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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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救いなき世界 5

 

 突き刺さったミカドを振り落とし三本角の鬼は馬上槍を大きく振り上げてジュンセイに向き直った。


「ミカドさん!」

「もう死んでるよ、心臓を貫かれてる」


「そんな……」

「それよりどう戦うか……私たちは私たちと戦うことを予定していない」


 鬼の持つ大きな槍はどろりと溶け巨大な鎌へと形を変えると空へとむけ大きく振り上げる。

 オレンジ色に目を輝かせる鬼のもつ鎌の刃は月明かりに照らされ青白く輝く。


「アトランティカ……、あの鬼はナノマシンを扱えるのですか」

「記憶を失っただけで段差を迂回したり回り込んだりある程度の知性は残ってる。あんな鬼は今まで出会ったことはないけど、アルケミストの力は厄介だ」


「自分がやります、ガーデンに行こうといったのも、アトランティカがこうなってしまったのも自分ですから」

「援護する、行って!」


 軍刀を構えジークルーンが走り出すとジュンセイが鎖を伸ばし、鬼の持つ武器に絡めると勢いよく鎖を手繰り寄せる。

 三本角の鬼は鎖の絡まった鎌を手放し後ろに下がると、直後手放された大鎌を後ろに控えていた大鬼がいつの間にかに前に出てきていて鎌をつかむとジュンセイが引っ張る鎖を掴み引っ張り返す。


「このっ! 卑怯な!」


 当然、大鬼より小さく軽いジュンセイが振り回され、地面を転がりながら彼女は慌てて鎖をちぎる。

 地面に倒れ迫ってくる鬼の姿を見てすぐに起き上がるが、ジュンセイの鎖を撒いたまま大鬼は廃墟の方へと走り去っていった。


「あ、くそ、持ち逃げされた! 私のナノマシンが! 鎖に使い過ぎた、残りが心もとない」


 逃げていく大鬼を追わずジークルーンは真っすぐ三本角の鬼へと向かっていくとその首に斬りかかっていく。

 しかし、攻撃は長い爪で食い止められ軍刀がはじき返され、同時に空いた手でジークルーンの顔に長く伸びた爪を伸ばす。


「眠ってくださいアトランティカ。後は自分らがこの世界で生きていきます、ですから」


 ナノマシンで作られた服で身を守り、鬼の爪のナノマシンとぶつかり合ってバチリと青白い火花を散らした。


「ここで! 斬る、自分がやらないと!」


 渾身の一振りも距離を取って躱され、三本角の鬼は残っていた赤い服を着た鬼のもとへと下がっていく。

 そして赤い服に触れると服がみるみる大きな鎌へと形を変え、三本角の鬼の手の中に納まる。


「鬼の服が、あれもナノマシンか!」


 赤い服の無くなった鬼を切り捨てジークルーンはあとから追いついてきたジュンセイとともに三本角の鬼を追う。



 目の前でミカドを失い焦燥するレイショウ。

 動揺から力が抜け崩れ落ちそうになるも、武器を構え襲い掛かってくる鬼から一人ハジメを守るために戦い続ける。


「どうしてこんなことに、俺たちはただ安全に暮らしたいだけなのに……」


 長い爪で服ごと肉を切られながらも一人でなんとか襲い掛かってくる鬼を排除し、レイショウは息を切らせて他に鬼がいないか見まわす。


「今ので最後か? 最後みたいだ、ハジメ」


 すでに体のあちこち鬼によって切り裂かれ銀色の瘡蓋が月明かりで冷たく輝く。


「ハジメ、もう少しジークルーンたちのそばに行こう」

「うん……」


 傷だらけのレイショウの姿を見て目に涙を浮かべるハジメ。

 ミカドが殺される瞬間を見てしまい震える小さな体を抱えて立ち上がるレイショウ。


 その背後でむくりと起き上がる人影。

 爪は伸び額には二本の角が生えている姿を見てレイショウは顔をゆがませた。


「くそっ、こんなこと! こんなこと……ひどすぎんだろ」


 ハジメを降ろしレイショウは武器を構える。

 そして変わり果てたミカドと対峙した。


 まだ鬼になる最中なのか牙はなく角と手の爪だけ生えており、それでも他の鬼と変わりなくレイショウ目掛け飛び掛かってくるミカド。

 三本角の鬼に刺され体に穴が開いていても動きに変わりはなくミカドは淡々とレイショウに長い爪で切り付けてくる。


「どうして普通に暮らしていただけなのにこんなことに、なっちまうんだ!」


 両腕を掴みジュンセイから借りた力で強引に抑え込みレイショウは、ミカドを取りの持つ鉈を抜き取ると突き飛ばし改めて向かってくるミカドにそれを首に立てた。

 鉈を握る手に力を籠め振り下ろす。


「……ごめんなミカド」


 首を切り落とそうとするがミカドの姿を見て過去の記憶が一瞬頭をよぎりレイショウの手から力が抜いてしまい、彼の首を深く斬りつけただけでとどめを刺すには至らなかった。


「くそっ、ミカドが辛いだけなのにどうしてとどめを刺せないんだ」


 首に大きな傷を受けても起き上がろうとするミカドに向けて、もう一度鉈を振り上げるレイショウ。

 そこへ大きな鎌が飛んできて振り上げたレイショウの腕を切り落とす。


「あああ、グゥゥ!! なんだ!」


 血はすぐに止まり銀色の瘡蓋となり、すぐに痛みも引いていく。

 地面に深く突き刺さった鎌と落ちた自分の腕、ハジメが無事であるのを確認すると鎌が飛んできた方向を見る。

 鎖の巻き付いた大鬼が迫ってきていて、腕を伸ばし太い腕の先にある鎌のような爪を大きく広げていた。


「今まで鬼から逃げて生活していたのに、なんでこんなことしてるんだ」


 そこへジュンセイが戻ってきて大鬼に巻き付いた鎖をワイヤーに変え、強引に巻き取りワイヤーの摩擦で大鬼の首を刎ねる。


「私らにかかわるからだよ、ジークルーンとかかわってしまった。そこであんたらは普通には生きられなくなったんだよ。異常だった普通に戻ることはできない」


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