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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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救いなき世界 1

 ミカドが振り返り血に濡れ震える手でハジメのいる方向を指をさす。


「……本当に、大丈夫かミカド」

「俺はいいから、ハジメちゃんのところに行ってやれよ。……お前が一人で戦うってなって怖がってたから」


 レイショウは遠くで様子を見ているハジメのもとへと向かう。

 途中でジュンセイが戦いが終わりレイショウに貸していたナノマシンの力を切ったことにより、身体能力の向上で軽かった体は元に戻ったことで重く感じるようになる。

 急なことでバランスを崩して倒れそうになりながらもレイショウは持ち直し走った。


 レイショウと入れ違いにやってきたアルケミスト二人は、倒れた昔の仲間を見下ろす。


「アトランティカ?」

「死んでるよジークルーン、胸に穴があいているのが見えない?」


 歯ぎしりするジュンセイと目を背けるジークルーンは変わり果てた仲間の姿にそれぞれ反応を示しそばに立つミカドを見る。

 その場に立つミカドは血に濡れた手を見たまま固まっていて、ジークルーンはミカドに話しかけた。


「ミカドさん……大丈夫ですか?」

「鬼なら何度かあった昨日も……でもレイショウを助けるためとはいえ、人を、殺したんだ……。向こうは殺す気なかったかもしれないのに……」


 ジュンセイはそばに落ちていた槌の制御を奪い形を変えアトランティカの顔に布をかぶせる。

 後から大きな布で体を覆うと立ち上がり立ち尽くすミカドに言う。


「自殺だよ。心臓じゃなくて動脈を切られてる、このくらいならすぐナノマシンで血を固めて傷を塞いでしまえば助かった。アトランティカはわざとやったんだよ」


 血に濡れた手を見て固まっていたミカドは話を聞いて顔を上げてジュンセイを見た。


「どうして、そんなことを?」

「さぁ、そんなことは知らないよ。アトランティカの考えは私には理解できないししたくない。とりあえずまた一人アルケミストが減ったってだけ」


「ごめん、仲間を」

「私に謝られても困る。とりあえずここを離れよう。話は聞いてやるから落ち込むのはここを出た後にして、アトランティカを殺したのだから少なからず向こうは本気を出してくる。今度こそ殺されるかもだよ」


「……ああ」

「私、あの車見てくる。使えるならあれで逃げるから」


 アトランティカを見て舌打ちをしジュンセイはミカドを背にしその場を去る。

 残ったジークルーンは手拭いを作りミカドの手に付いたアトランティカの血を拭く。


「気を落とさないでください、アトランティカは自分たちの敵として立ちはだかりました……。それに彼女は躊躇なく人を殺しています……言動に矛盾も多く本当にとらえるつもりだったのかも分からず命の危険があった、レイショウさんを助けようとした間違ったことはしていませんよ」

「……ああ」


「気を確かに持ってください、生きるために仕方なかったことです」


 ジュンセイが追っての足止めに作った杭と鉄線を取り除いて、アトランティカたちが乗ってきた車両に乗り込む。

 車はフロント部分が歪みはしているが真っすぐ走ることを確認し、ジュンセイはジークルーンたちのもとへと向かう。


「まだ動くね、これで逃げよう。燃料もそこそこあるここから離れるくらいは持ちそうだよ」

「そうですね、これ以上戦いたくはありません」


「アトランティカを道からどけて、轢いてしまう」

「わかりました、ミカドさん手伝ってもらえませんか」


 ミカドはうなずき担架を作ったジークルーンとともにアトランティカの遺体を路肩へと運ぶ。

 まだ血は流れ運んでいる最中も地面に血が滴った。


「早く乗って、またいつ追手が来るかわからないから。これ以上、残ったアルケミストを減らしたくない」


 手を合わすジークルーンとミカドを乗せ、その後にハジメを抱えたレイショウを拾い車両は外へと向かって畦道を走る。

 畑を走るわけにもいかず畦道に沿って走り続ける車両。


 皆が周囲を見回し追ってくる影がないかを警戒する中、揺れる車内ですぐにハジメは眠りにつく。

 レイショウは隣で眠るハジメの頭を撫でながらミカドに話しかけた。


「ミカド、ありがとなおかげで俺とハジメは助かった」

「ああ、みんな無事でよかったよ」


「ごめんな、俺があの人をなんとかして無力化できていれば、ミカドが手を汚す必要なんて……」

「もういいんだ、大丈夫。心配させてごめんなレイショウ」


 レイショウはミカドの爪に残る血の跡を見て表情が曇る。

 遠くに傾いた建物が見え始めすぐに畑の終わりが近づいてくると、運転しているジュンセイが後ろにいる皆に言う。


「もうすぐここを出られる。一度金網を撤去する必要があるから止まるけどジークルーンたちは外に出なくていいから。すぐに網をなくして外に出る」


 わかりましたとジークルーンが返事をしレイショウたちの頭を縦に振る。



 逃げるジュンセイたちの乗る車が通った後の畦道。

 神殿の近くに命を失ったアトランティカが村人たちの手で運ばれてくる。

 スイセイが近寄り寝かされた彼女に語り掛けた。


「アトランティカ、ごめんなさいね。あなたが時間を稼いでくれていたというのに私は間に合わなくて」


 当然返事はなくスイセイは彼女の頭を撫でる。

 スイセイの持つナノマシンがアトランティカの体を覆い、肌の露出が多かった服装から赤と黄色の彼女と同じ巫女の服装へと戻す。


「ですが、まだ間に合います。皆を幸せに、そう願ったあなたの願いを叶えますから。今一度、力を貸してくださいアトランティカ」


 まるでスイセイの言葉に返事を返すようにアトランティカは起き上がった。

 額に三本の角を生やして。


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