誰もいない故郷 3
ハジメは周囲が危険なのでレイショウのそばで座って休んでいた。
「ハジメ体は大丈夫か?」
「へーき。お兄ちゃんは?」
「俺も平気だ」
ハジメの育った場所であり鬼の襲撃で怖い思い出のある場所。
トラウマになるいないかと思っていたが恐れていてがハジメの姿を見てそんな不安は吹き飛んだ。
村へ向かうため排水路の暗闇に消えていくジークルーンを見ていたレイショウに、鬼がいないか見て回りアルケミストでない二人の護衛に残ったジュンセイが話しかけてきた。
「結局ここに戻ってきた、私たちに振り回されてあんたは多くのものを失った。鬼の正体を知って、あんたはユウセイだけじゃなく私たち全員が憎いんじゃない?」
「別に……俺はジークルーンに惚れてるのも変わらないし、あんたのことも悪い印象はないよ。あのふざけたやつは嫌いだけど」
「彼女も元はあんな性格じゃなかったと思うよ。私らが空に上がるときはまだ生まれてなかったから、戦中にあったこともなかったけど。チュウジョウも私もスイセイも元はもっとジークルーンのように民間人のために何かできないかを考えていたはず」
「何十年も前の話か」
「100年だよ、たった一世紀で世界は変わる。より良い世界を目指して戦ったはずなのに、気が付けばこんな世界さ。あんたは今の世界の生まれだから知らないだろうけど」
戻ってきたジュンセイはレイショウのそばの河原に転がる岩に腰掛けると空を見る。
昼間でも白くくっきり見える星を囲む輪。
それを見ながら、ジュンセイはレイショウに話しかけた。
「私たちについてきたあんたの旅はどうだった? ……話に付き合え」
これまでジュンセイとはあまり話し合ってこなかったのでレイショウは少し驚いたような顔をしたがすぐに答える。
「あ、ああ、知ってはいたけど、ハジメを安全に住まわせられるような鬼に襲われない安全な場所なんてなかったな、ミカドもあんなことになっちまったし……。ここで暮らしていても他の場所に行っても結局は鬼の脅威は変わらない」
「そうだね、どこへ行ってもどこまで行っても安全な場所はない。空にいる連中は何を考えてこんなことをしたのか、私にはわからない」
「ジークルーンは眠っていたけど、ずっと前の戦争で戦って地上に戻ってきたあんたらと、この空の上にいるあんたの仲間は何か違うのか?」
「違わないよ、私たちアルケミストは星のために戦った。戦いが終わり星へ戻る私たちと月の最後の反抗があるかもしれないからと警戒のために残ったユウセイたち、そこには何もなかった」
「でもあいつが鬼を操っていた。あいつは世界をこんなふうにした元凶なんだろ」
「そうだけど少し違う、空から降り地上にいたユウセイ一人ですべての鬼を操れるわけじゃないよ。この国はユウセイが管理していたみたいだけど……さ」
「ほかの土地でもあいつみたいなやつがいるのか?」
「ずっと城塞都市にいた私は外の情報を全く知らなけけど、ユウセイの言葉の通りならおそらくはそうだろうね。ほかの土地にはだれがいるんだろ、ジークルーンと出会うまでもうずっと気にしてなかったよ。もう知り合いもだいぶ減ったしあう機会もないものだと思ってた」
「あんたとジークルーンの関係ってどんな感じだったんだ? 見てきた感じだとほかのあるけみすとより仲良く見える感じだけど」
「彼女は私がいた艦隊の新入り……って言っても、もうとっくに国防組織も艦隊もないからわからないか。ジークルーンはこの土地ではないほかの国からきて私の仲間になる予定だった。あの頃まだ戦争が長引いていれば、私が彼女の先輩として面倒を見るはずだった。今でこそ私は彼女と年が近い風貌だけどあのことはもう少し年上だった」
「でも眠っていたってことはそうはならなかった?」
「そう、彼女の調整が終わる前に戦いは最終局面に入り、私らは月に赴きそこで最後の決戦があった。そのまま戦いは終わり私たちは地上に帰ってきた、その後は鬼手であいごたごたしていた」
「ジークルーンを迎えに来なかったのか?」
「私たちがいたのはもっと北の基地だったから、どこの基地でジークルーンが最終調整されていたか私は知らなかった。私たちが鬼と遭遇した時のごたごたが落ち着いてからはもう探そうという気力がなかった。何ならこんな世界になったことを知らないまま眠り続けてほしい、そういうことも思ったことあったかな」
「でも、ジークルーンと会ったとき襲い掛かっていったよな」
「アルケミスト同士は戦わない、ってのがあってできるのは模擬戦闘くらいで殺し合いにならないように力にセーブがかかって本気は出せなかったけどね。体は変わっても私たちの魂に刻まれた命令は消えないみたい」
「空に上がったら戦うかもしれないかもしれないんだろ、大丈夫なのか?」
「戦わないといけないかもね、でも向こうだって同じ命令が……弩級天翔艦、ユウセイのような私たちより後に生まれた子らは……どうなんだろう」
「あの空から隕石を落としてきた、あれは殺しあいになる攻撃にならないのか?」
「大戦中の月の船さ、大きく頑丈で多くの武装を積んだ多くの姉妹を屠ってきた我々の悩みの種だった航宙艦。あれは鬼を狙ったとすればできない攻撃じゃない、私たちは屋内にいたわけで直接ではなく加害範囲にいる分は命令の効果を受けないのかも」
排水路の暗がりの奥からライトの明かりが揺れて、村を見に行っていたジークルーンとユウセイが戻ってくる。




