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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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地獄 1

 レイショウは昨日受けた鬼の傷の手当てに使われたナノマシンの影響で身体が幾分か強化されている。

そのおかげでハジメを抱えながらでもジークルーンたちと並んで走れていたが、ミカドは次第に足が遅くなり距離を話されていく。


 ジュンセイが殿となるためミカドと走る速度を合わすと神官の姿をした鬼が追ってこないかを振り返りながら逃げ続けるミカドが尋ねる。


「どうしてあの鬼の神官を殺さないんだ、昨日俺らを助けに来てくれたときみたいにアンタらなら一瞬で倒せるだろ?」

「うっさいな、倒しても切りがないから。多分スイセイはやろうとすればここにいるすべての人間を鬼にできる」


「まじかよ」

「一気にこの町の人間を鬼にしてこないことを考えると、鬼に変えてしまうと戻すことはできないから最小限でなんとかしようとしているのかも、知らないけど。何にしろ本気を出される前にここを逃げ出さないといけない」


 バチリと音を立ててジュンセイが新たに壁に穴を開けるとジークルーンとレイショウたちを穴の向こう側へと移動させた。

 ジークルーンとジュンセイはお互い顔を見合わせ通り抜けた先の通路を見る。


「来た時と反対側に逃げてるのだとしたら、戻らないと町の中央に出てしまう。この神殿も大きい割に作りが道と部屋だけで簡素だ、機械の類も見えない」

「このまま奥へと逃げたらどこへと続いているのでしょう」


 穴を通り抜けようとしたミカドはナノマシンの制御を奪うために黒く焼けたジュンセイの腕が見えて目を丸くした。


「なぁ、ジュンセイさん。その腕。大丈夫なのか?」

「関係ない、余計なことに気が付くな」


 ミカドに指摘されジュンセイは手のひらを白い手袋で覆い腕を袖の中に隠す。

 ジークルーンが他人と話しているジュンセイの姿を見て興味を持っていると、彼女が不審な行動をしており彼女は二人が壁に開けた穴をくぐり抜けてくると話しかけた。


「どうかしました?」

「いや、ジュンセイさんがすごい火傷を……」


「怪我をしたんですかジュンセイ?」


 ジュンセイは腕を見せるのを渋るがジークルーンがその手を取り袖をめくった。

 そして手袋をゆっくりと脱がし一部が黒く炭化した手のひらを見てジークルーンは驚き、彼女の手袋を脱がしていた手が止まる。


「何ですか、この腕。いつ、どこで!?」


 焼けた黒い皮膚の間に銀色の輝きがあり、焼け爛れた傷口をナノマシンが覆っているがそれでも痛みが完全に消えるわけではなくジークルーンに触れられジュンセイは痛がる。


「制御を奪う時に抵抗で放電されるんだよ、少ない量ならどうってことないけど量が多ければこれくらいにもなる。ナノマシンで三日もあれば治るから」


 ジークルーンに心配されジュンセイはミカドを睨みつけた。


「そういう問題ではありません、ここまでして……痛いでしょう」

「私のせいで、こいつらが鬼にされる。それを避けられれば私は構わない、ジークルーンに嫌われたくない。体がどうなっても義手を作るだけだし、腕がダメになっても次の子を産んで育て記憶を映すだけ」


「だからってこんな無茶を」

「今ゆっくり話ている時間はないでしょ、早く逃げるよジークルーン」


「でもどこへ向かうんです、どこへ逃げても出口なんて」

「今どこに居るかわからないけど、とりあえず壁に穴を開けていけばどこかしらの外に付くでしょ」


「それより、上に向かいませんか? 屋根に出てしまえば外も見渡せますし、逃げる方向も決まると思うんです」

「そっか、上か。外に出ることしか考えてなかった。城塞都市は穴を開けるとチュウジョウに怒られるから全く考えてなかった……」


 鎖を伸ばし通路の高い天井のあった装飾へと付き刺すとジュンセイは天井へと昇っていく。

 そして手で天井に触れ一瞬の痛みに声は上げず顔を歪めるジュンセイ、その身を犠牲にする行動を知ってしまったジークルーンたちはいたたまれない気持ちになる。

 天井を変形させると大量の土砂が降り注いできた。


「土!」


 慌ててジークルーンはレイショウたちを引き寄せ土砂の下から逃げる。


「ジュンセイ、無事ですか?」

「ペッペッ、なんで、土が上から……」


 土を被ったジュンセイは頭に付いた土を振り払い、そのまま鎖を服に戻しつつ空の見える建物の上に出た。


 そこは畑の真ん中で、少し離れた場所に神殿の入口が見える。


「ここは地下!? いつから?」


 ジュンセイの驚く声と大量の土砂と一緒に落ちてきた作物を見てレイショウたちも外の様子を理解した。


「俺たちは畑の下にいるのか階段を下りた記憶はなかったよ?」

「いくら逃げても外には出られないわけだ、というか地下にこんな大きな迷路が広がっていたのか」


 ハジメとレイショウは広がる通路を見てもう一度天井を見る。

 上の様子を見ていたジュンセイが鎖を伸ばして降りてきてジークルーンのもとへとやってきた。


「外には今、誰もいない。連れ出すなら今だよ。操作を奪ったナノマシンで上に出っ張りを作ってきた。それにロープをひっかけて」

「ありがとうございます。すみません、火傷のことを知っているのにさらに傷つけることをさせてしまって」


「いいよ、早く逃げよう。お礼はこの三人を逃がしてから」

「わかりました」


 奥からやってくる神官を見つけるとジークルーンたちは足早にレイショウたちに近寄っていく。


「これから自分がハジメさんとレイショウさんを抱えて上にあげます」

「頼んだジークルーン」

「おねがいします」


 鎖を天井の穴の外へと伸ばしたジークルーンが小物と上着を使ってハーネスを作りレイショウとハジメを抱えて上へと上がった。


 三人が上に上がっていくのを見届け、ジュンセイがミカドのそばに寄る。


「ほらこっち来て、上に引き上げるから」

「助かる、この高さは自力じゃ登れないから……」


「余計なことに気が付くからジークルーンを心配させてしまったじゃない」

「でも、怪我してたなら気になるだろ……俺らを助けるためにならなおさら」


「ジークルーンのためだから。ほら動かないで神官がこっちへ向かってきてる、ここまで来て死にたくないでしょ。上にあげるから暴れると落ちるよ」

「待ってくれ、こんな方法で」


 ハーネスも固定具も作るのを面倒くさがりジュンセイはミカドの懐に潜り込むと体に抱き着き鎖を巻きあげ上に上がっていく。


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