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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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放たれる弓 1

 ジークルーンたちが話し合っている間に、彼女たちが知らぬ間にユウセイの一人がレイショウの元を訪れていた。

 今は仲間で敵意はないとわかってはいても、レイショウは心のどこかで彼女のしてきたことが許せず厳しい表情を向けて警戒する。


「そう怖い顔をしない、今は仲間なんだから」

「ジークルーンたちとは、だろ?」


「まぁいいや。そういえば君、弓を使えるようにすべきではないかな? ジークルーンたちをサポートするために」

「今からか?」


「ただの人間が我々と戦おうとするのなら、飛び道具くらい使えないと。身体強化で何かを投擲するより弓のほうが殺傷力もあるしな。聞かなくても遠くからちまちまと集中力を乱させればナノマシンの加工を一時的に止められ私らの戦闘を優位に進められる。私との戦闘である程度私が優位に戦っていたのを思い出してくれ」

「いきなり言われて、そんなすぐ覚えられるのかよ」


「私の記憶を移せば何とか行けるだろう」

「お前の、記憶?」


「一部分、弓に関する記憶だけさ。私が記憶を植え付け君を乗っ取るわけでないし、私の人に話せない恥ずかしい記憶を見せるわけでもない。ただ必要な知識を与えるだけ」

「……ほんとかよ?」


「私は別についていった先で君が死んでも困らないけどね。残った妹ちゃんは私が可愛がってあげよう、純真無垢な子はかわいい」

「わかった、よくわからないけど従う。だから弓が打てるようになったら的になってくれ」


「よしよし、なら始めよう。でも、的になるのは遠慮させてもらうよ」


 ユウセイはナノマシンで椅子を作り出す。

 飾り気のないパイプ椅子。


「それでは、そこ椅子に座ってくれ。ナノマシンで記憶の転写装置を作って必要な記憶だけを渡す。痛みはないが、知らない記憶が入ってきたことで混乱することもあるな」

「時間はどれくらいかかる?」


「人生すべての記憶を移すのには時間がかかるが、条件を絞った記憶ならすぐだよ。目を瞑っている間に終わる」

「でかい機械とか必要ないのか」


 話ながらユウセイはナノマシンを変化させコードと基盤のついたヘルメットのようなものを作りだし、それをレイショウの頭の上に乗せる。


「記憶の保存には大掛かりな機械が必要だけど移すだけなら本人さえいれば問題ない。あれは記憶の移し替えに時間がかかるから、代わりに行ってくれる転写装置とセットで作るから場所をとるだけさ。ほら目を瞑れ」


 言われたとおりにレイショウは目を瞑り、少し遅れてユウセイがお互いに額を合わす。

 その瞬間レイショウの頭の中に多くの情報が流れ込みレイショウの記憶が一瞬飛んだ。


「おわったぞ」

「本当に早いな」


 寝ていたのか気を失っていたのか気が付くとすでにヘルメットをレイショウの頭の上から外しユウセイは立ち上がると座っていた椅子を崩した。

 そのナノマシンで弓と矢を作り出してレイショウに差し出す。


「使い方がわかるだろ? さぁ、向こうの瓦礫の山に置いてある空き缶に」


 弓矢を受け取りレイショウは頭の中にある知らない記憶を頼りに息を止め弦を引き狙いをつける。

 放たれた矢はヒュッと風を切る音を立てて飛び、離れた場所にある缶を貫く。


「おみごと。どうだい、努力も勉強もせずに簡単に才能をもらえた気分は」

「当たった……本当に俺がやったのか? 体が勝手に動いたような感覚だった」


「普通は知識を与えた程度じゃ体が付いていかなかったりするんだが、この時代なら体は鍛えられていて体感もしっかりしていたのだろう」

「気持ちの悪い感覚だ」


 気怠そうな目を向けユウセイは頭を搔いた。


「あんたが学んだことのない私の記憶を脳が理解し体が動いた。弓を弾く動きや力加減などは渡した知識と経験から引き出せるけど、実際に行動し当てられるかどうかはその人間のセンスだ。ほんと一発目からあたるとは思わなかったけどね、まぁいいんじゃないかな」

「他人の記憶を移す。お前の記憶だとおもうと、気持ち悪いな」


 ふいにレイショウは頭痛を感じ頭を押さえてうずくまる。


「……っ、頭の奥が」

「痛むか、記憶の混乱だよ。すぐ収まるはずだ……たぶん」


「たぶんって……」


 レイショウはバランスを保てず地面に倒れた。



 脳裏に浮かんでは消えていくレイショウの記憶のない場所の景色。

 目まぐるしく移り変わっていた景色はやがて止まり、大きな窓のある白く広い室内に固定される。

 窓の外は暗闇、室内は多くの椅子とモニターが設置されていてレイショウが見てもさっぱりわからない文字や図形を映し出していた。


 --どこだ、ここ?


 その部屋には十人ほどの男女が床に伏していて、一人白い髪の女性だけ立っていた。

 窓の外にはどこまでも闇が広がり、真ん中に白い輪に囲われた青い星の姿が見える。

 レイショウと面識のない白い髪、金色の瞳をしたアルケミストは天井からアームで吊られたモニターを見ており彼女はそこに映る人物と会話していた。


『私に仲間である皆の監視をやれと!』

『ああ、その通り、我々の力を使い死者の体を使って生者を襲わせる。仕組みは手足のリハビリに使う機械と一緒だ、神経に電流を流し動かす。あなたには星の軌道上にて各国の状況を彼女らの行く末を監視していてもらいたい』


 部屋のにいるアルケミストは声を荒げ、モニターの相手に抗議している。

 モニターの向こうの女性も金色の瞳と白い髪を持つアルケミストで、彼女は少し困ったように話をつづけた。

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