村へ 2
あちこちに置かれているランプの明かりがなければ闇に包まれるくらい地下。
それでも天井はランプの光量が足りておらず見ることができない。
ポツンポツンと立つ廃材を使って建てられた建物の近くに人の姿、異国風の顔立ちと汚れを知らない白色の髪を持ったよそから来たジークルーンは人目を集める。
「……本当にここに住んでいるんですか」
「ああ、地上は危険だからな。地下は何でか奴らはあんまり入ってこない、だから小さな村はみんな地下にある。ここ以外もこの近くにある村はみんな地下だぜ」
「そうですか、それで今度は村のどこに向かっているんです?」
「もうつく、あれが俺たちの家だ」
他と同じ木材と廃材を組み合わせた少し傾いた建物。
「これ本当に家ですか?」
物置のようなそれを見てジークルーンは表情を歪める。
「少し狭いけど、楽にしてくれ。村長にあいさつに連れていきたいけど、先に俺が無事だと報告に行かないといけない奴がいるからここで待っていてくれ。用が済んだら迎えに来る」
「少し? 少し?」
元はカーテンのようなものでできた暖簾をくぐり二人は部屋の中に入った。
狭い部屋の中を見回し外見から見たときよりもものが多く、ジークルーンは圧迫感を感じる部屋を見て暖簾を持ち上げたまま固まる。
暗い部屋の奥の方で座っていた小さな女の子がレイショウが戻ってきたことを確認すると立ち上がって玄関までやってきた。
「おかえりお兄ちゃん」
「ただいま、ハジメ。ちょっとミカドのところ行ってくるから。ジークルーンはここでいっしょにいてくれ。後で迎えに来る」
帽子を脱いで家に入ってきた髪も肌も白い女性を見てハジメは固まる。
突然の来訪者に驚き怖がって硬直しているのではなくただ彼女に見惚れていた。
「じーく? るーん?」
「いつも通り危ないからリュックには触るなよ」
「あーい」
鉄くずの入ったリュックを玄関におろすとレイショウは家を出ていく。
レイショウに置いていかれたジークルーンとハジメが目を合わせ会釈する。
「初めまして、ジークルーン・アインホルンです」
「はじめまして、ヤソウハジメです」
見慣れない客に目をキラキラとさせるハジメを見て、ジークルーンは玄関の段差に腰掛けた。
少女はジークルーンに恐る恐る近づいて来てそばに座った。
「きれいな髪ですね!」
「どうもありがとう。あなたはレイショウの妹さん?」
「はい、そうです! ルーンさんはお兄ちゃんのお嫁さんですか?」
「いいえ、違いますよ。今日偶然出会ったんです、どうしてそうなるんですか?」
「どこから来たんですか? 城塞都市?」
「あなたも私の質問に答えてくれないのですね? それにしても要塞……物騒ですね、どこですかそれは? 自分はですねどこからかといわれると……ん、大昔からですかね」
少女は立ち上がり部屋の隅へと向かうと容器に入った水をジークルーンに渡す。
「お水です」
「ありがとう、お水は貴重じゃないのですか?」
「お兄ちゃんが町で買ってきてくれます。あの干し肉、食べます?」
「まだ大丈夫ですお腹はすいていません、お気遣いありがとうございます。町近いうちに行ってみたいですね……。ちなみにその肉は何の肉ですか? 今はどういったものを食べているんですか?」
「ウシ、かも?」
「どうしてそこ疑問形なんですか?」
ハジメは先ほどよりジークルーンに近くによってきて座ると顔をじっと見る。
レイショウと同じような視線を向ける少女。
「きれいですね、美人さん」
「どうもありがとうございます、ハジメさんもかわいいですよ」
そって腕を伸ばしハジメの髪を撫でると彼女は嬉しそうに頭を差し出す。
「キラキラしていてお姫様みたい」
「私を作ってくれた人たちに感謝しなければなりませんね」
「お父さんとお母さん?」
「そうですね遺伝子提供者です。そういえば、ハジメさんのお父さんとお母さんはどうしたのですか? レイショウと同じように外に?」
「鬼になった。お外で都市で売れるものを探していたら襲われたんだって」
「……そうですか、辛いことを聞いてしまってすみません」
聴いてしまってからしまったとジークルーンは慌てて口を堅く紡ぐ。
「大丈夫、よくあることだよ。この村の人はみんな誰かを鬼に襲われてる」
「……そうですか」
そのままジークルーンは黙り込む。
そんなことは気にせず急に黙り込んだ彼女を心配するハジメ。
ハジメの頭に手を置いたままジークルーンとの気まずい沈黙が続いた。
ジークルーンを家に残しレイショウは村の中を進み、一つの建物へと向かうと建物の外から声をかける。
「ミカド、居るか?」
声をかけると建物の中から足音が聞こえ暖簾をくぐってミカドが出てきて、レイショウの顔を見て驚いた表情を浮かべた。
「レイショウ、無事帰ってきたか。よかった、怪我はないか!? さっき話を聞いて後で行こうと思っていたところだ。……悪いな、俺はお前を置いて先に帰った」
「別にいいって、夜も近かったし、奴らもうろついていた。もともと俺が勝手に階段降りていっただけだからそれが普通だよ」
「てっきりお前が無事なら今日は地下に隠れて夜を過ごすものだと、明日何人かで探しに行こうってさっき村長に言って来たばかりだ」
「そうか、ありがとな。んじゃ村長のところにもいってくる。もう俺が村に返ってきた話も行ってるだろうけど、ちゃんと謝らないとな」
「ところでレイショウ? 村によそから来た人がいるって、お前と一緒に居たって聞いたが?」
「もう話が広がってるのかみんな流石だな。ああ、あの地下にいた……出会った女の子だ」
話を聞きミカドは不思議そうに尋ねる。
「あんなところに人が住んでいたのか? どこかの村と繋がっていたり?」
「いいや、彼女は一人だった……それも昔の、大戦があったときの生き残りかもしれない」
「その頃の人間ってとっくに死んでいるだろ、爺様たちの親の世代だぞ? それに女の子ってどういうことだ?」
「まぁ何だろうな、彼女の話からすると大昔の人間で変な機械の中で眠っていていてだな、なんだろう俺にはよくわからない。後でうちに来てくれ、それじゃあ村長のところに行ってくる」
自分が無事であった報告を終えるとミカドと別れレイショウはまた村の中を走りだした。