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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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月 4

 

 アルケミストたちは自力げ上がり最後にレイショウ引き上げられると床の穴が塞がった。


「あいつ落ちていった……」

「仕方ありません、誰にも予想できませんでしたから。傷は塞ぎました無事でいると思いましょう」


「あいつを捕まえに行くのか?」

「行き当たりばったりですが、月にいるアルケミストはまだいるはずです。彼女らを探します」


 少し離れた場所でジークルーンたちが帰ってくるのを待っていたハジメとユウセイたちは閉じられていた扉が開くのを見て振り返る。

 パワードスーツを着た人影と、銀色の重そうな生地の服を着た人影が新たに表れた。

 二人はある程度の距離まで近づくと足を止めジークルーンたちと向かい合う。

 彼女のたちを認識したユウセイが彼女たちの名を呼ぶ。


「ジュピター・クリスタルとマーズ・クリスタル」


 厚着をした女性の背には背中には大きなタンクを背負い、そこから伸びたホースを手にしユウセイたちに向けている。

 とても酸素が貴重な宇宙で使うことが馬鹿げている武器、火炎放射器。

 あまりの驚きにユウセイたちが慌て慄く。


「戦争は辛いものだ、話したことも何の恨みもない見ず知らずの者から親しくなったものまで次の瞬間には命を散らして死んでいく。恨みに恨みが積み重なってクロワッサンのようになり、戦場に赴かなかったものが美酒をすする」

「そうだね、私たちの嘆願は届かず仲間やアルケミストたちが死んでいった」


 彼女の持つホースの先がハジメに向けられた。

 それを見て眉を吊り上げユウセイが前に出る。


「こんな子供に罪はないだろう?」

「芽は早いうちに摘む。星で育った子だ、ここにいるってことは鬼が何なのか話してしまったんだろう? 知ってしまったからにはいつかは仲間を募って私たちに牙をむく、何ができるが知らないがだからと言って放置はしておけないんだ」


「人間が月へと来れるとでも?」

「今こうして二人もいるじゃない」


 そう言って火炎放射器の引き金を引いた。

 驚くものの即座にナノマシンでできた地面を引きはがし壁を作り出すユウセイ。

 しかしその壁は炎は防げても熱が彼女を焼く。

 そばにいたもう一人のユウセイがハジメの襟をつかんで投げた。


「任せた!」


 そこに駆け付け宙を舞うハジメを受け取るジークルーンたち。

 ユウセイたちがいた周囲は激しく燃えており、炎に包まれた人影がゆらゆらと炎の中で踊る。

 そして何事もなかったようにジュピターは続けた。


「彼女からの私への指示は星の人間が間違った行動をとらないように、見張ること。我々は人々が間違った行動をとらないようにしている。鬼を使って」

「それは曲解解釈です。あなたはどうして、鬼を、人に人を襲わせるあんな惨く醜いことができるんですか」


「心苦しかったなあの時は。私らの放った鬼のせいでともに戦った戦友が人に不信感を抱きそれでも使命を守ろうとして壊れていく、これほど見ていて悲しく辛いものもないだろう」

「なら、どうして!」


「酷いじゃないか戦って死ぬのが私らだけなんて。多くの仲間がアルケミストが戦いで散っていった、それなのに星の連中は勝敗だけを気にするだけで他人事。アルケミストと軍人が戦いを終わらせて帰ってくるのを普通に暮らし追加徴税で暮らしが圧迫されることに不満を言いながら待つだけ」

「多くの人は国の未来より自分の生活でままならないはずですからそれは仕方なく……」


 ゆったりと歩いてくるクリスタルら二人から距離を取るジークルーンたち。

 レイショウがジークルーンにアルケミストの力を貸すよう目で訴えかける。


「月の攻撃で街に被害が出ました、ちゃんと防衛していなかった私らのせい。戦争にお金がかかります、さっさと勝って無駄な戦争を終わらせろ。月相手に劣勢です泥沼です、私らがちゃんと戦っていないからだといいたい放題。こんなのを守れと? 我々の先輩同僚後輩はこんなやつらのために死んでいったと? 戦いは終わり戦うために用意された我々には勝って当然とねぎらいもなく。私にはそれが出来なかった、どころか私の敵は月でも星でもなく守るべき人間となった」

「それがあなたが敵対した理由ですか」


「月との戦争が終わったらどうなったと思う?」

「え?」


「次は誰が月に行くか、だ。戦いで勝ち取った領地の分配、被害の多く出た国に復興金という見返りを求める同情、月資源の奪い合い。懲りないんだあいつらは、争って手痛い思いをしたはずなのにすぐに次の戦いの準備を始める」


 ジークルーンへと向けられたホースの先から噴き出す火炎。

 眩い光と熱量に床のナノマシンをめくりあげて壁を立て、慌てて迫ってくる炎の柱逃げ出す。


「火炎放射器……しかし、この距離を?」

「天翔艦の燃料だよ! 爆発的な推進力と燃焼効率だけを考えた危険な調合品。今のでも霧吹き程度の噴射量だよ、水鉄砲程度の量なら焼け死んでいた。とはいえ火力の調整も難しいだろう、耐熱服を着ても全力で燃やせば炎の放つ輻射熱は完全に防げない」


 炎を弱めタンクを背負った女は舌打ちをする。


「距離の目測が甘かったか、もっと勢いよく吹き出るはずだったんだけど」

『……換気扇の風の勢いが計算に入っていない』


「それか、まぁいい近づいて焼けば問題ない」

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