準備と修復 5
村の中に入りジュンセイに連れてこられてスイセイを見てレイショウは小声で尋ねる。
「なぁ、あれは嫌がらせなのか?」
「ちがうよ、もっとましな服があると思ったが焼けてしまっていたみたいで見つからなかった。私のナノマシンで服を作って奪われたら意味ないだろう。ここにある服でよいものを探したんだよ」
「ほとんど燃えちまって着替えなんてろくにないだろ。俺とハジメの服もジークルーンの力で作ってもらったものだし」
「ほんとにそれ、使える服がいくらかあると思ったけど。あれしかなかった」
つぎはぎだらけのぼろぼろの服を着たスイセイを見て、レイショウが小声でジュンセイに話しかけた。
「いままで俺が来ていた服だぞ。村を出てから洗う機会もなかった、ずっと着っぱなしでジークルーンから服を借りてからはほったらかしにしていた」
「そうだよ、血と汗と草や泥臭さの混じり熟成した服だよ。穴だらけの燃えたカーテンよりかわマシだと思ったまでさ」
話を少し遠くから聞いていたスイセイが答える。
「私は別に構いません、今の私は小汚いからちょうどいいのです。服の質が悪く少しチクチクするのが気になるところですけども。質の悪さ、今の世界に背を向けてもいられないでしょう」
村を襲撃されいくらかの着替えとともに工場までの長旅に耐えたレイショウの汚れた服を着ているスイセイの言葉を聞いて二人は顔を見合わせた。
「本人もああいっているし、いいんじゃない」
「シャワーくらいは貸してやってもいいじゃんよ……。ドライヤー、あれで洗った服を乾かしてもいいんじゃないのか」
「以外なことを言うね。まぁ、トンネルがつながって工場から電気も来ているから電力には困らないけど、服はそんなすぐ洗って乾くもんでもないだろう。ジークルーンが帰ってくるまでの間はその姿でいてもらうよ。着せた服が嫌なら脱がせてナノマシンの制御を奪われないように縛って私の部屋の中に転がしておいてもいいけど」
「なんか不憫だ」
「何度も言うようだけどあんたの友人を殺したアトランティカを送り出したのはこいつだよ。どの面下げてここに来たって言えるレベルなんだけど?」
「わかってるけど、先に怒られるとこっちが怒りにくくなるんだよ。ジークルーンのときもあんたはとびかかっていったし、あの嫌な奴にも別にどうでもいいけどきついあたりだ、身内に厳しいんだよな」
「ジークルーンがいつも言っているように、私たちは人を守るように作られた。ジークルーンが何とかしようとしているんだから私も何とかしようとしただけ。あんたたちがいなければこうする理由もないんだからね?」
「前も言っていたかんたいの新入りってやつか? 同じ仲間でも、かんたいってのは特別なんだな」
「そうだよ」
「ところで、あの嫌な奴を見ていないんだけど」
「ジークルーンの天翔艦がある場所までトンネルを掘っているよ。いつまでもここでだらけさせては置けない」
「そうなのか、同じくしばらく見てないけどハジメは寝たのかな」
「ああ、さっき部屋に戻っていくのが見えたからそうだろうね。もうじき日が昇る、今日はジークルーンたちは帰ってこないからあんたももう寝れば?」
「待っていたかったけど、そうだなそうさせてもらう。おやすみ」
ジークルーンがいなくなり丸一日たち、夜になってすぐにジークルーンたちが歩行バイクに乗って帰ってくる。
彼女たちが帰ってきてすぐにジュンセイはすぐにスイセイのことを報告し、今後のことを話し合うためにユウセイを含めて皆で集まった。
「スイセイ……アトランティカのことはごめんなさい、こちらも生きるために必死で彼女を殺める気はなかったんです」
「ええ、こちらこそ申し訳ないと思っています。彼女を鬼にして君らを追いかけさせたのは私です」
「アルケミストを鬼にするとはね、恐れ入ったよ」
「ユウセイ、あんたは黙ってて。話が遠回りになる」
アルケミストたちは輪になって話あい、それを遠巻きからレイショウとハジメが見ている。
レイショウたちとは反対側、少し離れた場所で他のユウセイたちが話を聞いていた。
「月に行くのですか?」
「一応は、空に上がる予定です」
「私も混ぜてほしいのです、空に上がりたい。本当はチュウジョウのもとへと行って空に上がる方法を考えるつもりだったが、あなたたちを見て切り替えました。ユウセイがいるということは空に上がる方法があるのでしょう?」
「スイセイも空に上がるのですか?」
「ええ、私はこの100年、空に残った皆との約束を守ってきた。なのに、そんな我々を裏切り我々の町を攻撃し消滅させた。空に上がり約束を守らなかった彼女らに問いたい」
「……わかりました。では自分に協力してくださいスイセイ」
当たり前のように返事を返すジークルーン判断を聞いてジュンセイがあきれる。
「そんな簡単に信じていいのか、ジークルーン?」
「助けてほしいのなら自分は迷わず助けます。戦いが終わって100年だというのならこんな世界ではなくみんなで仲良く思い出を語れるような世界で目覚めたかった。我々アルケミストは争わない、ジュンセイも放っておけないから村の中へと入れたのでしょう」
「それはそうだけど、一度は敵対したわけだしもう少し考えたりはしないの?」
「それより、彼女にシャワーを。それと彼女にナノマシンを返却してください、その服はかわいそうです」
「わかったよ」
拘束していたスイセイを開放しジュンセイが彼女をシャワー室へと案内する。




