月 1
残ったナノマシンを使って月面を走れる車両を作る。
人の乗る部分以外ほとんど剥き出しのフレームでできた6輪の小型車両。
「争いに巻き込まれないようハジメさんとユウセイを何人かここで待機させますか?」
「この脱出艇、装甲はないに等しいから一発でも撃たれたら形も残らないよ」
「連れていきましょう」
すし詰めになるようにレイショウたちは車両に乗り込む。
「残った燃料だとこの車両が走るのは片道が限界だろうね」
「予圧出来たらすぐにこのままあの建物に突っ込みます、いいですよねジークルーン?」
「空気を抜き終わった、出るよ。舗装されていない道を走るから揺れる、舌を噛みたくなかったら口閉じて。ユウセイ邪魔、運転するから私の周りに余白を頂戴」
「ユウセイが多いです、あなた何人来たんですか!?」
「ハジメはちゃんといるか?」
「いるよー、せまいー」
着陸した脱出艇から出ると近くにあった建物の中に向かう。
攻撃を受けないように全速力で走り出し半球状の建物へと向かって進む。
建物はナノマシンで作られていて、車両は速度を落としながら建物に体当たりする。
ぶつかった衝撃で車両は激しく揺れ、即座にユウセイが気密室を作り電源を奪い安全に真空の空間から空気のある屋内へと入った。
「もう、大丈夫この空間には空気があるよ」
「なかったらバカみたいな死に方してただろうね」
「建物の中は重力もちゃんと調整されているようだ、とはいえ少し弱いな」
「レイショウさん、ハジメさん無事ですか?」
車両は突入カプセルへと変わり建物に穴を開けて、全員押し出される感じで建物の中に入る。
建物の中は外より幾分か強い重力があり皆床に倒れ込んだ。
「空気があるってことは誰か近くにいるんですかね?」
「ふぅ、息苦しかった。ここは寒いな」
「ここからは手分けして探すか? 戦闘になることは間違いないが、ここはナノマシンでできているアルケミストと出会っても逃げながら戦うことは出来そうだけど」
そこには畑が広がりまだ若く青々とした小麦が揺れている。
常に冷却ファンが回っていて人工的に風を作っていた。
立ち上がりユウセイやスイセイは施設内に散らばって小麦を調べ始める。
「ユウセイ、これは?」
「見ての通り食べ物だね、手入れもされていて100年前の物でもないのは見ての通りだ。最近植えたものだろうね、規模わからないけど少なくとも人は住んでいるようだ」
人工物の中に広がる畑に驚く一同。
外からは建物内部を見ることはできなかったが内側からははっきりと星を見ることができる。
「外からは窓がなく内部の様子を見ることができませんでしたけど、太陽の光を取り入れられるようになっているんですね」
「マジックミラーか何かと似た感じじゃない?」
すぐにジュンセイが敵地に入ったことを思い出し武器を作った。
「空気がある場所で助かりましたね」
「奥に扉が見える、二か所だ。あの柱のところ、二手に分かれるか?」
「仮に移動した先でアルケミストと出会って戦闘になった場合、戦えるのがレイショウさんしかいません」
「戦闘になるって理解していてくれてよかったよ。戦闘員なら最悪、この子がいるじゃないアルケミストではないから私らが力を貸せば……」
そこまで言いかけユウセイの頭をやさしくはたくスイセイ。
近くにいたジュンセイがハジメの頭を撫でるユウセイから彼女を奪還し、ジークルーンが抗議する。
「前にもそういう目的でこの子を連れてきたわけじゃないって言ったじゃないですか」
「わかっているさ。もしもの時はだよ」
「そんなときはありません」
「はいはい、それが望ましいね」
一同はドームを支える柱として立っている場所にある扉の方へと向かった。
「エレベーターのようだな?」
「月の地下へと続いていますね」
「まぁ、戦争していたのだから地下に安全区画を作りますよね」
「そもそも、月表面は隕石もあるし防衛機構があってもそこまで安全じゃないみたいだよ。戦争中も隕石は数発落下していたみたいだし」
ジークルーンたちは恐る恐るエレベーターに乗り込む。
「下で待ち伏せられているでしょうか?」
「一応このエレベーターの素材はいつでもこちらの制御化に置けるようにはしたけど、下で天翔艦の主砲を用意されていたらこの量では防げない」
「閉じられた空間なので逃げ場もありませんしね」
「祈るしかないでしょう」
ユウセイが4名ほどこの場に残る。
彼女らに手を振り扉が閉まり下へと下降を始めた。
ゆっくりと降下しエレベーターが月地下内へとたどり着くと扉が開くとともに放たれる一撃。
轟音とともに柱ごとエレベーターは吹き飛び、後には途中で折れた柱だけが残った。
「終了、ここまでお疲れ、お休み」
広場の中央に黒煙を吐く砲塔のみを作り出したアルケミストはため息をつき帰路に付こうとする。
そこへ飛んでくる砲弾。
月のアルケミストを狙って飛んできたわけでなく、広場の中央にあった砲口から白煙を上げる砲塔に直撃し広場もろとも大きな土煙を上げて吹き飛んだ。
ジークルーンは悲しげな顔をしレイショウが背中をさする。
「言った通りだったな」
「攻撃……してきましたね……」




