準備と修復 4
ユウセイはジークルーンの横に立ち、汚れた窓の向こうに見える埃をかぶった船体を見てつぶやく。
「それにしても古いね、船体も武装も何もかも。100年前という意味ではなく」
「自分より後に生まれたユウセイから見ればそうなのかもしれません。自分のいたときは量産艦としてかなり性能のいいものだったんです」
「そうだね、この型は量産艦としては作りやすく武装の載せ替えもしやすい艦だった。戦争末期生産型の月の船の攻撃には耐えられない、再設計が必要かな」
「別に空へは戦いに行くわけじゃないでしょう。というかユウセイ、天翔艦の設計なんてこともできるんですか?」
「できるよ。私らは戦後、のことを考えて作られたのだから。ここまで来たあれも私が作ったってことを忘れたのか?」
「私たち数人が乗れるような小さなロケットでよいのでは? そのほうが燃費もいいとおもうのですが」
「残念だけど、空に上がらせないための迎撃が予想されるよ。戦後先に地上におりたアルケミストが空に上がらないようにするために衛星砲台を配置した。だから必要なのは装甲を持ちダメージコントロールの利く大きな船体が必要さ」
「……残念です、自分は話をしに行きたいだけなのに」
「私は出撃用のリニアレールを見てくるよ。見た目は建物に損傷ないけど、小石一つで事故起こす代物だし。状態によってはだけどもしかしたらレールを引き直さないといけないかもしれないからね」
「わかりました」
そういうとユウセイはジークルーンに軽く手を振りエレベーターへと向かっていくがすぐに足を止め引き返す。
「……それは後ででいいや、一人じゃ面倒だほかの私と合流してから考える。下部ハッチから天翔の中の様子を見よう」
「はい」
ジークルーンたちは管制室からエレベーターで移動し天翔艦の置いてある開けた空間に下りる。
降り積もった埃に足をあとを残し二人は船体へと近寄った。
隔壁を開けるため扉に触れると厚い装甲が外側上方向へと開き、密閉性を高めるための内扉が引き戸のように左右に開く。
電源が入っていないため何の明かりもない暗い船内。
「船内は外と違って埃があまり積もっていませんね」
「気密性があるから虫も埃もここには入り込んでこなかったんだろう。まだ燃料も少し残っているから艦内の発電機を見てくる、足元を照らす常夜灯くらいはつけておきたい。ジークルーンは指揮所に行って何かあれば私を呼んでくれ」
「わかりました」
「だからといって、私を放っても置くなよ」
村に残ったジュンセイが大鬼の死体を片付けていると、赤い衣装に黄色い文様の描かれた服装の白髪の女性が現れバリケードの金網をたたく。
気配に振り返り音の方向を見てジュンセイは大きな声を上げる。
「スイセイ! どうしてここに」
アルケミストの特徴である銀色の髪を土と血と煤で毛の質がごわごわになるまで汚し、やつれた顔のスイセイはバリケードの向こうから身構えるジュンセイに話しかける。
「私たちが城塞都市を目指しているときに、あなたたちが移動する様子を見かけたものですから追いかけてきたのです」
「何しに来た、まだ彼を狙っているのか? この大鬼たちもさし向けたのは鬼もお前か? こっちは今忙しくてね、戦うならジークルーンが帰ってくる前にさっさと終わらせよう」
服に使っていたナノマシンを鎖鎌に変え構えるとバリケードへと近づく。
村の外にいるスイセイは疲れ切った声で答える。
「鬼なんか、もう見たくありません。制御権を奪われ、私も私たちも襲われました。空からの衛星爆撃ですべて吹き飛び私たちが作り上げてきたエデンガーデンはもうないのです。ええ、ほかの皆も船の落下や鬼の襲撃から住人らを守るため死んでしまった。私のナノマシンもこの服の分だけ。私に敵意はありません、知りたいのですここを開けてくれないでしょうか」
「あんたはそれらを見捨てて逃げてきたと」
「……いいえ、一昨日まで生き残った皆を率いて制御できない鬼から逃げていたんです。が、銃を持った鬼に皆殺されてしまった。私も手足をかすめましたが、守られ……。衛星爆撃の後次を警戒し準備もできず、着の身着のままナノマシンを多く持ちだすことができず誰も守り切れなかった。空に残った皆の命令を聞いて多くを生かすために少数を殺してきたっていうのに」
「そういえばあんた一人? ほかのアルケミストは?」
「死にました、彼女たちもまた人を守り切れずにハチの巣にされたんです。鬼に向かって撃つはずの銃がこちらに向けられた」
「私らも撃たれたよ。100年何もなかったのに、ここにきて空にいるアルケミストたちは動き出した」
「ええ、何の通告もなしに、攻撃を始めた」
「スイセイも何も聞かされていないか」
「あなたたちは工場に向かわれたのですよね、あそこにいた弩級天翔戦艦を操っていたユウセイは何か知っていましたか? 彼女は空と連絡を取る方法を持っている、何か知っているかもしれません。あなた方は何か聞いてきたのではないですか?」
「残念ながら、ユウセイも何も知らない。奥で惰眠をむさぼっているよ」
「ユウセイ、彼女もここにいるのですか。話がしたいんです」
「いいよ、うるさいし邪魔だから話し相手になってくれるなら万々歳だ。でも、そこで服を脱ぎナノマシンをすべてそこにおいて、完全に信用はできない。服は変わりのものを探してくるから」
「了解しました、服を脱いで待ちますから中に入れてください」
「わかった、すぐ戻る」




