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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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駆ける星 1

 


 そして、時間がたち月への出立の時間が来る。

 管制室、天翔艦の指揮所あちこちにいるユウセイがあわただしく走りまわっていた。

 指揮所にはジュンセイ、ユウセイ、スイセイが機器の操作を行い、余った席にレイショウとハジメが座っている。


「手の空いている私が外の天気を確認してきた。雲はなく風も穏やか、絶好の出立日和だ」

「わかりました。では当初の予定のまま、本日空へと上がります」


 ユウセイの報告を聞いてジークルーンは正面に見えるモニターを確認し大きく息を吐く。


「計器を最終確認し報告を」

「接合された補助ブースタに異常なし、武装稼働に問題なし、航空機能問題なし、気密性航宙機能にも問題ないよ」

「燃料、電力、計器もすべて正常値。ま、私が調整したんだ当然だろう。天候良好、風無し、敵影見得ず、管制室からのサインも出たジークルーン、いつでもどうぞ」


 スイセイとジュンセイの報告を聞いて大きく息を吐く、座った全員が艦長席に座ったジークルーンを見ていた。


「わかりました。それでは、出発します。ユウセイ、お願いします」

「もういつでも行けるよ」


 目を瞑り強く拳を握る。

 そして、声を張り指示を出す。


「了解、乗組員各員へ、これより私たちは空の上を目指す。シートベルトを着用し待機。管制室に報告し電磁カタパルトに電源供給してください。天翔艦クラールブルーメ、出航」


 電力をできる限り回し節電のためライトの光量が足りず暗闇を進み続ける天翔艦。

 号令後すぐに小刻みに揺れながら船体は動き出し一気に加速していく。

 状況があまりわかっていないレイショウとハジメはシートベルトを強く握って揺れと加速の勢いから来る抑える力に戸惑っていた。


「かなり揺れますね。記憶ではもう少し揺れは小さかったものだと思いますけど」

「カタパルトのリニアレールは問題ない、私のナノマシンを足しての重量の増加も考慮したはずだけどなんでこんなに揺れるんだろうね?」


「こわいこといいますね」

「でもまぁ、加速は順調だし大丈夫だろう。もしかしたらあれのせいかも……」


「あれとは何ですか?」

「私個人が積み込んだ積み荷、中身は内緒。おっと、これは……」


「どうしました?」

「いいや、もう止まれないのだから関係ない」


 わずかにユウセイの声が震える。

 そのわけを聞こうと思ったがその前にジュンセイとスイセイの声。


「出口が見えてきました。ジュンセイ、ブースター点火のタイミングを」

「出口がふさがっているという落ちじゃないかと思ったが無事に外には出られそうだ。いくよ……8、7、6、5,4,3,2,1,点火」


「補助ブースター点火」

「レールからの離脱を確認、上昇中」


 天翔艦は加速を続け暗いトンネルを抜け光の下へと出る。

 トンネルを抜け出し船体を乗せていたレールと台車から離れると、すぐにメインと補助のブースター全てに火をつけ鉄の船は空を飛ぶ。


「無事に飛びました!」

「クラールブルーメ船体に異常なし進路そのまま」

「第一関門は突破したね、あとは攻撃をよけながら空へと上がり、衛星砲台と無数のデブリを避け、たぶんある月の防衛砲の攻撃をかいくぐり、月へとたどり着く」


 100メートル以上ある人を乗せた鉄塊は灰色の尾を残し勢いよく空へと上がっていく。

 暗闇を映していたモニターは一斉に外の景色を映し出す。


「……関門が多いですね」

「ここまで来たんだから何とかしないと」

「もう動き出したんだから止まれないよ、ほらほら前を見な正面」


 昼間だったが空の果てに見える赤い光点。

 複数の軌道上からの落下物。

 その数は一気に増え続け大きくなる。


「来るよ、砲撃がジークルーン」

「加速しながら回避は難しいものがあります」


「それはいい、あんなものよけようがない整備されていないからあちこちにデブリが当たって制度は落ちてるだろうけど当たるときは当たる。それより月の船!」

「船ですか」


「月の船は死ぬのが怖い腑抜けたちが作った無人艦。つまり月からは鬼と同様に操れる。補給は受けていないだろうけど戦後のまま、速度は出なくても前進することだけはできるだろうから、ぶつける気で進路を読んで星の外から落とせば速度を上げるためほぼ真っすぐしか飛べないこっちと当たる。それだけは躱して」

「もちろんです!」


「進路を工場の方へ」


 ジュンセイが声を上げた。


「ジークルーン、下、町が!」

「下からも攻撃ですか?」


 町のあった魔場所にそびえるクレーンと太いケーブルで支えられた巨大な柱。

 周囲の吹き飛んだ建物の中から天高く伸びる柱は3本あり、空へと向かう天翔艦のモニターでジークルーンはそれが何かと思っていたがそれは巨大な大砲だと気が付く。


「大砲、あれが、スターダストバスター」

「チュウジョウが協力してくれてる!」


「生きていたんですねチュウジョウ」

「ユウセイと同じように地下で準備を進めていた」


 巨大な砲身が動き火を噴いた。

 大砲が一発撃つたびに、その砲撃音だけで空を飛ぶ天翔艦がわずかに揺れる。


「すごい音」

「船内まで衝撃音が聞こえてくる」


 放たれた砲弾は光点へと向かって飛んでいき、空の果てで閃光を瞬かせた。

 落下物は数個で十分と思っていたのだろうか撃激され始めたことを知ると、本気を出してきたのか一気に光点が増える。

 朝を迎えたばかりの空に夜空の星の数々を思わせるほどの光点が浮かぶ。


「増えましたね……この数は」

「躱すしかない」


 天翔艦は工場を飛び越える。

 高度が上がりだんだんと地上が遠ざかっていく中、同じように吹き飛んだ町の中にぽつんと巨大な砲台が立っていた。


「ユウセイのは一基しかないの? 全部には対処できないじゃない」

「あれにどれだけのナノマシンがかかるか知らないだろう。あと時間がなくて一基作るがやっとさ。私この船も作っていたんだよ?」


 町にあった砲台と同じように砲撃していて空からの落下物を打ち落とす。

 速いものはすでにクラールブルーメの近くをかすめ地上に着弾し、地上には無数の小さな土煙が上がっている。


「落下物にしては早い気がしませんか?」

「衛生砲だ、生きてるのか。星を守る砲台が星の方を向いている」

「直撃。衛星砲の破壊を確認、分解しながら星へと落下中。もう脅威はない」

「仕事が早いですねユウセイ、ありがとう」


 砲撃は天翔艦をサポートするのを優先し、自身の防護には使わず天翔艦の眼下で街と工場に落下物が落ちた。

 モニターで砲台が壊れていくのを見ていたジークルーンはユウセイに尋ねる。


「下は大丈夫ですかユウセイ」

「……ああ、工場は無事だ皆生きている。ナノマシンの仕様権限は、今は私にあるから修理しての砲撃はもう無理だけど」


「わかりました、ありがとうございました」

「いいさ」

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