果ての工場 3
足を止め話し出したユウセイの一人と同じ速度で歩きながら言葉を選んでジークルーンは彼女たちに尋ねる。
「あの、ユウセイ、あなたたちは、クローン、なのですか?」
問いにユウセイたちはフッと笑う。
「似たようなものだけど違うなジークルーン、誰かに聞いていないか。クローンは今の技術じゃ完璧にはいかなかったと」
「記憶の転写がうまくいかないどうのと聞きました」
「そう、彼らは複製でありながら完全な人と同じにはならない。人の形をした人でないものというのなら私たちも同じはずなんだけどね。我々のような人造人間はできるのに、完全なクローンはいまだにできない。もっとも、もう今の世界では研究が進むこともあまりないのだろうけどね」
「なら、あなたたちはなんなのですか?」
問いにユウセイの一人が下腹部を撫でながら答える。
「クローンがダメなんだから作り方は一つだろう、他の子らと一緒さ。製法はアルケミストの制作時と一緒だよ。素体を選んで人工授精で命を授けて、人の胎盤からではなく機械の中で生まれた存在に記憶の転写を行った。私たちは同じ親の遺伝子を使っているから、一度にダース単位で生まれる私らは双子のようによく似る」
ジークルーンの質問に答えるユウセイを一人を残し、残りの7人はそのまま通路の角で別れての奥へと消えていく。
「ダース単位?」
「ああ、卵子はもちろん私たちから。男は役目を終えたら鬼の創作を兼ねて、適当に居なくなってもいい人間をチュウジョウから送ってもらっている。どうせすぐばらしてしまうから興味はないがおそらく彼らは犯罪者か何かだろう。そしてこの工場と呼ばれる場所を運営しているのは私ら200名だ。あまり多すぎると今度は水や食料が足りなくなるのでね、そこは折り合いをつけて」
一人残ったユウセイは壁にもたれかかり話を続ける。
ジークルーンたちは彼女のそばに寄り尋ねた。
「ここにあなたたち? ユウセイ以外の人はいないのですか?」
「いないよ。ここの周囲をうろつく鬼を見ただろう、人は便利な技術を持てばすぐ破壊に使おうとするから、ここの設備も道具も設計図も渡さないし誰も寄せ付けない。ここにはアルケミストも同じ記憶を有する大勢の私だけだ」
「城塞都市もエデンガーデンも終戦後混乱時、鬼の襲撃から民間人を守るために、自然と集まって大勢のアルケミストがいたと聞きました。他にアルケミストがいたんですか、それとも一人なんですか?」
「まるで私に人望がないみたいじゃないか、傷つく言い方だ。それは私が地上の混乱が収まってきてから空から降りてきたからだよ。人が住んでいると天翔艦を使ってこの工場を作れないからね」
ジュンセイは話を聞くのに飽きて速度を下げて後ろに下がり、後をついて来ているハジメの頭を撫でる。
話を続けるユウセイについていきジークルーンたちは応接間のような部屋に案内された。
簡素な鉄のテーブルに鉄パイプの椅子が数脚あるが、ユウセイは壁にもたれかかり話をつづけた。
「あの、鬼の集合体はなんだったのですか?」
「何だったのかといわれると、むつかしいな。100年もすると恐ろしかった鬼も少し気をつければ、その単純な行動が故に安全に対処できるものへと認識が変わってしまう。だから、新しい鬼を作るとしたらどうしたらいいかと考え、そこにあのタイミングで新しい可能性があったから試した。それだけだ」
「新しい鬼……」
「ここへ来る途中に見たかどうか知らないが、成長ホルモンの過剰分泌で体を無理やり成長させた筋肉だるまの一本角と、脳の破壊を押さえ設定された単調な動きしかしない鬼に複雑な動きを命令させる三本角を作った。なかなかに良い出来でエデンガーデンのアルケミストたちによってすぐに量産されたね。あそこは鬼を作る場所ってことは知っていたか?」
あとから部屋に入ってきたレイショウたち。
鬼に怯えながら暮らしていた彼らの生活を思い出しながらジークルーンはユウセイに向き声を荒げる。
「あなたは、守るべき人を傷つけてなんとも思わないのですか! 自分たちはこの星の人を守るために作られた存在のはずです。あなたは弩級天翔戦艦のアルケミストですよね、どうして守るはずの人に刃を向けるんですか。命令に背き兵隊でもない民間人を傷つけ、苦しくないのですか!」
「そんな気持ちは何十年も前に消えてしまったよ。若いね、いや実際あの戦争に参加せずに寝ていたのだから若いか。鬼を作るのは月に残った彼女らからの指示だからだ、人が増えすぎると争いの種になる。人を集めず適度に散らせるには鬼はちょうどよかったんだよ、人が多ければ生活で立てる音は大きくなる鬼はその音を聞いて集まるからね」
ジークルーンたちの後ろで話を聞いていたレイショウが前に出て尋ねる。
「あの鬼たちを作っていたのはここなのか?」
「ん? ……ああ済まない、いきなり話しかけられたもので戸惑ってしまった」
当然話に入ってきたレイショウに一瞬驚き固まるユウセイ。
そして彼女は気怠そうな視線をレイショウに向け笑みを浮かべる。
「今話した通り、人は学習し対策を練ってしまうから新しい鬼は必要だったんだよ。異形化した元人間たち、対峙する君らはさぞ怖かっただろう?」
壁にもたれかかっていたユウセイが壁から離れレイショウに向かって歩き出すと彼を突き飛ばす。




