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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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その役割 2

 ジュンセイが床をめくりあげ分厚い壁を作り出し衝突させるも、壁に触れた瞬間にすぐにナノマシンの制御を奪い返し液状化させダメージを減らす。

 だが、壁を作ったことで一瞬だけレイショウを見失うジュピター。

 ジュンセイが壁を作った勢いでその場にいたレイショウは空へと打ちあがり、彼を見失い足を止めたジュピターの頭上から弓を撃ち込む。


「あたったか」


 頭部の後ろの隙間から矢は深く突き刺さり火花を散らしてパワードスーツは停止する。

 ジュンセイが地面をマットに変えて着地場所を用意し、そこに打ちあがったレイショウが落っこちた。


「……よくやった。アルケミストを二人も」

「そんな悲しい顔しながら誉めるなよ、他に選択肢もなかっただろ」


 鎧はバランスを失い地面に倒れる。

 損傷を修復し立ち上がらないかを注意しながら辺りを見回す。


「もういないか?」

「ナノマシンの反応は近くには3つ、地下に落ちたアトランティカとここにいるジュピター……あとはゲッカか」


「加減なんかしてられなかったがよかった死んでないのか。それとあのふざけたやつは生きてるのか、ならあの火にまかれたやつは」


 消火液の吹かれた泡の山を見てレイショウは尋ねるがジュンセイは首を振った。


「残念ながら、ね。火は防火服で防げただろうけど、酸素ボンベなどを背負っていなかったから」


 それを聞いて肩を落とすレイショウ。


「……そうか、ふざけたやつが生きていたらもしかしたら、誰も殺さず戦いを終わらせられると思ったのにな。それより出てこないな、無事なんだろ?」

「無理にこじ開けるかどうするか。一応は私たちが寄ってたかってナノマシンを少しずつでも剥ぎ取っていけばこの箱入りを引っ張り出せるけど、そこでまた暴れられると厄介だ」


「縛ったりできないか」

「ナノマシンで作れば向こうも操作権限を持っているから変形させ解除できる。その辺からひもか何か探してきたところで、地面に棘か刃か何か作り出してそこで斬れば意味をなさない」


「だよな」


 マーズたちを倒したことで辺りが静まり返るとぞろぞろと複数の足音が聞こえてくる。

 離れたところにいたジークルーンらがその足音に最初に気が付き辺りを見渡すと、そっと壊れた建物の物陰から何者かが様子をうかがっていた。


「ひと? ひとだ?」

「ええ、人です人間。どうして、どこの、この町は彼らの町だったのですか」

「星と同じ重力と空気濃度はこのため、なぜ重力が調整されているかわかりました」


 調整された気温や天候の中では防寒着などは必要ないためか、月の住人である彼らの服装は薄着で個性はなくすべて同じもので白色で文字も模様もイラストなどもなく酷く質素なもの。

 しかし縫い合わせた跡など見られず装飾品のようなものが生地と一体化しているため、ジークルーンたちが来ているものと同じナノマシンでできたものだと判断した。


「彼らは連れてこられた人間だと思いますか?」

「いいや、100年前、戦後からずっとここにいるんじゃないかな。星に降りてきた船は多くあったけど空に上がった船はなかったから」


「なら、ここにいるのはかつて天翔艦の乗組員であった人たちの子孫」

「月の人間の捕虜ということも考えられるけどね」


 彼らは口々に何かを話し、それを聞いたハジメがジークルーンに尋ねる。


「何か言ってる、なんて言ってるの?」

「ハジメさんからすれば異国の言葉ですね。彼らは自分たちの存在に驚いているようです、彼らはアルケミストでもないのでもし戦闘になってもハジメさんを守れますよ」


「ジークルーンは言葉がわかるの?」

「ええ、いかなる言語もナノマシンが耳から入ってきた言葉を翻訳し脳に信号として送るので言葉自体はなんとか。文化や歴史などは装置で学習しないといけませんが、自分の力を貸しているレイショウさんもおそらく彼らの言葉がわかるでしょう」


 様子をうかがう人々の中にハジメと歳の近しい少年少女らの姿もあり警戒を解く。

 彼らの姿を見たユウセイが後退りしスイセイが肩を叩く。


「ユウセイ大丈夫ですか、少し顔色が青いですよ?」

「ああ、月に籠って何をしているのかと思ったら、人が居たのでね。私は一人でいたというのに」


 倒れていたジュピターが急に立ち上がりだしジュンセイとレイショウは慌てて距離を取り武器を構える。


「その鎧脱いだらどうジュピター」

「あんたたちが鬼を、鬼を操って動かすのをやめてくれればそもそも俺らが戦う理由なんてないんだ」


 無言て立ち上がったジュピターは武器を構えるレイショウたちに背を向け歩き出す。

 ある程度離れると振り返り手招きする。


「急に黙り込んで不気味になったな」

「行きましょう呼んでいるようです」


「ついて行って大丈夫なのか?」

「襲ってこないなら、まぁ……。罠であっても守れるよう離れないよう」


 お互い顔を見合わせるもののある程度の距離を取ってジュピターの後に続く。

 さらに地下へと案内させられるレイショウたち。

 緩やかならせん階段を下りた先には広い空間が広がっていて、その広さからレイショウが建物の外に出たと錯覚する。


「外に出たのか?」

「いいえ、月のコロニー内です。でもこの広さは……ここは元は工場地帯かオフィス街でもあったのでしょうかねユウセイ?」

「流石に何があったかなんて知らないな、月に降りたことはないから」


 広い空間の中央には神殿が立てられており無言のジュピターに案内される。

 途中には上と同じように町が広がっていて、干された果実やパンのようなものが店に並ぶ。

 作業を止め住人たちが距離を取り物珍しそうに様子をうかがっている。


「スイセイが農場で建てていた神殿と似ている感じがありますね」

「同じアルケミスト、学習装置で学べる知識も似通ったりしてそれがデザインに反映されているんじゃないかね」


「ここにいる人たちは何人くらいいるのでしょう?」

「元は星から輸入していた食料や酸素、月での自給率は高くないから補給を受けられないならあまり多くは住めないはず。元あったスペースをすべて活用しているのなら、いて2千人くらいか」


 神殿の中へと入ると首飾りや帽子などを被った多少身なりが良くなったものたちを見かけるようになる。

 神殿の最奥、ナノマシンで作られたであろう上質な生地の衣服に身を包んだ柔らかそうなソファーに座る男性。

 無地な服装には金や銀など金属の光沢を放つ模様とプレートが編み込まれており、彼のその身なりの良さから上にいた者たちとは別の立場であることを理解しジークルーンたちは身なりを整える。


「お前たちが侵入者か、礼儀知らずの不届き者め。静かに暮らす我々の国に何故攻めてきた」

「あなたが月の王。突然押しかけて申し訳ございません」


 椅子に深く腰掛けたままユウセイ、スイセイ、ジュンセイ、ジークルーンと見回し男は口を開く。


「そこの女たちは、お前たちの仲間か」


 月の王は背後に控える少女に振り返る。

 短く切り整えられた白い髪に金色の瞳の少女は深く頭を下げ口を開く。

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