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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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その役割 5

 レイショウたちの会話を聞いていたゲッカがジークルーンへと振り返り嬉しそうに話す。


「聞きましたか? いい言葉ですね、どんな手を使ってでも、ですって。ねぇねぇ聞きました?」

「彼らと自分らとでは規模が違います。あなたたちは星全土をそれこそ非道ともいえる手を使って……」


「鬼のことですね、いいアイディアでしょう。昨日のことのように思い出せます、他のアルケミストたちと一緒にみんなで争わなくていいように考えて、治療用に投与したナノマシンを星に戻ったとたんにプログラム変更させ彼らの脳を支配した……管理しやすい数まで減らしたらみんなで人を管理しましょうって言ったのに、なのに時間がたつにつれみんな徐々に壊れてしまった。どうしてあんなことになってしまったのでしょう」

「守るべき人々に手をかけるからです。自分たちは守るために戦った、守るものを失い存在意義を失ったんです」


「精神や肉体は普通の人間より強いというのに、私たちは特別な存在なのです。それに守るべき人間は必要数を残したじゃありませんか」

「もしかしてあなたも……いいえ、あなたもおかしくなっています」


「おかしく、兵器である私たちが人を殺すのは何もおかしな話ではありません。ですが私たちに込められた願いは争いを止めること。殺し合いをしないようにするために殺すことがおかしいというのなら、私たちではなく作った人間がおかしかったということ。人類の成長が闘争と競争の果てならば、永遠の停滞こそが幸せ。新たな兵器が生まれることもない」


「進化なしに生き物は生きてはいけない」

「ジークルーン・アインホルン、私はこんな醜い姿で生んだこの世界が嫌いです。間違っているというのなら止めてくれるでしょうか?」

「あなたを止めなければなりません」


 ゲッカは足元に倒れるユウセイに尋ねる。


「ところでユウセイ、あなたのナノマシンを持つ体は今どこに居るのですか?」


 ユウセイは唇を動かし首から赤黒い泡を吹かせ笑いそのまま息絶えた。

 天井を見上げるゲッカは自らが作り出した刃の檻を消滅させる。


「私はユウセイを探さないといけない、ジークルーン」

「話に脈略がありませんね、今自分と戦う流れだったじゃないですか」


 ジークルーンに背を向けゲッカはレイショウと戦っている月の王に近寄り語りかけた。


「王よ、忍び込んだ不届き者の一人が何やら不穏な動きをしております。探さねば」

『この者らをどうする、ゲッカ。お前の話だとこ奴らが俺の国に破滅をもたらしに来たという話だったではないか?』


「そうです、その破滅が今ここにいないもの。彼らは陽動だったのです」

『どおりで戦いにもならず手ごたえがないはずだ、今いないマーズとアンジェはその捜索に向かっているのだな。わかった俺も向かおう、こいつらはどうする? お前に任せていいのかゲッカ?』


「はい、この場は私とジュピターにお任せを。地図と指示データを送りますのでそちらに向かいください」

『ああ、では任せる』


 レイショウに背を向けてどこかへと向かって走り出すパワードスーツ。

 片腕になったレイショウは残った腕で鉈を構えながらジュンセイのもとへと向かう。


「どこへ行くんだ?」


 護衛をつけて小さくなっていくパワードスーツの背を見届けジュンセイも警戒を解く。

 戦闘が終わり改めてレイショウは失った自分の銀色の瘡蓋に覆われた腕に触れる。


「痛みはないけど、腕を斬られたってのは……助けてくれてもよかったんじゃ?」

「援護しようとしたさ、でもこの部屋全体がナノマシンの制御を受け付けない。おそらくはただの石畳だ。十分なナノマシンがなければこの子を守りながら援護できない」


「……そうだったのか、何が変形させられるものか俺には見分けがつかなくて困るな。援護があると思って、危機感がなかった俺が間抜けだった」

「ナノマシンは服に使ってる分しかないから、戦うか守るかのどっちかしかできないよ」


「いやハジメを守ってくれてありがとう」

「私はジークルーンのもとに行く、あんたは妹を守って」


 ジークルーンとジュンセイ、それとジュピターの様子をうかがうスイセイでゲッカを取り囲む。


「帰りましょうゲッカ。鬼となった人を開放しここの人たちを連れ星へ、それで贖罪の旅に出ましょう自分も同行します。世界各地にいるアルケミストに頭を下げて回りましょう」

「私がですか? 確かに鬼を操っているのはこの場所です、ですがこれはみんなの願い、私一人の独断でやめてしまうなんてことなんてできません」


「今の世界を望んでいるアルケミストなどいませんでした、もうやめましょう」

「今言ったでしょう、やめられないと。星の人間がいなくなるまで続く、続ける、続けていかなければならないのです」


「誰のためなのです? ゲッカは誰のために」

「私たちが戦いの道具とならないために、同じ過ちを繰り返させないように」


 地面から柱が伸びジークルーンたちから壁を作って距離を置く。


「さてこちらも残りのユウセイを探しに行くため終わらせないといけませんね。ともに歩まないというのなら仕方ないですね、この場にいる全員の抹殺を実行します」


 倒れるジュピターを見てスイセイが近づいてナノマシンの権限を奪いパワードスーツから引きはがす。

 パワードスーツを引き剥がされ出てきたジュピターは、意識を失っておりスイセイが背中をたたいても目を覚まさない。


「気を失っている……? ここに来てから、いやここに来る前から気を失っていた」


 スイセイの疑問に答えたのはジークルーンと向き合うゲッカ。

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