誰もいない故郷 5
彼女は担いだ鉄紐の束を下ろし尋ねた。
「こんなところに集まってなにしている、何か見つけたのか?」
「どこかに行ったと思っていましたけどどこにいたんですユウセイ?」
「外のトラックの場所までこれを取りにね」
荷物を下ろしユウセイは紐の束を持っていた肩を回す。
紐はユウセイの通ってきた道に延ばされており外まで続いているようで、それを見たジークルーンが訪ねる。
「ユウセイ、そのワイヤーはなんですか? 何かの配線?」
「トラックの一部を変化させて細く伸ばしたナノマシンだよ。換気扇に使った小型の太陽光パネルで電力を得てモーターを使って巻き取れば、あのトラック分のナノマシンを楽にここに運びこめる」
「そうですか、でもダルそうにしていたユウセイが少しでも乗り気になってくれてよかったです」
「こんな汚い場所でしばらく暮らすなんて嫌だからな。早く換気扇を増やしてこのよどんだ空気を何とかしたい。服や髪ににおいがついてしまうよ全く。シャワー設備は必要だ、川が近いのはよかった。水には困らない」
「浄水設備は作れますものね。そのまま、電気や水関係をお願いできますか」
「いわれなくてもインフラは私にも必要だからやる予定さ、でも太陽光パネルとか風力発電機とか大きく広げると見つかる可能性があるし悩ましいところ」
バリケード作りで余った金属をかき集めしばらく住むための部屋を作る。
レイショウとジュンセイはナノマシンで作った猫車を押して食べられそうな缶詰を焼け残った家の下から集めていく。
「軽いなこれ、なんか底のほうにくっついていて重い割にはタイヤは簡単に動く」
「下についているのはモーターとバッテリー、電気自転車と一緒の電動アシストで押すか引くかすれば勝手に動き出す、使い終わったら充電せておけばいつでも使える。電気を食うからユウセイに嫌な顔されったけど」
一度に変化させられる量に限りのあるナノマシンを複数回に分けて少しずつ変形させ、大きなものではないが簡易的で清潔な空間と柔らかいベットが用意された。
家はジークルーンたちだけでなくレイショウとハジメの分も用意される。
ジークルーンとユウセイのナノマシンを建物へと変化させていく作業を見ていたハジメは、猫車に掘り起こして探し出した食料を乗せ戻ってきたレイショウのもとへとかけていく。
「おうちができた」
「ああ、アルケミストってすごいな」
「でんきがひかるよ。お外みたいにまぶしい」
「ああ明かりもついて前の家と違って明るいな」
汚れのない床や壁、スイッチ一つでオンオフできる明かりがついたこじんまりとした部屋。
できたばかりの部屋の中を見ているとジークルーンが訪ねてくる。
「簡単なプレハブ小屋です、窓はシャッターで四畳半ナノマシン制ですべて金属ですが感触や見た目などは。必要なものがあれば言ってください、作り出せる物であればナノマシンで作ります」
「わかった」
「電気のほうは大きな発電機がないので、夜間は節電し必要ならばまた手回し発電になると思います」
「大丈夫だ、ぐるぐる回すのは苦じゃない。ハジメも楽しそうだし」
レイショウたちは新しく作られた家の中へと入っていき、ジークルーンはユウセイのもとへと向かう。
ユウセイの分だけ乗ってきたトラックのナノマシンのほとんどを使い一人だけ大きな部屋を作った。
そのユウセイの部屋を見てジークルーンが訪ねる。
「なんで一人だけ部屋を大きくしたんです? この広さ三、四人家族用の部屋ですよね?」
「私は狭くて息苦しいところが苦手でね、艦内がひろかった弩級戦艦のアルケミストってことがあるのかもしれない」
「そうですか、お風呂とキッチンはここを借りに来ればいいですね」
「いや、ここは私の部屋だぞ。そうですかで済まさないでくれ」
「汲み取り式のトイレは各部屋に個別にありますけど、お風呂はユウセイの部屋にしかないでしょう。清潔を保つためにも借りに来ないといけない、村の片づけも清潔感を出すためきれいにするためにしているんですから」
「風呂がなかったのはナノマシンの余りがなかったから、仕方ないだろう。この広さのもう一部屋作ろうとしたら、ジークルーンがあの兄妹の部屋を別々に分けると言い出し足りなくなったのだから」
ハジメに連れられ戻ってきたレイショウに遅れて、猫車を押して食べ物を探していたジュンセイがもどってくる。
彼女は猫車を端に止め、ナノマシンで作られ並んで立つそれぞれの部屋を見た。
「私とジークルーンの部屋を個別にする必要はないんじゃない? 同じアルケミストだし、一緒に過ごせる。私はチュウジョウと暮らしていたから苦ではないよ。それにジークルーンだし」
ジークルーンは確かにとうなずく。
「それだと私が一人省かれている感じだろう? 一人は嫌だ」
駄々をこねるユウセイを見てジュンセイとジークルーンは首をかしげた。
「なら一緒に三人で暮らしますかユウセイ? 自分は大勢と暮らすのは苦になりませんよ?」
「でもやっぱり一人で過ごせるプライベートな空間は欲しいね、一人は嫌だけど」
「なぜ必要なのかよくわかりませんね」
「全くこれだから堕落を知らないこは、ジュンセイなら一人の空間も欲しい気持ちがわかるよな?」
肩をすくめてさっぱりとジュンセイが答えるとユウセイは一人むくれた様子で部屋の中へと入っていった。




