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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
4/102

廃墟の地下で 4

 

 レイショウは建物に近づかないように道の真ん中を進み、ジークルーンは彼の背負ったリュックを見ながら歩く。


「危険? 気になっていたんですけどきょろきょろと何に警戒しているんですか、何かいるんですか? あなたやっぱり罪人じゃぁ……だから見つかりたくないと。……にしては建物から離れて不自然な」

「鬼だよ、奴らは一匹に見つかるとすぐ他のを集めるから。それに建物に寄りすぎると飛び掛かれた時咄嗟に対処できない」


 ジークルーンの目が疑いの眼差しから軽蔑の目に替わる。


「鬼? 突然なんです? 御伽噺ですか?」

「いいや、ジークルーンも出会えばわかるだろうけど、俺たちは鬼に怯えて生きているんだ。できれば出会いたくないけど」


「あなたの話をまるまるは信じられないのですけど、大戦は終わったのではないのですか? 自分は今の時代に詳しくありませんもっと詳細を説明してください」

「大戦後もいろいろあったんだよ、いろいろあって~……その結果いろいろとだな、……それは村に帰って落ち着けるところでゆっくり話そう。……俺もよくわからないから村長のおっさんに聞いてくれ」


「それと廃墟を覆うあの大きな植物はなんですか?」

「わからない、あれもずっと前から生えている。今でも少しずつ成長していて廃墟を覆い隠していることしかわからない。大人たちもあれがなんだか知らないし、昔の戦いのときのじゃないのか?」


「見覚えがありませんね」

「とにかく、あれは昔からあってよくわかってない」


 その答えを聞いてジークルーンは小さくため息をつく。

 必要な情報を得られないことから、彼女の中には礼r相に対する不信感だけが募っていった。


「つまり、あなたは今の時代に生きていて何も知らないんですね?」

「悪い……でも。そんなことより、さっきは暗くてよく見えなかったけど。ジークルーンの目はすごく綺麗だな、金色でさっき見ててキラキラしててさ」


「突然ですね。話の切り替え方が下手なんですか? この目は自分たちのようなアルケミスト全員が持っている目で、別に自分が特別ってわけでもないですけどね」

「そんな綺麗な色の目を俺は見るのは初めてだ」


「まぁ、こんな状態じゃ自分以外のアルケミストを見つけるのも大変でしょうしね」

「それでそのアルケミストってなんだ? 当たり前みたいに使っているけどさっぱりわからないんだ」


「説明したでしょう、一部の金属を自由に扱える人型の兵器の総称です。あなた、自分の質問には答えられないのに質問してくるんですね。たとえ世界が変わってしまっていても、自分は軍人です。アルケミストの情報は公開されている以外のことは自分の口からは言えません。どこの誰ともわからないレイショウさんに機密情報でお答えできません」

「そうなのか、残念だな」


「ま、いいでしょう大戦中は子供でも知っていることでしたし知ってもらっていた方が、あなたが変な気を起こそうとする気も失せることでしょう。アルケミストはさっき見せたように金属を別の形、別の素材に変える力を持っています」

「鉄の箱から刃物とかその服作ったやつのことだよな」


「そうです、無機物で固形物、特に金属類であればある程度のもの作れます。このシャツも細い金属繊維を編み込んだものですし。あ、そうですレイショウ手を出してください」

「え、こうか? 何だ突然」


 ジークルーンは伸ばしたレイショウの手を掴むと彼女の着る布地の多いシャツの袖一部を変形させて輪を作り腕に巻き付ける。

 彼女に手を掴まれ緊張するレイショウ。

 布はあっという間に細工の入った金属に替わりジークルーンは手をはなす。


「できました、もういいですよ。急いでいるみたいですけど歩みを止めてしまってすみません」

「なんだこれ、ブレスレット? どうして急に?」


 腕に付けられた装飾品をさすったりよく見たりしながらもレイショウは村を目指して歩く。


「あなたが仮に悪人だとしたらこれで自分はあなたを捕まえられる、自分に害をなそうとしてもすぐに止められますから」

「俺、そこまで信用されてないのか……」


「むしろ信用される要素がないじゃないですか、今の世界についてもちっとも説明はしてくれないし、あんな暗い場所をうろついていたわけですし。そもそもであって間もない初対面の人間を頼りにするならまだしも、信用するって頭いかれてます。レイショウは初対面の自分を見て信用に値すると思っているんですか?」

「たとえ悪人だったとしてもジークルーンならかわいいから、騙されても許せそうだ」


「……本気で言ってます? 本気で言っているならかなり引きます」

「いや……和めばいいなと」


「自分はそういう冗談というものを良く知りませんので、どう返したらいいかもわかりません」

「そうか、残念だ」


 近くで物が崩れる物音が聞こえ、その音に反応したレイショウはジークルーンの手を引いて建物の陰に隠れている。

 建物の中を確認し入口の影から外をうかがう。


「ジークルーン隠れて」

「何ですか」


 レイショウは瓦礫の影から様子を伺い、ジークルーンは装飾品から形を変え鏡を作って周囲を見ていると音の聞こえた方から複数の人影が見えた。

 人影を見てレイショウは建物の中へと逃げ込もうとしジークルーンにも逃げるよう促す。


「奴らだ、ジークルーン隠れるぞ。見つかる前にもっと奥へ逃げ込もう」

「ちょうどいいです、自分はあの人らに事情を説明して保護してもらいます。レイショウさんと一緒にいるよりは今の世界に対する情報が集まることでしょう」


「駄目だって危ないから、奴らは鬼だ見つからないように身を隠して。見た目は人に似ているけどあいつらはもう人じゃない、話し合おうとしても言葉は通じないんだ」

「本当にあなたは何を言っているのかさっぱりです、すべてがあやふやで詳しい説明もありませんし自分の目で見たほうが早いです。仮にもしあなたの言う通りで危険だとしても自分は対処できます」


 出ていこうとするジークルーンの腕を掴みレイショウは首を振る。

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