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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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地獄 2

 地上に上がってくると土を払い、ジュンセイはすぐに逃げ出すために歩き出す。


 ジークルーンたちの後をレイショウは柔らかい畑の真ん中でにハジメが転ばないように手をつなぎ彼女たちについていく。

 遅れて柔らかい土の上を歩いてきたミカドを見てレイショウが話しかける。


「顔が赤いけどどうした、ミカド?」

「なんでもない、女性と抱き着かれたのが初めてだったから少しびっくりしただけだから。前向いて歩け、転ぶぞ」


「ハジメや村のばあさんにもよくかわいがってもらってただろ?」

「そうじゃなくって、ああいう……もういい、ほっといてくれ」


「何だ何だ、抱き着かれただけで彼女に惚れちゃったのか? 確かに金色の目の人たちはみんな美人だけど、俺はジークルーン一筋だから」

「お前は正直でいいな……俺はそんなに頭の中がハッピーじゃないんだよ」


「ミカド……おまえ、背中に黒い手形が……ジュンセイさんの焼けた手の皮かそれ……」

「え、どこに」


 声量を押さえない会話を聞き眉間に指を置き苦笑いで歩き続けるジークルーン。


「全く、レイショウさんたちは何を言っているのでしょうね」

「ああいうもんだよ男は。娯楽が少ない世界だから賭け事や女性に積極的、でもまぁ、逆に彼らは消極的な方じゃない? 普通はジークルーンがチュウジョウの罠で落された場所のように自分の欲求を相手に押し付けるのが一般的だから」


「まぁ、自分はレイショウさんとの出会いの時にアルケミストの力を見せつけていますから、力じゃどうにもならないってことを理解したんじゃないですかね。というか、レイショウさんたちは他の村とつながりがないんですよね? 村の中で婚約者を探すんですかね?」

「他の村と人の価値と釣り合うようにお金で交換するんだ、物々交換みたいなものだよ。城塞都市で適齢期の男女の名簿作って斡旋してるよ」


「そんなこともしているんですねチュウジョウは」

「武器の扱い方、機械の直し方、花嫁修業、外で人が生きていくのに必要な技能の教育もしてる。お金かかるけど外の人間は知識に貪欲で本もよく売れてる、なにが売れてるかは聞いてないけど」


「なんだかんだ言ってチュウジョウはまともだったのですね。あれ、本って紙が必要ですよね? 一冊づつナノマシンで作っているわけでもないでしょう、どうしているんですか? どこかに製紙工場と印刷所が?」

「他の町だよ、集めてお金と交換した金属の大半を送り付ける工場街。あっちのアルケミストもイカレてなければいいけど」


「レイショウさんたちをどこかに預けるとしたら、次はそこですかね……そこはどういったところなのですか?」

「あそこは地上に戻ってきたアルケミスト以外は無人のはず、人の受け入れはしてなかったと思う。向こうも人との揉め事で心が荒んだ感じだったから」


「そうですか……」

「どこも人の身勝手さには飽き飽きとしてうんざりしてる」


 近くの畦道へと出ると改めて周りを見渡す。

 神殿とところどころに見える森、後はひたすらに畑が続いていた。


「しかし広い畑ですね、果てが見えません」

「ここは、城塞都市や他の町にも食料を卸しているから」


「城塞都市でも食料を作っていましたよね」

「あれは租借し満腹感を得るための急増品……だっけ? ここの食物を錠剤に加工してサプリメントにしている。ここのものに何が入っているかもわからないから加工してるの」


「なるほど、チュウジョウも食事はサプリメントだけで栄養が足りると言っていましたね」

「ほら、来るよ」


 言われてジークルーンが振り返ると土埃が舞い上がる場所があり、小さく車両の姿が見える。

 神殿の方から車両が向かってくるのを見てジークルーンが服の一部を、剃刀の刃が付いた鉄のワイヤーに変えて何重にも重ね畦道を塞ぐ。

 最後に地面に棒を深く突き刺し地下のナノマシンの一部と融合させる。


「ナノマシンの有刺鉄線だ、車両が踏みつけ絡まったら取り外せない」

「これで車両は追っては来れないですね、逃げましょう」


 車両は雑に作られた柵を突破しようとして突撃するがナノマシンでできた細いワイヤーと杭をなぎ倒すことも千切ることができず、車両はフロント部分を歪めて停止した。


 車両は止まり乗っていた人々が降りてくる。

 最後に赤と黄色の服を着た白い髪の女性が降りてきて、アルケミストの二人が逃げる足を止めた。


「またアルケミストか、スイセイじゃない今度は誰」


 最後に降りてきたアルケミスト一人以外は皆土仕事で汚れた服を着た農夫たち。

 赤と黄色の服を着ている白い髪の女性が人々を連れてジークルーンのもとへと歩いてくる。

 彼らは皆顔を青くして俯いており柵を畑を歩いて迂回して横一列に並ぶ。


「ハロー、ジークルーン。100年ぶりだね、調子はいかが?」


 人の壁の後ろで手を振る銀色の髪の神官。

 彼女を見てジークルーンが名前を呼ぶ。


「……あなたアトランティカ、ですよね?」

「イエス。こっちの人の血が多くなってきたからね、さすがにナノマシンで成長を調整するにも無理が出始めたね。ナノマシンの放つ周波数のパターン照合かな。っと、スイセイから話は聞いている、久しぶりジュンセイ、ジークルーン。あれ、え~っと、初対面だっけね」


「ええ、初めましてです。同じこの国の生まれではない身からして、できればゆっくり話をしたいところですけど、残念ながらそういうことができる段階は過ぎてしまっていたんですね」

「話すことね……私たちが守る、人とはどのような存在かとかかね?」


「非常に興味のある内容ですね、ですがまたの機会に」

「逃げれば鬼に追わせるよね」


「戦えます、倒せますよ」

「まぁまぁ、よく話を聞きなって」


 農夫たちの後ろに立つアトランティカはパチンと指を鳴らす。


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