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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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その役割 4

「戦争ですか?」

「気が早いですね。でもそうですね、長話する状況じゃないしさっさと戦争の原因について話すとしますか。最初は小さな声だった。星にいる彼らは、我々は苦労して働き狭い家でわずかな食料を分け合って暮らしている、なのに月のやつらは広い家で働くことなく贅沢を貪っているって」


「それは誤解でしょう、月にいる方々だって働いていたはずです」

「そんな言葉いくら言ったって納得なんかしないのでしょう。当時の映像が残っていたので少し拝見したのですが、少し大げさに誇張されていましたね。勘違いしてもおかしくないように、月の意図だったのか星の疎みだったのか。人って生き物は羨み嫉妬し貶めたがる。武器がダメなら暴力で、暴力がダメなら言葉で、人は人を傷つける。どうしようもないんですよこの生き物は」


 あきれた声で笑いながら続けるゲッカ。

 攻撃を躱しながら関節部に鉈の刃を打ち付け行動を止めようとするレイショウたちの金属を金属が叩かれる音が響く。


「そんな連中が月を相手にする際にともに協力し強い仲間意識を持つように、星の内側でいがみ合うことの無いように、我々アルケミストは作られた」

「ええ、苦手意識を持つことはあっても、何かあればともに協力し知恵や力を出し合って苦難を乗り越えるようにと、我々は生まれた場所は違えど同族で家族だと」


「それだけが我々の美しさだった。醜い人間たちとは違い我々は強い仲間意識でつながっている争うことはないこれから先もない、そう思っていた」

「そうです、そのはずです」


 ジークルーンが伸びる刃を分解し道を作る。

 その先でゲッカはユウセイの首元には細いナイフを突きつけて待っていた。


「できま……せんよね?」


 その返事とばかりにゲッカはユウセイの首を搔っ切る。

 飛び散る鮮血。


「なんてことを!」

「私、弩級天翔戦艦クラスのアルケミストは前期、中期型のアルケミストを攻撃することができる。アトランティカ立ち二も私と同じプログラムを渡した。お互いに争ってはいけないというアルケミストたちにあるはずの枷が私にはない、どうしてかわかるか?」」


「……いいえ。ナノマシンにあった情報を自分で書き換えたのですか」

「それならば自分を恨むこともできただろう。我々は月との戦争後に予想される星の内側での争いのために作られました。こんな悲しいことがあるでしょうか、私らアルケミストは星を守るため、それが最後の戦いにするために生まれてきたはず。それが、それなのに次の戦いのための準備として私らは生まれたんです、私は美しい存在として生まれなかった」


「どういうことですか?」


 首から血の泡を噴き上げるユウセイを手放しゲッカはジークルーンのもとへと歩みだす。

 助けに行きたいジークルーンだったが、ゲッカの存在がそれを阻んでいる。


「ゆうせいっ!? そんななんで、自分たちは……」


 ゲッカの手にしたナイフから滴る血を見てジークルーンは思わず後ろに下がった。


「ジークルーンアインホルン、私の名前は知っていますか?」

「……アケボシ、ゲッカ、ですよねユウセイと姉妹艦。自分がいたころにはいなかった弩級の天翔戦艦だと」


「月の華と書いてのゲッカ。戦争が終わりそこを支配するものとして私は生まれました」

「今のこの状態は必然だと? あなたが月を思うがままに私物化するのは、設計通りと」


 重たい音とともに小さく地面が揺れる。

 ジークルーンとゲッカが話を止め音の方角に振り返るとパワードスーツを仰向けに倒したレイショウの姿。

 レイショウはパワードスーツの鉈を首元に突き付けた。


「諦めたらどうだ、俺の勝ちだぞ。降参しろ」


 その問いに返答はなくパワードスーツの装甲が変形しレイショウに向け棘が伸びてくる。


「レイショウさん!」

「お兄ちゃん!」

「レイショウ!」


 伸びてきた棘を躱そうとしたが一瞬の出来ことで体が動かず、鉈を持つ腕が肩から切断され銀色の腕が宙を舞い鉈と腕は床に転がった。

 腕の出血はすぐにナノマシンによって止められるが千切れた腕は元には戻らない。


「ぐぅ、なんだ!? 腕が、斬られた」


 よろめき倒れるレイショウとは逆に立ち上がるパワードスーツ。

 伸ばした装甲を元に戻し、弱ったレイショウに振り下ろされる剣をハジメを抱えるジュンセイが壁を作って守る。

 振り下ろされた剣は衝撃で折れ、剣先は勢いよく回転し施設内と跳ね回った。


「離れて、もうあんたに勝ち目はない。こちらに来れば守れる、戻って来い」


 飛んでいった剣から月の住人を守りながらレイショウに向かって鎖を伸ばすが彼がつかむ前にパワードスーツに掴まれ引っ張られる。

 即座に鎖を断ち切るがよろけてジュンセイは倒れハジメも一緒に倒れた。


「いたっ」


 パワードスーツは首を動かしジュンセイとハジメを見る。

 彼女らに向かって歩き出そうとするのを鉈を拾い上げたレイショウがジュンセイたちとパワードスーツの間に割って入った。


『全く、巫女に囲まれながらこの始末。その子供は巫女ではないようだな』

「巫女?」


『物を思うがままに作り替える力、人知を超えた神から与えられた力だ。まだ戦うのか、もう片腕も切り飛ばしてやろう』

「ジークルーンから借りている力だ、普通に戦えばお前なんかに負けるわけがない」


『卑怯だと言いたいか? どんな手でも使って勝つ、守る為ならな。非道も外道も俺が引き受け、汚名を被り民を守ろう』

「ああ、どんな手を使ったってお前と倒す」


 2人を見ていたゲッカは笑いながら肩をすくめる。

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