救いなき世界 4
暗く足元すら暗闇に飲まれる中、廃墟の間を抜けて広場に差す月明かりが5人と鬼たちを照らす。
二匹いる一本角の大きな鬼は一匹は微動だにせず立ち尽くし、もう一匹は襲い掛かってくるわけではなく距離を取り5人の周りを遠巻きに回るように走っている。
鬼の速度はまばらで素早いのもいれば、ノソノソと歩いてくるもの居てジュンセイは迫ってくるものから順に鬼を倒していく。
素早い攻撃だったが華麗にかわしジークルーンは軍刀を両手で握り腰を落として切り上げる。
「ごめんなさい」
ジークルーンはそういって攻撃を躱し隙を見せた鬼の首を刎ね、落とされた頭は宙を舞い体は力なく地面へと崩れた。
倒れた鬼を見てジークルーンは手の力を抜きだらりと降ろす。
「一匹倒しただけで固まらないで、次が来るよジークルーン」
「はい」
ジュンセイに注意され武器を握りなおし辺りを見回すジークルーン。
そして次に迫ってくる鬼に向き直り軍刀を構えなおす。
「どうして、あれだけの数がいてこんな時間差の攻撃をしてくるのでしょう!」
「新しいのは動きが早くて、古いのは体にガタが来てるんだ。一定の周期で交換が必要な理由だよ」
「それが満月の日」
「それより、あの奥の。神官の服装のやつが司令塔だ。気配が違うからあれはアルケミストの誰でもない。アルケミストは追ってこなかった。なら倒しやすい、足の速いこいつらを倒したら真っ先にあいつをつぶす」
一匹の大鬼の後ろに隠れるようにして立つ赤い服を着た人影を見る。
フードを深くかぶっており赤い服の影の者のの顔を見ることはできなかったが、他の鬼がレイショウたちに向かって襲ってくる中、二匹の鬼はその場か動くことはなくたたずんでいる。
「足の遅いのならレイショウさんたちでも対処できていますからね」
「あれを倒せばこのあたりの鬼も少しは鈍くなるはず。あいつがリアルタイムに指揮を執っているから単調な行動しかできないはずの鬼たちが飛び掛かる以外の攻撃ができる。アトランティカが私たちに足止めをさせたようにね」
アルケミストたちが戦う中レイショウたちもナノマシンの力を借りて強化せれた身体能力で、襲ってくる鬼の頭を殴り一匹ずつ倒しているとレイショウの隣でミカドが鬼の力に負けて押し倒される。
ミカドにとどめを刺そうとする鬼を金属の棒で殴り飛ばし、倒せはしなかったが距離を開けそのすきにレイショウはミカドを立たせる。
「どうしたミカド、力を貸してもらってるおかげで早くても動きが目で追える、一匹ずつなら手こずらないだろ!」
「い、いや、鬼だってわかってるのに、人だと思うと力が。くそっ、今更! 今まで鬼は何匹も倒してきたってのに」
足の速い奴は動きが良く武器を変幻自在に変えられるジークルーンたちと違って、レイショウたちの攻撃を鬼たちはよけたり防いだりされる。
それに加えアトランティカを刺した動揺からミカドの戦い方がぎこちない。
ハジメは鬼に襲われないよう朽ちた木の方へと逃げしゃがんで身を小さくしていて、レイショウとミカドは近づく鬼を襲ってくる順番に相手をしていた。
「アルケミストの人を刺したのを引きずってるのか、迷うなミカド! 迷ったらやられるぞ」
「わかってる! わかってるさ、そんなこと! レイショウ後ろ!」
振り返れば遠巻きに走っていた大鬼は二人めがけて突進してきている。
直進してきた大鬼の進行方向から飛びのき距離を取り、数を少しでも減らすべく周りの足の遅い鬼を倒す。
「くそ、よそ見したら襲って来たぞ」
「ああ、襲ってこないと目を放せばまた突っ込んでくる。なんでこうここの鬼は変な動きをする奴ばかりなんだ」
鬼を警戒するミカドの視界の端に月明かりを反射する綺麗で長く白い髪が見えた。
ふと周りを見ればジークルーンとジュンセイは別の鬼と戦っており二人ではない。
辺りをきょろきょろと見まわすミカドにレイショウは話しかける。
「どうしたミカド?」
「いやなんか、いま白い髪がみえて……いてっ」
バチッという音ともに薄っすらアトランティカの血が付いた手に青白い光と痛みが走り手にしていた武器を落とした。
「何だよ、急に……あ」
痛みが走った手元を見ていたミカドは長く大きな馬上槍に貫かれ大量の血が飛び散る。
勢いで彼の体は宙に浮き吊るされるようになり傷口でバチリと音を立てた。
「ミカド!!」
飛び散ったミカドの血を浴びながら後ずさるレイショウ。
戦おうにも相手を見てすぐに勝てないとわかりどうすることもできず奥歯を鳴らす。
廃教に響き渡る悲鳴じみたレイショウの大声に、戦闘中だったジークルーンとジュンセイが鬼と距離を取り振り返った。
ミカドの背中から貫く大きな馬上槍。
それを片腕で持つのは頭に黒い角が三本生えた白い髪の細い体の女性の鬼。
「くそっ、アンテナ付きは向こうに!」
「そんな! ミカドさん!」
大鬼の後ろにいたのがただの鬼だと舌打ちをしジュンセイは走り出す。
レイショウたちのもとへと駆け寄ろうとし折り返し向かってきた真正面から走ってきた大鬼にジュンセイは鉄球に変え振り回し、大きな角ごと鬼の頭を粉砕し死んだかの確認もしないまま走り去る。
後を追うジークルーンはジュンセイが倒し倒れた大鬼の背中には、中身の入っていない大きなバックパックが背負われていたのを見てジュンセイの後を追った。
動向が開ききり月明かりでオレンジ色に目を輝かす仲間だった相手にジュンセイとジークルーンは武器を向ける。
「私たちでこの鬼は倒す」
「ええ、そうですね。そうしないといけない相手です」




