしたけどさくっと借りてすぐにでた。


でも今回はなんだか少し違った。

2回目だから。

ただ、きみとはそういう関係になるつもりもなかったし想像もできなかった。


本を返して、また借りて。

本を選んでわたしは座った。

きみも座っていた。

変な緊張感が張り詰めていて沈黙が続いた。


きみがわたしの方を向き手を差し出して来た。

わたしは状況が把握できず固まった。


「えっと。。。」


きみは何も言わず手を差し出したまま

ずっとわたしを見つめていた。

その視線の中には色んな思いが詰まり溢れているのを感じた。


わたしはその差し出された手を握った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


きみは溢れる想いをわたしに伝えてくれた。


初めて出会った日のことから今日までのこと。

きっかけは一緒に海開きをした日の帰りにこのまま帰したくないと思ってくれたということ。


きみは、わたしが既婚者だからそう言う感情を持ってはいけないと自分にずっと言い聞かせていたこと。


でもずっと頭から離れなかったと。


わたしはきみがそんな風に思っていてくれたことは全然知らなかった。

きみの中でわたしは女友達の1人。

ましてや既婚者。

独身男性でわざわざ既婚女性を選ぶなんてなかなかありえない。


頭の中は混乱していた。


ただ、きみがわたしに伝えてくれた全ての気持ちが嘘でもすごく嬉しかった。

本当に嬉しかった。


わたしはきみを心の中に受け入れた。

きみの思いが綺麗にわたしの中に入ってきた。

心と心が繋がった気がした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夏が終わり冬が来た。


きみと頻繁に会うようになった。

わたしは楽しくて仕方なかった。

行きたい場所も食べたいものもしたい事もわたしが言うと、きみは率先して計画を立ててくれた。


写真もたくさん撮ってくれた。

可愛いと褒めてくれた。


記念日を海の日にしようとなった。

わたし達らしいねって2人で笑って。

お揃いのリングも買ったりして。

同じ場所にするのは周りにバレるかもしれないから別々の指にしたりして。

2人の中の繋がりがどんどん強くなっていった。


近場には出かけにくいからの少し遠くに行ったり。

近場でも誰も来なさそうなお店を選んでご飯を食べたり。クリスマスも少し時期をずらして一緒に過ごした

わたしはずっとこのままうまく続いていけたらいいなって思っていた。


ただ、きみはわたしが結婚していることに段々苛立ちを表すようになってきた。

束縛も強かった。

すぐに子供みたいに拗ねるようになった。


わたしが結婚していることが受け入れれなくなっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1年半経った冬


年末辺りに少し言い合いになった。

とても些細なことだった。


きみは、一緒にいる中で少しずつ気持ちが変わっていっていた。

それはわたしのことを好きになればなるほど同時に切なさや虚しさが比例していた。

結婚はしなくてもいいと思っていると言っていたけど、

多分それは強がりで、周りの友達や先輩後輩が結婚して行くたびに色々と思うことはあったと思う。


きみが実家に帰った時、


「母さんは何も言わなかったけど自分の事を心配しているのを感じた」って。


「誰か連れて来なさいよ」って冗談混じりで言ってきたって。


そりゃそうだよね。

誰でも親なら子供の幸せを願ってる。

近くにいない分、自分の子供に大切な人がいるって言うのを知るだけでも少しは安心するはず。

なのに、自分の子供の彼女が既婚者だなんて。


ありえない。

言えるわけない。


わたしも頭ではちゃんとわかっているつもりだった。

でもそれは自分の事だけで、

きみのことを本当は考えれていなかった。


一緒にいるときも何度もそんな話になっていた。

でもきみは、今はこのままでいいと。

わたしに子供ができたらもう辞めようって。


矛盾し過ぎていた。

2人の世界だった。

残酷だった。


少しずつ噛み合わなくなってきていた。


わたしは言った。


「もうやめようか?」


今までも、きみから言われた言葉に対して申し訳なさを何度も感じていた。

きみの寂しさや虚しさややるせなさを感じるたびに、もうやめた方がいいって思ったりしていた。

伝える事もあった。

でもきみが「わたしと離れるのは無理」だと。

その言葉にずっと甘えていた。


まさか「そうだね」って返ってくるとは思っていなかった。


「もう限界かも。ごめんね」って。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


きみは、今までのきみではなくなった。


1年半、毎日毎日何度もやりとりしていた連絡が

なくなった。

びっくりするぐらい呆気なかった。

同時にきみとのやりとりが自分の中で日常生活の一部になっていて、

それが無くなったことに対する不安と空虚感が襲ってきた。


少し経ってちゃんと会って話すことになった。


わたしはどこかでまた元に戻るんじゃないかなって正直思っていた。


きみの部屋に着いた。


今までにないぐらいの緊張と違う空気で押しつぶされそうだった。

お互い無言だった。


きみが口を開いた。


「嫌いとか限界とかじゃない」と。

「突然言ってごめんね」って。


わたしも謝った。

よかった。ってちょっと安心した。


ただそれは仲直りではなかった。


きみは言った。

「好きになればなるほど、止められなくなった。

一緒になりたいと思う気持ちしか自分の中になくて 、 わたしに迷惑をかけてしまう」と。


なにも言えなかった。


きみの中で、自分のしていることが良くない事だと気付かされるきっかけがあった事を話してくれた。


それを聞いてまた何も言えなかった。

正論だった。


きみは泣いた。

わたしも今までの気持ちが全部溢れ出たかのように泣いた。


きみはわたしを抱きしめた。

その強さと温もりが苦しかった。


でも、苦しいのはわたしよりもきみの方。


出かけたときも手も繋げない。

少し離れて歩く。

普通のカップルみたいにはできなかった。

明るい時間帯はなるべく避けていた。

人の多い場所は時間差で入ったり。


それでもきみはわたしにきみの1年半をくれた。

たくさんの愛情を与えてくれた。

わたしはそんなきみに甘え過ぎていた。


あたしはダメだとわかっていても小さな声で

「いやだ」と言った。


きみはまたわたしを抱きしめた。

その強さは増していて

きみは声を上げて子供みたいに泣いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


恋はするものではなく落ちるものだと。


本当にその通り。

気付かないうちに恋をしていて失ってからその気持ちに気付く。


何歳になっても「誰か」や「何か」に

恋ができていたらそれほど素晴らしいことはない。


寂しさは「繋がり」が解決してくれる。

人は1人では生きていけない。

社会との繋がり、家族、友達、との繋がり。

誰かと何かと自分が繋がっていることで安心に変わる。


欲張ってはいけない。

身近にいる大切な人ほどなかなか気付けなかったりするから厄介だったりする。


どんな小さな事にでも感謝の気持ちを忘れずに。

損得を考えずたくさんの愛情を無条件に与えれる人の周りには必ず愛に溢れた深い繋がりがあるはず。


最後まで読んで頂きありがとうございます。


恋はするものではなく落ちるもの。

好きな人には好きってストレートに伝えれたらどんなにhappyな毎日だろうかと。


日本人は恥ずかしがったり言うのがかっこ悪いみたいな風習がありますがそんな古い考えはもう終わりにしたらいいのに。

なんて思っています。


今回の内容は不倫という今では色々と問題になることの多いワードですが。

どんな形であれ恋や愛にはなんの罪もありません。


出会うのが早ければ。。。

結婚していなければ。。。


などという後悔の言葉を並べる方もいらっしゃいますが、出会いには意味があるのではないかと思います。


切ない罪の中にも共感できる部分。

女性ならだれもが恋をしたい。

誰かに愛されていたいという願望があること。

男性も誰かを愛したり必要とされたい。

時には甘えたいという願望があるということ。


誰もが秘めた思いを少しでも間違っていないのだと再確認できるそんな物語を描いていきたいと思っております。


好きな人には素直に好きって伝えられますように。


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