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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
2章 --天翔艦クラールブルーメ--
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天翔艦とアルケミスト 2

「あなたのナノマシンの囲まれた状態で武が悪いも何もないでしょう。それに、ユウセイは皆ナノマシンを扱えるのでしょう、こちらは手も足も出ませんよ」

「たしかに」


「ナノマシンは一人一つで固有の信号パターンを持っているのに」

「全員が私だから」


 席に着いたユウセイは腕を回し骨がパキパキと鳴ならした。

 ジュンセイは警戒して席にはつかなかったが、ジークルーンはユウセイを見下ろしながら話すわけにもいかず席に着いて同じ目線で会話する。


「ここで作業をしているといろいろな部分が凝る、長時間の立ち仕事で金属であるナノマシンの服を着ているからね。肩でも腰でも後で揉んでくれないかね」

「あなたはたくさん居るのだから、自分で揉みほぐせばいいのでは?」


「そうすると他の私が疲れるだろう?」

「あなたは何を言ってるんです?」


 雑談はもういいからと横からジュンセイがテーブルをたたく。

 レイショウは座席の後ろに立ちハジメとともに話を聞いている。


「自分は目が覚めてから後ろにいるレイショウさんとともに城塞都市とエデンガーデン、そしてそれらの移動中にいろいろ見てきました。鬼が自分たちの使っているナノマシンだとわかる前は、人型の異形が自分を見つけ次第両手を上げて襲い掛かってきていて戸惑いました」

「私が作った鬼以外の鬼の行動パターンは100年前と変わっていないよ。鬼は角で情報の更新していて、情報にない人影を見かけたら誰彼構わず襲ってくるからねぇ。そもそもアルケミストが外を歩いていることを想定していないし」


「鬼が星を襲っている間、あなたたちは何をしていたんですか?」

「星に戻らず空に残った私たちは破壊した月の町に降りてしばらくは暮らしていたよ。食料生産設備と上水道設備は私たちが作れるし、多くない数なら生きていくのに十分。私が降りてきたのは先に帰ったアルケミストたちがコロニーやらシェルターやらを作ったころ。すでに国がなくなって国境線を維持している国はなかったな、通信はいくつかの都市でつながっていてSOSを聞いて空でも何人かが精神をやられていたよ」


「なんでユウセイは月から星に降りてきたんですか?」

「そりゃ、人が対策を始めたから。さっきも言ったんだが時間がたつにつれて鬼に恐れなくなり対処をし始めたからだよ、国によって対処が違うからその場に応じて指揮を執る存在が必要だった。ここは銃の所持が少ない地域だから人の形を維持したまま使えるのがよかった、外のミンチの怪物は他の国の真似だよ。先に降りたアルケミストが作ったもの見て今回を機に試してみた、今はそうそう大勢が一か所に固まることなんてないからね。私はこの国の生まれだから降り立つときはここを選んだだけだよ」


「チュウジョウから聞きました、城塞都市に車や機械製品をおろしているとか?」

「ああ、地上にあった工場でたまに作って届けたね。それが? それくらいはしてもいいだろう。チュウジョウも困っていたようだったし助力しただけだよ」


「なぜです? なぜ人を滅ぼすために星に降りてきたあなたが、人のために行動を?」

「別に、時間があったから。人はアルケミストの庇護を受けるかどこかに身をひそめるかで、私自身あまりすることがなかった。でも、まぁ、城塞都市を行き来する人間の後を追跡し村の場所を特定しやすくなったよ、人は移動できても建物の移動は難しいからね、戦力を整え満を持して満月に襲撃する。ああ、満月に行動させるのは明るいし夜は人が眠るため村に帰って一か所に集まっているから、それに時間がたち動きの悪くなった鬼をまばらに行動させるより戦力は一ヵ所に集めた方がいいからね」


 得意げに話すユウセイ、ジークルーンの後ろでレイショウが拳を握る。


 後ろから漂うユウセイに向けられた敵意にジークルーンが振り返ってレイショウを見た。


「駄目ですレイショウさん、握手をしたでしょう一時休戦です。ユウセイがまともに戦おうとすれば勝てませんよ、レイショウさんが怪我をするだけです」

「でも、こいつが居なかったら村のみんなは死ななかったんだ、こいつがこいつのせいで。それに向こうが挑発してきている」


「でもダメです、耐えてくださいお願いですから」


 ジークルーンに宥められ再びレイショウは黙り込む。


 自分を落ち着かせるためレイショウはユウセイに撫でまわされ、跳ねたハジメの髪を手櫛でかき乱れた髪を整える。

 ふと額に触れると彼女の額にできたコブは無くなっていて安堵の息と吐いた。


「ユウセイ、ちゃんとお話をしましょう」

「はいはい、わかったよ。それでジークルーンは何でここに来た?」


「どうしてこんな世界になってしまったのかを知る為です。我々は星の人間を守るために戦ってきたはず、こんな世界にするためではありません」

「旅をしてそれは知れたか?」


「いいえ、誰も答えを教えてくれません。教えてください、なぜ戦争が終わった後、星の人間を攻撃……人間通しを襲わせ始めたんですか」

「それが私たちの総意だから」


「総意、それはなんですか」

「教えない、面白そうだ。それは自分の目で見て耳で聞くといい。まぁ、なんであれ人を救いたいなら空へ行くしかないな」


「ですが、天翔艦を飛ばすには燃料が……100年前の燃料がまだ使えるとは思いませんし。こんな状態で調達は不可能なのでは?」

「燃料ならある。ここを移動するには必要不可欠だからねぇ、私……弩級天翔戦艦を動かす燃料ともなると天翔巡洋艦を動かすには十分な量では?」


「そうですね。協力していただけるのならありがたいです。協力してくれるんですか?」

「ああ、アルケミストの助けになるなら私は協力しよう。ここにある燃料をジークルーンに渡そう」


 ジークルーンは振り返り背後に立つレイショウとハジメを見る。


「自分は、月へ行きます。ジュンセイ、ユウセイ協力してくれますか」


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