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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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その役割 1

 薄っすらと生える草を焼きその地面を踏んでゆっくりと向かってくる二人。

 火炎放射器の先をハジメやレイショウに向けるため、やむなくジークルーンは彼にアルケミストの力を貸し与えた。

 ジュンセイとスイセイが弓と多めの矢を持てるよう矢筒作り投げ渡す。

 相手は鬼ではなく人でありジークルーンの知り合い、ユウセイ、アトランティカとの戦闘でもあったためらいが出るが銀色の腕は弓を強く握る。


「また戦うのか」


 危険を感じレイショウが身を守るために近づいてくる二人のアルケミストに向かって矢を放つが、豪速の矢はジュピターの着るパワードスーツの装甲にはじかれ宙を舞う。

 第二射で危険な火炎放射器をもつマーズを狙うも、ジュピターが素早くカバーに入った。


『とりあえず、人間は排除。そのあとでみんなで話し合おう』

「外から人間が着たと知れれば、混乱が起きてしまう。早めに跡形もなく消さないと」


 すくんで逃げられないハジメを抱えて距離を取るユウセイが尋ねる。

 町を見渡し一度逃げる算段を立てるユうセイの一人とジュンセイ。


「私を焼いたことに関して何か言うことはないの? 私はアルケミストだよ、かつての仲間だ」

『あと何人いるのよあんた」


「内緒だよ」

『監視カメラに複数のあんたの姿が映っている、それらは今ゲッカが探している』


「ゲッカ……か」

『裏切られたと悲しんでいたよ、ユウセイ」


「ハハハ……空から私のいた場所に船を落としておいて? ……船を落としてきたのはゲッカじゃないのかい?」

『いいや彼女さ。慈悲のつもりだったのさ、これ以上苦しまないようにと』


 マーズの放つ炎の射程の外からレイショウが弓を引き絞り矢を放つ。

 しかし火炎放射器を持つマーズを守る、ジュピターのパワードスーツの装甲を貫くことはできず火花を散らして弾かれる。


「硬いな、何とかならないのかよ?」

「関節部を狙えれば止められる、向こうもそれを警戒しているけど」


「ハジメから意識を裂かせないと、いくら守られていたって火はよけにくい。俺が囮になって……」

「まぁまて。鬼相手ならそれでいいかもだけど、アルケミストはナノマシンを使って自由にモノを作れる。この建物のほとんどがナノマシンでできている、もともと月の建物があった場所に何隻もの天翔艦と鹵獲した月の船をナノマシンにしてを使って町を作り直したんだろうね。ここには何人のアルケミストがいたのやら」


「過去形か?」

「あんたチュウジョウのところにいなかったっけ、戦争後のこの世界になじめず絶望して消えて言ったアルケミストもいるだろうってことだよ。そんなことより、今さっきのアトランティカみたいに穴を開けられたら、物をうまく作れるわけでもないあんたは落ちていくだけだろう、私がともに戦う。ついてこい」


「戦えるのかよ?」

「私は盾、あんたが剣だよ」


 ハジメやジークルーンを守るため走り出す二人。

 ジュピターはマーズに近寄らせないよう人の身長より大きな馬上槍を作り出し投擲する。

 走るレイショウたちのいた建物を穿つ。


『マーズ、もう少し下がって。背負ってるタンクを撃ち抜かれればこの辺一帯が焦土になる』

「わかっている、でも近寄らないと火が届かない」


『無理をすることはない、私が時間をかけて倒す。脅威は一人』

「私はアトランティカのように狂ってはいない、大丈夫だ」


 ユウセイやスイセイらが二人を守るため何枚もの壁を作りマーズたちから視線を隠そうとする。


「あっちも鬱陶しい」

「なら私は向こうを黙らせて来る」


「まってジュピター!」


 風きり音を立てると鈍い音を立てマーズの背負う燃料タンクに矢が突き刺さり燃料が流れ出る。

 勢いでわずかにジュピターがよろけ、すぐに穴の開いたボンベを修復した。

 そこにもう一発飛んでくる矢。

 ジュピターのパワードスーツの装甲に当たり火花が散る。

 火花に引火しゴォと音を立て爆発的に燃え上がり眩い輝きを放った炎は隣にいたマーズを飲み込み、逃げる間もなくジュピターは炎の中に消えた。

 すぐに熱から逃れるようにマーズが炎から離れる。


『マーズ……』


 マーズは炎の中からジュピターが出てくるのを待った。

 しかしタンクの中身が爆発したのか帆脳はもう一度大きな炎を噴き上げる。


 異常な熱と煙を感知し排気のため強力な換気扇が回りだす。

 異常を検知し施設の高い天井から泡状の消火剤の泡が吹きかけられすぐに鎮火する。

 何枚耐熱服の厚着をしていても耐えられるものではなかったらしく彼女は火の海から出てくることはなかった。

 ジュピターの乗ったパワードスーツは改めてレイショウに向き合う。


『私たちは多かれ少なかれ狂っている、彼女は戦死者を弔い多くの炎を見て来た。最後は同じ炎にまかれ同じ場所に行けたらいいと思う』

「武器を降ろしてくれ、戦争は終わったんだろ、戦う理由ってなんだよ」


『私たちがいる理由さ』

「わかんねぇよ」


 パワードスーツはレイショウに向かって走り出す。

 重く一歩踏みしめるたびに石畳が割れわずかに地面が揺れる鎧は、その重さを感じない圧倒的な速度で距離を詰めてくる。


「馬鹿が……」


 ジュンセイが地面から小さな障害物を作り出すと、それに躓きパワードスーツはバランスを崩す。

 それでも歩みは止まらずレイショウへと手を伸ばした。


『お前たち人間が……』

「もうやめてくれよ」


 レイショウは鉈を抜き関節部を狙って刃を振るう。

 ジュピターは腕の部分を大きな槍へと変えレイショウへと振るった。

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