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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
5/102

廃墟の地下で 5

 止めるレイショウの手をジークルーンは振りほどく。 



「駄目だ、身を隠してくれ」

「それじゃ自分とはここまでですね。あなたのことは言いませんので、逃げるなりそのまま隠れるなりしていてください」


 そう言ってジークルーンは立ち上がりレイショウの必死の引き留めも聞かずに物陰から出ていこうとし、それでも彼は出ていこうとする彼女の腕を強く掴むが強引に引きはがした。


 レイショウを振りほどき物陰から出てジークルーンは人影に話しかける。


「自分に敵意はありません。自分はジークルーン・アインホルン、すみませんがお話を聞かせてもらえないでしょうか!」


 彼女を見つけた人影たちはジークルーンに目掛けて両手を広げて走り出す。

 物陰から出ていくのを止めていたレイショウの必死さからジークルーンは人影に用心しつつ、声を張り走ってくる人影に話しかけるが向かってくる人影は止まらない。


「あの、お話を」


 向かってくる人影に次第に違和感を覚えジークルーンは身に着けた鞄を鉄の棒に変える。

 近づくにつれそれが人と少し違うことに気が付く。


 ぼろきれのような衣服と顔が隠れるくらい長い髪、走りながら両腕を広げて叫ぶわけでもなく黒い口を大きく開けていた。

 そして乱れる髪の間から見える額から天に向かって生える黒い角。


「なんですか、自分は少しお話を聞きたいだけで……」


 レイショウが鬼といっていたことを思い出しながら人影が更に近づいてきてジークルーンは長い棒を刃のついた刀に変える。

 大きく開いた口の中に並ぶのは歯ではなく長い釘のような棘、それと広げた手のひらの先爪には鎌のような長い爪が生えていた。


「おに……確かに……あの姿は、そうですね」


 息を大きく吸うとジークルーンは相手に聞こえるように大きな声を出す。


「止まりなさい! それ以上近づけば自分も攻撃をする準備をします、自分は話し合いたいだけです! 戦闘ではなく対話を!」


 金属の棒を向けるが止まることはなく大きく口を開いてジークルーンに飛び掛かる。

 襲いかかってくる敵らからジークルーンは華麗に攻撃を躱すと距離を取った。


「何ですかあなたたちは? こちらは攻撃をする意思はありません、話し合いましょう」


 しかし、相手は鎌のような爪を振ってジークルーンに飛び掛かってきて手にした刃を棒に戻して飛び掛かってくる奴らをあしらう。

 爪やとげとげした歯で攻撃を仕掛けてきてそれらを棒で受け止めると火花が散る。


「この爪は金属? しかも丈夫な、あなたたちはいったい何なんですか?」


 問いに返答はなくただ彼らは唸りながら襲ってくるだけ。

 さばいたやつらの一人が建物の壁をひっかき、その部分が大きく削れた。


「下手すると肉を削がれそう。なぜ襲ってくるのですか!」


 ジークルーンが襲ってくる奴らをあしらっていると、町の奥から音を聞きつけ更に人影が集まってくる。


「これ以上はまずい、流石にさばききれない」


 動きは見切れなくないが人並外れた力でジークルーンは体内にある


「上だジークルーン!」


 建物の上に上ったレイショウが戦うジークルーンの近くにロープをたらす。

 そして彼は登ってくるように手招きした。


「レイショウさん、どうして?」

「やっぱ出会ったばっかりの人を放って置けない、それもこの世界のことを良く知らない女の子ならなおさら! 捕まってくれ俺が引き上げる!」


「不純な理由ですね」

「感謝は助けた後に行ってくれ!」


 建物の上から大きな声を聴き鬼たちはレイショウを見上げる。


 襲ってくる奴らの相手を諦めジークルーンは軍刀を納め垂らされたロープを掴みレイショウの引き上げに頼らず自分の力だけで上って行く。

 少し遅れてレイショウもジークルーンがロープに掴まったことを確認すると気張って引き上げる。

 上りきるとジークルーンは下を確認しレイショウへと向き直って礼を言う。


「怪我はないか、擦り傷でも切り傷でも奴らにやられた傷は? やられたらすぐに手当てしないといけない」

「ありません、攻撃は大振りで単調でしたので武器のおかげて間合いもありすべて受け流しました。救出ありがとうございます助かりました」


「まだだ、奴らは執着心がすごい。ここから離れないとまた囲まれる。逃げるぞ!」

「そうなんですか、なら逃げましょう。言葉が通じる分、まだレイショウと話していたほうがいいですからね」


 助けるために下ろしたロープを巻き取りレイショウは建物の奥へと走り出す。

 ジークルーンが再度下を見れば奴らが建物の中に入っていく姿と壁をよじ登ってくる姿が見えた。


「それで逃げるってどこに行くんですか?」

「ここらは建物が高いから隣に飛び移って逃げる」


「それ、本気で言っていますか?」

「そうでもしないと奴らからは逃げきれない」


「なにで飛び移るんです? そのロープでですか?」

「必要ないジャンプだ」


 そう言ってレイショウが走って行く壁にはペンキのようなもので落書きのような矢印が書かれているのをジークルーンは見つける。


「この壁や床に描かれた落書きはなんですか?」

「逃走用のルートだ、この道を通れば助かる。奴らは文字も記号も読めないから俺たちだけにしか意味は伝わらない」


「移動した先の建物が安全だと何故言えるんですか?」

「階段がないかだら、奴らは人を追わない限りは壁を登ったりしない」


 壁にある印に従い走って行くと壁に建物の穴が開いており、そのまま隣の建物の壁にも人が通れるほどの大きな穴が開いていてレイショウは壁の穴から隣の建物へと跳ぶ。

 後に続いてジークルーンも建物から建物まで飛んだ。


「あとは降りるだけだ! 急げ急げ!」

「隣のビルに飛んだだけじゃないですか、すぐ追いつかれますよ」


 隣の建物に飛び移ると急いで通路を走り階段を目指す。

 飛び移った先の建物も先ほどの建物動揺天井や壁に落書きがしてあった。

 レイショウが階段を下りていくたびにリュックの中身が音を鳴らした。


 下の階へ通りていると途中で階段が途切れておりレイショウが近くの柱にまかれた鎖を掴んで下の階へと降りるとその階も階段は崩れており鎖を使う。

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