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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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村へ 1

 先回りなどをされていないかを心配するジークルーン。 



「奴らはそこまで頭がよくない、しばらくはあの建物の中をうろついて俺たちを探し回る。その間に見つからないように距離をとる」

「……あなたがそういうのなら、そうなんでしょう。わかりましたついていきます」


 二人はそっと外の安全を確認し建物から出る。

 奴らはまだ先ほどの建物をのぼっていてジークルーンたちを探していた。


「本当に追ってきませんね」

「大きな音さえ立てなければ大丈夫、さっきもジークルーンが大きな声をあげるからあちこちから大勢向かってきた。この近くのはみんなあそこに集まったと思うし慎重に行けばもう奴らと会うこともないと思う」


 振り返り遠ざかっていく建物を見ると、指から生える鎌状の爪を使って壁をよじ登る人影たち。

 しかし壁は脆くのぼっている途中で壁からはがれるように落っこちていく姿が見えた。


「初めに行ってくれればよかったのに、どうしてそういうことは教えてくれないんですか? 知らない、わからないと嘘をついて」

「わからないのは本当だ、奴らはどうして人に襲い掛かってくるのか。それに俺を信じてくれなかったろ言ってたら信じたのか? 会ってからずっと俺の話を信じていなかっただろ?」


「それとこれはまた別です。これを機に知っていることは全部は話してください」

「全部ってどこから?」


「初めからです、全部、知っていることを全部、私に話してください」

「初めからって……無茶なことを。最初は鬼でいいか、さきっき追ってきた奴らは戦争の終わりの方に送り込まれたって聞いてる。怪物たちだ」


「元からああいう人に似た生き物なんですか?」

「奴らは元は人だったんだ、奴らは攻撃をし負傷した人間を豹変させ奴らは増えていく」


「じゃあ、生物兵器なんですね?」

「生物?」


 問いかけに首を傾げられジークルーンはすぐさまレイショウにわかるように言いなおす。


「言い換えます、細菌兵器やウイルス兵器の仲間なんですね?」

「……ん? よくわからないけど、村長や老人たちはばい菌とかの仲間みたいなのって言ってた。爪に引っかかれたり噛まれたりすると傷口から感染するって」


「なるほど、これも聞いていなかったから危なかったですね。あのまま戦っていたら危険でした、傷がないかを聞いてきたのもそれでなんですね」

「だから危ないって止めたんだ」


「奴らは疲れることなく走れるけど、脚はそれほど早くはない。見つかっても、囲まれなければ全力で走ってなんとかなる」

「なるほど、特徴だけ聞くとゾンビみたいですね」


「ゾンビ?」

「鬼は知っているのにこれは伝わないですか? まぁいいです、わからないなら聞くだけ無駄です早く行きましょうレイショウさん。早く村を案内してください」


「ああ、村に案内するよ。ジークルーンのききたい情報も、もしかしたら村長たちが知っているかもしれない。俺について来い!」

「お願いします」


「奴らが追ってきていないか確かめるため、少し遠回りをするけどいいか? 村に連れて帰るわけにもいかないから」

「かまいません、ちゃんと村へと連れて行ってくれるのであれば」


 鬼が追っかけてきていないかを頻繁に振り返り、遠回りをしながら振り切った判断したタイミングでレイショウは村へと進路を向ける。

 レイショウについて歩きジークルーンは川へとつく。


「川ですね。基地の近くだったこの川原は、自分が調整を受けるまで毎日大勢の人が来ているのを基地へ向かう車両の中から見ていました」

「そうなのか? でももうこのあたりには隠れる場所も少ないしあまり人も寄り付かなくなったな」


 土手を降り川へと降りると地下へと続く大きな排水路を指さす。


「この先が村だ」

「ここを進むんですか? ここ都市部で降った雨の水を川へと流すための地下に通った排水路ですよ?」


「もう夜も近い、早くいこう。少し遠回りをし過ぎた」

「……わかりました」


 暗く先が見えない水路に進んでいくレイショウを、ジークルーンは身に着けていた鞄を鉄の棒に変えて追いかけて暗闇に進む。


「先に言っておきますが、私に襲い掛かってきた容赦はしませんよ? 暗がりでも気配は感じ取れてますから男性相手でも優勢に戦えます」

「信用されてないなぁ……」


「出会ったばかりで信用するのが無理な話です」

「それもそうだけど」


「出会い方も好ましいものではありませんでしたから。質問をした時自分の体を上から下まで見回して」

「裸を見たのは悪気があったわけじゃないんだ。たまたまあの場所で見かけて綺麗な人だと見惚れて、いや、でも見たな」


「見たじゃないですか」

「悪かった」



 懐中電灯で照らしながらじめじめとした排水溝を奥へ奥へと進んでいくと、道の先に明かりが見えた。

 光へと向かって歩いていくと人影が見えボロボロな建物が見えてくる。

 そこに人の姿も確認できジークルーンは深く息を吐くと手にした鉄の棒を帽子へと変化させ頭に被る。


「これが村だ」

「貯水槽、いや外郭放水路ですか? なぜこんな暗い場所に人が住んで……?」


 バリケードやフェンスが狭い通路の道幅を制限し、村の手前で入り口の見張りに停められる。

 人を寄せ付けない頑丈なバリケードの向こうから見張りが顔を出す。


「止まれ、レイショウ。ミカドが先に戻ってきていたぞ。ところで誰だその子は?」

「廃墟街で出会ってき場所がなくて困っていたから連れてきた。開けてくれ」


「傷がないか確かめたか?」

「大丈夫だしっかり確かめた」


 見張りはレイショウの言葉を信じて門を開ける準備を始めた。

 バリケードの門が開くのを待ちながらジークルーンは尋ねる。


「しっかり見てたんですね。身に覚えはありませんが?」

「ああでも言わないと検査を受けないといけなくなるから、それにジークルーンは怪我してないだろ?」


「ええ、突然のこととはいえしっかりと身を守りましたよ。そもそもこの服も金属を編んだものですから、そう簡単に破かれるものでもありません。ところで体に傷があると村に入れないんですか?」

「まぁ、そうだ。人にもよるけど助けられるなら暴れないように取り押さえたうえで薬を打つ。高級品だけど命には代えられないから」


「なるほど、一応は治療できるんですね」

「完全に変化が始まったら無理だけどな。まだ体に異変が起きていなければ助けられる」


「奴らについて他にわかっていることは?」

「昼間は辺りを徘徊していて、夜は建物や瓦礫の下に隠れて動かず行動しない。もちろん近づいたりして気が付かれれば襲ってくるし、どこに居るかわからないから夜行動するは危険なんだけどさ」


「他にはあの体の異常、長く伸びた爪などはどうなっているんですか?」

「あの歯や爪は並みの金属より硬くて、それでいて感染する毒を持っている。だから普通は相手をしないんだ、追い詰められた時はさすがに戦うけどな。おっと開いた、中へ入ろう」


「さっき、教えてくれればよかったのに」

「すべて教えてくれって大雑把な質問で、すぐに出てこなかったんだよ」


 大きな軋みを上げてバリケードの間にある扉が少し開くと、レイショウが先に進みジークルーンもあとから村の中に入る。

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