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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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その役割 3

 

「かつての私の同胞、星に住む者たちでございます」

「そうか。先に見に行かせたアンジェはどうした?」


「アンジェリカ・アトランティカ戦闘で深手を負い、マーズは命を失いました」

「ならばこいつは敵か」


「左様でございます」

「なら力をよこせ俺が相手をしよう」


 月の王は立ち上がると椅子が形を崩し銀色の液体へと形を変えると、男の体を包みジュピターの着ていたパワードスーツと同じものへと形を変える。

 手には大きな盾と剣を持ちレイショウへと向かってきた。


「力を貸し与えた!?」

「こっちだっておんなじことしてるんだから驚かない。それより力を貸し与えているのなら今のゲッカは無力、私らで取り押さえられる」


「そうでした、行ってきます」

「私も行くよ」


 ジークルーンとユウセイが月の王とレイショウが戦う横を回り込んでゲッカのもとへと向かう。

 壁際に移動して立ち尽くし一切動かなくなったジュピターのパワードスーツに警戒しながらも、身体能力を強化したユウセイがジークルーンを追い越しゲッカに飛びつく。


「私がナノマシンを貸し与え、今は何も出来なと思っていますね?」


 ゲッカを中心に花が咲くように地面から延びる無数の刃。

 一瞬のことで急には止まれずユウセイが刃の中に飛び込み彼女の血が舞う。


「ユウセイ!?」


 ジークルーンは刃に阻まれ足を止め、ゲッカは刃を柔らかく加工しかけ分けユウセイのそばに寄りに尋ねる。


「感情的なんて君らしくないじゃないですかユウセイ、感情を殺し今まで仕事してくれたというのにどうしたのですか?」

「それは私に選択肢を与えてくれなかったからだろう」


 刃を分解しユウセイは体中に銀色の瘡蓋を作って血を止めその場に倒れ込む。


「人を殺したくないから、鬼となったものを集めて拠点を固めた優しいユウセイ」

「それでも私の手で何万人も殺してきたけどね」


「鬼の開発と研究、とても助かりました。君の送ってくれたデータはとても役に立ちました感謝しています」

「どこが、ここはとても平和な、星の荒み具合とは比べ物にならないくらいの平和な空間に見えるけど鬼の研究がどう役に立ったのさ?」


「ここでの死者は労働に使っています。鬼というのは命令に従うだけ、機械同様に単純作業や力仕事、危険な場所での仕事に向いていますから」

「例えば不眠不休で何か月も待ち構え、文句も言わず人を襲い仲間を増やさせたりね」


「ふてくされないでユウセイ。あなたたちのおかげでここはとても良い場所となった、あなたもここで暮らさない? 国は一つしかなく皆生きるために働き、病も飢えも争いなどもない理想郷」

「夢を見ることも希望を持つこともない虫籠みたいなこんな場所がですか?」


「兵器である私たちが人を殺すことのない世界ですよ、行動に制限を設け限られた自由を謳歌する。子供の門限と同じです、決まりを破れば罰を与えますけどね」


 刃の檻の向こう側にいるジークルーンが尋ねた。


「アンジェリカアトランティカ、あなたの言う世界なら彼女はどうしてああなったんですか?」

「彼女は平和な世界に耐えられなかった、ずっと争いのことが頭を離れず彼女を不安定な存在にしてしまった」


「マーズ、ジュピターもどこかおかしかった。ここはあなたにとってだけ居心地の良い場所ではないのですか?」

「私? 私だけでなくここで暮らす人たちも幸せを享受しています」


「……今までみんなに聞いてきたので聞きます。どうして星に鬼を放ったんですか?」

「もう、戦いたくないんですよジークルーン。私たちの手で人を殺したくない、だから人に人を襲わせた」


 スイセイが動かないままのジュピターを見張り、ジュンセイがハジメを抱えて安全な場所まで逃げる。

 鉈を振るってもパワードスーツにはダメージを与えられず、大きな剣の大振りの攻撃から逃げ回るのが精いっぱいなレイショウ。

 一振りごとに命のある攻撃に当たらないようハジメはただ祈るばかり。


「ならやめましょう、戦う気がないのなら戦う必要のないことです」

「月と星の戦いは戦いはどうして始まったか知っていますか?」


「最初は開拓者だったはずでしたけど、ある程度施設ができてくると人口増加問題で一部の人間が星から月に移住したと学習した記憶にあります」

「ああ、開拓者が汗水たらしてテラフォーミングされた月に、世界中の富裕層が移住しました。開拓者のための最新の施設と豊富な資源、資金の出資に出し惜しみの無かったらしいからね。空気の正常化や水質の調整も星より簡単だったのでしょう」


「今のここもその当時のものが使われているのですね」

「そう、初めは星を見るための別荘地的なノリで開拓された月は、最新技術が至る所にちりばめられた最先端な空間でした。星からの移動が不便な点から地価も安くそれでいて星より便利なツールが集まっています。そこに各財界のトップが集まり月から星へと指示を出す政治や貿易の要となりました。住人の行動は完全管理で、月からの出入りも徹底的に監視され部外者がいればすぐに発見できるんです。そのためスパイや暗殺者の類もいない本当に安全な地でした、その結果どうなったか」


 血中のナノマシンが脳内物質に作用し痛みをごまかし、流れ出る血は止めることはできても筋繊維の修復には時間がかかる。

 ゲッカは怪我で身動きの取れないユウセイを抱き寄せた。

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