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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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駆ける星 4

 

「金属の性質を自由に変えられる私たちアルケミストがいる星とは逆に、月の船は我々アルケミストに着弾した砲弾を回収されないようにコンクリートなどを砲弾にしているんだよ」

「それは直撃時に砕けてしまいませんか、それで砲弾の強度は足りるんですか?」


「そのためのレールガンさ、コンクリートの周り砲身のレールに触れる部分だけ金属を巻き付け撃ち出す。ほぼ音速の弾丸ならある程度硬ければ十分な威力を持つから何でもいい、私たちの天翔艦は月の船と比べて装甲が脆いからね。まぁ、当時の天翔艦ならこの程度の砲弾でも当たり所に寄っちゃ中破くらいはしていただろうね。設計しなおして正解だったでしょ」


「ですね、改装前だときっと翼がもげ大破していました」

「次弾の発砲を確認、被弾まで35秒。第二射来ますよ。弾道予測、さっきと同じ三番、四番モニターに映す」


「より広範囲に散らしてきましたか。進路を仰角20度今度は右舷に40度お願いします」


 回避運動をするが散らされた砲弾が被弾する。

 船体は揺れユウセイとジュンセイが被害の報告とすぐに修復を開始。

 直撃を受ければ大破は免れない最大の脅威である月の船の艦首から船体中央まで突き抜けている固定砲。


「向こうは連射はしてきませんね」

「補給と整備を受けていないから連射には何かしらの不都合が生まれるのだろうね」


 月の船の放った砲弾があたり船体が激しく揺れる。


「砲弾が右舷モニターカメラに命中、装甲の修復を優先させるからモニター復帰まで2分」

「かまいません、そのためにカメラは船体の各所にありますから」


 小さな点でしかなかった月の船も今はしっかりと艦影が確認できる距離。

 最大速度で加速を続けているため、その大きさは次第にモニターいっぱいに広がる。


「まもなく月の重力に捕まる」

「進路このまま! 三隻の横をすり抜け突破します! ユウセイ、どこか月の着陸できる場所を」


 加速を続けるクラールブルーメは高速で三隻の脇をすり抜けた。

 追撃しようと月の船は転舵しようとするが巨船ゆえ天翔艦の速度に間に合う速度は出ない。


「両舷とも転舵用推進剤残量15%! 減速用のスラスターあるけど減速するといい的になるからこっちはあまり使わない方がいい」


 艦首固定砲の脅威は去ったが旋回砲塔がクラールブルーメを狙う。

 更にモニターに弾道の予測データが出る。

 回避運動を続けることを指示しジークルーンは月の地表を映すモニターを睨む。


「残り10%、推進剤が切れたら宇宙に漂うことになるぞ!」

「わかっています! 月の都市に近づいてください、不時着します」


 白い地表にいくつもの建造物。

 ほとんどが人が住めるように作られた大きなドーム状の建物だったが、月の地表にも砲台があり天翔艦を狙って砲撃してくる。


「さらに月表面からの追撃の弾幕、艦の進路前方直撃コース!」

「仰角プラス20度、回避してください! ユウセイ、降りれる場所は」


「攻撃の回避で推進剤をほとんど使い果たしたぞ! 月には迎えるが減速する分はない」

「強行着陸姿勢! この船を不時着させます。皆何かにつかまって、脱出艇で月の建物に入ります。この船を被害の少ない場所へと落としてください」


 すり抜けた戦艦と月の地表の砲台、前後から更なる被弾を受け船内は大きく揺れた。


「流石に被弾個所が多い修復ももう間に合わない。これは耐えきれないな、ジークルーン降りられそうな場所の候補だ。判断が遅ければ皆死ぬ」

「脱出です!」


 クラールブルーメの艦橋の裏から脱出艇が飛び出す。

 船内にあった指揮所がそのまま脱出艇となっており、クラールブルーメの裏からから吐き出される。

 脱出艇としての機能に移し替え船体は小さく揺れた。


 クラールブルーメから脱出艇は離れて行き、そのまま指揮を失った船は月の地表に墜落する。


「自分の船が……」

「ジークルーン、着陸指示を! ぼさっと見てないで!」


 砂を巻き上げ拉げ歪む船体を映すモニターを見ていたジークルーンを、ジュンセイが声をかけて現実に連れ戻す。

 慌ててモニターに移された候補を見比べ安全に降りられそうな場所を探す。


「ユウセイが番号を振った3番の場所に降ります!」

「了解、この小型艇の装甲じゃ一撃耐えるのがやっとだから素早く降りる、少し雑になるけど気を付けて」


 船外カメラの映像を映すモニターの端でクラールブルーメが月の地表に落ち大きな砂煙を上げていた。

 月のそばに来たことで月の船三隻は砲撃をやめると、そのまま今まで通り電源が落とされたように宙を漂う。


「攻撃がやみましたね」

「流石に自分たちのいる建物を吹き飛ばすわけにはいかないでしょ、整備不良で狙った場所に当たるかどうかもわからないんだから」


 追加の攻撃もなく脱出艇は発着場に着地した。

 モニターに映される月の戦艦。

 三隻はすでに機能を停止しており攻撃してこないことがわかるとジークルーンたちは改めて大きく息を吐く。


「降りられたか、ふう生きた心地がしないなぁ」

「久々すぎて脳みそが疲れた」

「ここのどこかにいるアルケミストを探しましょう。レイショウさんたちもついて来て下さい」


 小型シャトルの発着場に着陸し様子をうかがう。


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