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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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村へ 3

 

 レイショウが急いで家に戻ってくると暖簾をくぐり部屋で待っているジークルーンを呼ぶ。

 彼女ははじめとともに玄関でレイショウの帰りを待っていた。


「待たせたジークルーン今戻ったよ、ハジメと仲良くしててくれたんだなありがとう。それじゃあ村長のところ行こう」

「早かったですね、もう用は終わったんですか」


「ああ、俺の心配してくれる相棒のところにな。無事帰ってきたことを報告してきた、それともうジークルーンのことは村全体に広まってるっぽい」

「そうですか」


 ジークルーンは立ち上がりハジメに手を振って部屋を後にする。


「レイショウさんの妹なんですねハジメさん」

「ああ、そうだよ。それがどうした?」


「いえ、自分を見る目があなたとよく似ていたと」

「仲良くなっていたみたいだし、ハジメはいい子だっただろ?」


「ええ、すごく気を使ってくれました」


 暗い村の中を歩きレイショウについていきついたのは他の家より大きな程度の建物、やはり他と同じで廃材などを材料に作られていた。

 建物の前には老婆が待っていて二人を出迎える。


「遅かったなレイショウ、待っていたよ。よく無事に帰ってきた、みんな心配していたんだぞ」

「みんなを心配させて悪い。どうしても金になるものを見つけたくてな」


「まぁいい、無事なら何の問題もないさ中へお入り。お嬢ちゃんもだ、この集まりはお嬢ちゃんのために開いたんだからね」

「行こうジークルーン」


 お座敷で大部屋の真ん中に大きなちゃぶ台があり、その周りにはすでに6名の男女が座って待っていてレイショウたちを出向かえた老婆もそのちゃぶ台の前に座る。

 レイショウが座り彼の後ろにいたジークルーンは前に出た。


「えっと、自分は……」

「まだ村長が来ていないからまだいいんだジークルーン」


「そ、そうですか」


 二つ水が用意され、ちゃぶ台の上に置かれる。

 しばらく沈黙が続き二人は座敷に座り待っていると体中に多くの古傷のある筋骨隆々の大男が現れた。

 男はジークルーンの白い髪を見て驚くも、すぐにちゃぶ台の前に胡坐をかいて座り集まった村の人間を見回す。


「皆そろっているな。それで彼女が、外で出会った女性か。聞いた話ではどこの街や村の人間でもないと」

「はい、そうです。改めまして初めまして、レイショウさんと出会い前もっての連絡もなく突然の訪問ですみません。自分はジークルーン・アインホルン、おそらく今の時代にはないこの国の防衛隊所属でそこでの所属は天翔艦アルケミスト。ええっと、大戦中に作られた思考造形ナノマシンを操作できる力を持たされた人造人間でアルケミストと呼ばれている存在で、自分は敵である月を攻撃のために目指す船の一隻、天翔艦キルシュブリューテの統制演算役でした。大戦が終わったと聞き今は自分の目でそれが本当かどうかを確かめているところです」


「ジーク? しこう、きるし? ま待ってくれ難しい言葉を一気に並べられても……」

「もういいです、すみませんジークルーン・アインホルン。名前だけは憶えてください、つけていただいた大切なものですから間違えることはないように。レイショウさんにも話しましたがまったくもって通じなかったので想像はしていました。自分のいた時代に近い人ならもしくはと思ってこの場に来たのですが」


 何度も同じ反応を受けジークルーンはため息をつく。


「それで君はどこから来た」

「今言った通り月と星との大戦中、過去からです。基地の中で眠りについていたんです、レイショウさんが来て自分は眠りから目覚めました」


「眠っていたとは?」

「そのままの意味です。コールドスリープ装置にレイショウさんが触れたことで起動し目を覚ましました」


「ふむ……」

「信じてくれなくていいですよ、私が見た限りの現在の文明レベルでは到底信じられる話ではないですから。ですが……」


 ジークルーンは手にした帽子をちゃぶ台の上に置く。

 そして帽子を船の玩具に変え、細かな模様の入った金属の器に変え、大振りのナイフに変えた。


 それを見ていたレイショウ以外のすべての者たちが驚きのあまり立ち上がり後ろに下がる。

 未知の力にこの場の人間たちが一斉に敵意を見せてくるのではと一瞬警戒したが、隣に座っているレイショウは自信ありげな表情で座ったまま動かない。


「何だそれは!? 物の形が変わったぞ、手品か!?」

「どういうことだ、他のものと素早く入れ替えたのか!」


 立ち上がった大人たちは顔を見合わせまた座敷に腰を下ろす。

 しかしジークルーンから離れるように先ほど座っていた場所より、少し後ろに離れている。


「これが今言った自分のような存在、アルケミストの力です」


 そういってナイフを帽子へと作り直し被った。


 薄暗い中、自分たちの知らない力を見せられ動揺を隠せず大なり小なりの恐れ怯えの見える村人を背に、ジークルーンは建物を去ろうとするがレイショウが話を続ける。


「言った通りジークルーンは過去の大戦中の人間なんだ、城塞都市の壁と同じでこれも昔の技術らしい。そういえば納得もできるだろ、俺たちじゃどうなっているのかもわからないあの町と同じ力を彼女は持っている。ジークルーンがいれば町までの往復に犠牲が出ることもなくなる」


 レイショウの言葉にリスクとリターンを考えてうなだれ考え込む村人たち。

 そして去ろうとしていたジークルーンも足を止め振り返った。


「彼女がいれば村の補強もできるし、武器の調達に困ることもなくなる。奴らも怖くない」

「確かに……それはそうか……」


 止まっていた話が動き出し慌ててジークルーンは口をはさむ。


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