天翔艦とアルケミスト 1
話している最中に建物が揺れる。
ジークルーンたちだけでなくユウセイたちも天井に意識を向け、そのすきにハジメが逃げ出しレイショウのもとへとかけていく。
「また落としてきたか、どうやら本気らしい……星を囲む輪になっているデブリをすべて落とそうという勢いだな」
「そうでした、滅茶苦茶をやらかすユウセイのことで頭から抜けていましたが、空から月の船が落ちてきましたあれは何ですか?」
ハジメを逃がしたことを残念がりながらも立ち上がって体を伸ばし通路に残ったユウセイは、睨みつけるレイショウの横をすり抜け部屋へと入っていった。
「今ジークルーンが自分で言った通り空から月の艦船が落ちてきている、それだけだよ。今日は終戦100年目で、派手に花火でも打ち上げているんだろう。たしか100年前の今頃、防衛艦隊を滅ぼし我らの艦隊は星に向けて戦争終了の報告が行われていたころだったかな」
「上がってません、むしろ落ちてきてるんですけど」
「あげてるじゃないか、私らが迎撃のために対艦砲を惜しみなく。まぁ、さっき一度蒸発して、今また蒸発したが」
ユウセイの笑えない冗談にその場は一度静まり返る。
その静寂を再び飛び掛かっていきそうなレイショウの前に出たジークルーンが切り裂いた。
「そうです、戦争が終わり星に戻ったアルケミストたちと天に残ったアルケミストたちあなたたちは協力関係にあったのでは? なぜ攻撃を受けているんです?」
「なんでだろうね。私もびっくりだよ。今回のような攻撃は初めてだし、攻撃を察知して電波塔が消えてしまう前に連絡を取ったが返事はなかった。落着地点の大まかな予想はここと城塞都市、そしてエデンガーデンと三か所、とまぁ意図して狙ってきてる」
「どうしてですか」
「私もわからないよ。ジークルーン、あんたは尋ねてばかりだね、少しは自分で考えてみたらどうだろう?」
「自分は指示に従い人々を守るのが使命です、考えるのは不得意で聞いた方が早いです」
「さっぱりしてていいね、割り切きが素晴らしい。もう我々も命令を待つただの兵器じゃない、自分で考え行動し生きていかないといけないんだ。目覚めたばかりのあんたにはまだ難しいだろうけど」
話を聞いていたジュンセイがあきれた様子で口をはさむ。
「話がずれてるよ、攻撃されてるはなし」
「そうでした、何とかして空にいるみなと連絡は取れないんですか?」
問いにユウセイは首を振る。
「向こうが拒否しているようだ。どうやら、100年たって人が滅びないから方針を変えたんじゃないかな、人を支援するアルケミストの施設を狙っているようだ。今食料を作っているのはアルケミストの運営する施設だけだから。ここをつぶせばほとんどの人が食に飢えることになる。ここは違うというのにとんだとばっちりだ」
ジークルーンの後ろでハジメと強く手をつないだレイショウが吠える。
すっかり頭に血が上っているようで隣で怯えている妹の様子に気が付かないレイショウ。
「ここは人を殺すために鬼を操ってる場所だもんな!」
「そう怒るなよ、武器は生き物を殺すもので兵器は人を殺すものだろ?」
彼女が間に入って止めていなければまた掴みかかっていきそうな彼を見て、ジュンセイの場合はとり抑えるためにレイショウの前に立つ。
レイショウが武器を手にすればユウセイが何をしでかすかわからない、アルケミスト二人の注意はそこだった。
「ユウセイ、これ以上神経を撫でまわして彼を歪ませるな話が進まない。彼はこの間アルケミストの鬼にともに逃げてきた仲間を殺されたんだ、私らは数日しか素一緒に過ごしていないがおそらくは大事な戦友だったんだろう。まだ続けるなら私らも少しあんたを黙らせるのに協力するよ」
「わかったよ、とりあえずは一度仲直りしよう」
両手を上げ敵意がないことを露骨にアピールして、殴られた方のユウセイは上げた手を前に伸ばしレイショウに握手を求める。
彼女の行動にジークルーンとジュンセイは顔を見合わせるが、一度道を開けてレイショウの様子を見ることにした。
さんざん煽っておいて挑発以外のなにものでもない行動にレイショウは眉をピクリと動かすが、ジークルーンたちに道を譲られハジメと手をつなぎながら大人しく前に出る。
「それじゃぁ、まぁ、よろしく。仲良くしようじゃないか」
「俺はお前を許さないからな」
握った手にレイショウは力を籠めるが、ナノマシンで強化されたユウセイがそれより強い力で握り返す。
「それでいいよ、恐れ恨まれ疎まれるくらいがちょうどいい」
お互いに握手を交わしユウセイ二人を含めた6人は席に着く。
タブレットを持ったユウセイは仕事をしながら話を聞き、基本はレイショウに殴られた方のユウセイが話を進める。
「やっと落ち着いて話が出来ますね」
「私は最初から落ち着いていたんだけどね」
「怒りますよ?」
「悪かった、さすがにアルケミストまで入った三対二は分が悪い。いや私は何人いても一人だから、三対一かな」




