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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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町へ向かう 1

 勝手に自分が村に居つく話になっていてジークルーンは否定する。


「待ってください、話の流れがおかしいです。自分はこの村に長居するつもりはありません。ここではあくまでこの時代の情報を聞くだけ、用が済めば自分は自分のいるべき場所を探しに行くんです」


 慌てるジークルーンにレイショウは声を押さえて耳打ちする。


「まずはジークルーンがここにいていいと納得してもらわないと、みんなびっくりしてるし」

「でも嘘は嫌いです」


「彼女を近いうちに町……城塞都市へと連れて行ってやりたい。だからまだ早いけど町へと売りに行くための物と帰りに買ってくるものを集めておいてくれないか」


 その場にいた皆の眼が黙っていた村長へと向き、沈黙の中で彼は口を開く。


「そうか、そうだな。わかったもう日が暮れているがすぐに皆に通達を、今日はもういい、また明日話し合おう」


 話が終わり皆が帰ろうとし始めジークルーンは慌てて声を上げた。


「待ってください、自分も聞きたいことがあります。鬼とは何ですか、どうして星が勝ったのにこのありさまなのですか、戦争が終わってこの世界はどうなってしまったんですか! 鬼って何ですか!?」


 他の皆が帰り支度を進める中て村長が答える。


「我々の爺様たちの話によれば、負ける前に月が落としたウイルス兵器だ。鋭い牙なので噛まれるなどして感染した人間は進行が進むと自我を失い襲ってくる。我々は鬼と呼び、城塞都市の人間はゾンビと呼んでいる怪物たちだ。体に変化が見られない場合は治療薬で治せるが、歯が抜け始めたり爪が伸び始めれば助からない」


 そこで今度こそお開きとなり村長は部屋の奥へと消え、レイショウとジークルーンは二人村の中を歩く。


「私たちが守った守ろうとした世界はどうしてこんな世界に……」

「詳しいことは城塞都市に行けば何かわかるかもしれない」


 村長の家から出て周囲に誰もいなくなったところでジークルーンはレイショウの津出を強く掴んで尋ねた。


「どういうことですかレイショウさん」

「どういうことって、なんだ?」


「自分は村に滞在するとは一言も言っていないですよ、必要な情報を聞き出すだけと。何ですかまるで自分はこの村を守るみたいな言い方をして、事前に言ってください」

「だから城塞都市に向かう約束通りに、あのままだと話がややこしくなるから。ないとは思うけどジークルーンが村から追いだされる姿は見たくない」


「自分は別にかまいませんけどね、他の人を探すまでです。他にもここと同じような村があるんでしょう? そこで話を聞きますよ」

「そう急がないでくれって、ジークルーンを無理にこの村に留めたりしないって」


「まさに今、無理に留められているのですけど?」

「ただちょっとこの村の用事も済ませるだけ、残念だけどこの村に居たくないというのなら俺たちは止められないし無理やりなこともしたくない。俺もジークルーンのことは諦めるよ」


「あなたは自分の何を諦めるんでしょうかね?」

「見てもらえば分けるだろうけど、城塞都市あそこは俺が生まれる大昔からあるからジークルーンでもあれのすごさがわかると思う。もしかしたらジークルーンがいたころにあったものかもしれない」


「ハジメさんも言っていましたね城塞都市、自分がいたころにはありませんでしたけど。そこにレイショウさんもついてくると?」

「あそこには鉄屑を売りに行くんだ。ジークルーンが行きたいの言うから道案内するついでに集めたものを売りに行こうかと。それと、途中で別れたとも言いやすいし」


「引き止められても自分は村には残りませんからね」

「ああ、わかってるって」


 会話をしながら二人はレイショウの家に戻ってくる。

 ちょうどハジメが部屋の真ん中にちゃぶ台を用意していたところで、帰ってきた二人に気が付き玄関までやってきた。


「おかえり」

「ただいまハジメ。俺がいない間、体は大丈夫だったか?」


「へいきだよ、今日は楽だった」

「近いうちに城塞都市に行くから俺はしばらくいなくなるけど、ちゃんと薬は飲むんだぞ」


「わかった」


 二人の会話を聞いていたジークルーンが尋ねる。


「ハジメさんはどこか悪いのですか?」

「外は危険であまり外に出してやれなかったから、カビや埃にやられて肺が弱いんだ。ここは暗いしカビも多くてひどいときは一日中咳をしてる。俺は金属の回収をしてこないといけないし、他の人も自分の仕事があって忙しいから遊んでいる時間もないし。ごめんなハジメ」


「そんなことよりご飯だよ、るーんさんも食べるよね?」

「いいのですか? 自分はまだ状態の理解が出来ていませんが、食料や水に余裕があまりないものだと思いますが?」


「大丈夫、お兄ちゃんが稼いでるから。それとうちはお父さんもお母さんもいないから他の家より余裕あるの」

「……そ、そうですか」


 メモがたくさん張られた冷蔵庫から真空パックのサラダと干し肉を取り出し抱えてちゃぶ台の上に置いた。


「さぁ、食べましょう」

「そうだな」


 朝も夜もわからない空間で一夜を明かしジークルーンは目を覚ます。

 そばにはハジメがいて、眠る際に部屋の隅にどかして立てかけられたちゃぶ台にを横に倒して朝食の用意をしている。


「おはようごさいます、ルーンさん」

「おはようございます、ハジメさん。レイショウさんはどちらに?」


「お兄ちゃんは外で寝てるよ」

「気を使わせてしまいましたか、別に自分はアルケミストの力がありますから反撃できますし気にしませんのに」


「ルーンさんの寝顔見てたら眠れなくなったみたい」

「それは問題ですね、これからも表で寝てもらいましょう」


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