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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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楽園 3

 スイセイを先頭にレイショウたちを分かれたジークルーンたちは、神殿の奥へと進んでいく。

 案内された先の鉄の扉を開けると鮮やかな緑色の空間が待っていた。


「ここが庭園です。この百年、行き場をなくしここを訪れた様々な方々が持ち寄ってくれたハーブが植えられています。今では一〇〇種を超えていますが、最初は、最初は片手で数えるほどだったんですよ!」

「ここは城塞都市とはまるで違いますね、広くて余裕のある作りをしてる感じがします、あちらは工場が立ち並んでいて、ここで見たような緑に囲まれた場所ではありませんでしたから」


「ええ、そうです。多くの人が鬼に怯え不安な不備を過ごしています。ですのでここでは心傷ついた皆様を癒すための場所、我々は多くの人の心の救済をすべく活動しています」

「素敵ですね、ここには何人ほどが住んでいるんですか?」


 植えられているハーブの種類を説明しながらスイセイがジークルーンを連れ庭園を案内する。

 ジュンセイはスイセイから離れ庭園に植えられたハーブを見て回りジークルーンは庭園の中央にあるテーブル席へと案内される。


「さぁさぁ、座ってください。もうすぐハーブティーと焼きたてのクッキーが届きますから」

「ここにいるのはスイセイだけなのですか? 他のアルケミストはいないのですか?」


「いますよ、コウセイ、アイセ、スバル、それにメテオライトとアトランティカのエレオノーラとアレキサンドラ。ですが今の時間は皆、畑に出ていると思います。人とともに働き、長く生きている私たちが知識を授けるのが今の我々にできることですから」

「他の国のアルケミストもいるのですね?」


「何を驚いているのです、あなただって他の国で生まれたアルケミストではありませんかジークルーン? 彼女は自分の国がおかしくなっているのに耐え切れず、わずかな国民を連れ新天地を求め彷徨っていたのです。そこを私たちが手を差し伸べ受け入れた、今までの神を捨て私たちが導く存在となることにはなかなか納得してもらえませんでしたけど、最後には分かり合えました、髪は人にこそ必要な存在で我々アルケミストには不要だと」

「自分たちが神だと?」


「そんなことは言っていません。あくまで、暮らしを良くするための方便としてです。人というものは心の支えがあって一人で立ち上がれるのです」

「それでも人の信じている信仰心を悪用している気がして自分は、その判断がいいとは思いません」


「この話はここまでにしましょう、ちょうど人が来ましたから。あなたたちの話を聞かせてくださいな、私とても気になるのです」


 スイセイがそう言い中庭にあるいくつかも扉の一つを指さすと、その鉄の扉が開き神官とお茶とお菓子の乗った台車がやってきた。



 司教の前に三人は横一列に並べられたまま挨拶からこの土地の100年の歴史さいごに儀式の祝詞などを聞き、耳と足が疲れた三人に一人ずつ水の入ったコップを渡される。

 司教と神官たちに囲まれ司教の声以外に物音ひとつしない張り詰めた空気の部屋で、精神の消耗も大きく三人はコップを受け取り。


「それでは、三人に神薬と聖水を」


 神官から差し出される白く小さな錠剤。


「これを飲んでください」

「これは?」


「神薬と呼ばれるありがたいものです。普通の薬だと思ってください、集団で暮らす以上病気は持ち込めませんからこれで治すのです」

「なるほど?」


「これを飲んだら儀式は終わりです、お疲れ様でした。この後はここでの生活についての軽い説明と食事を用意しております」


 レイショウは屈んで隣に立つハジメを見る。


「長時間歩くのは慣れてるが、流石に立ちっぱなしは辛いな。さて、飲んじまおうかハジメ」


 レイショウとハジメは水と錠剤を受け取るとすぐに口の中へと放り込む。

 そして水を飲もうとした瞬間二人は口の中で激痛を感じた。


「いてっ」「痛い!」


 二人して口の中の異物を手のひらに吐き出す。

 ミカドは受け取り説明を聞いている最中だったため錠剤はまだ呑んでおらず手のひらの上にあり、吐き出すところを見た司教が一瞬で顔を真っ赤にして怒鳴る。


「神薬を吐き出すとは何事か!」


 空間が震え静まりその声は返った部屋の中で何度も反響した。

 神官たちは激高する司教を見て顔を青ざめさせオロオロと右往左往し、ハジメは怒鳴られた拍子にコップを落とし涙目でレイショウの後ろに隠れ腕を掴む。


「悪い……なんか口の中でバチッとなって」

「神薬を呑め! これは巫女様から預かった大切な薬なのだぞ! この、恩知らずがぁ! そいつらを取り押さえろ!」


 捲し立てるような司教の言葉に従い神官たちが囲むように近づいてくる。

 レイショウはハジメを抱えて走り出しミカドも戸惑いながらも追いかけ部屋の外へと出た。

 後を追ってくる神官たち、ミカドが錠剤を握りコップの水をこぼしながら走りレイショウに尋ねる。


「何したんだよレイショウ!」

「なんか口の中でバチッと来たんだ、すごい痛む。まだヒリヒリしてる」


 白い建物内を走り回るレイショウたち。


 普段から廃墟を歩き回り鬼から逃げる足腰を持つレイショウたち二人の逃げ足は速い。

 だが、神官たちも赤と黄色の歩きずらそうな服を着ている割には足が速く引き離せなかった。

 ハジメは司教に怒鳴られたショックで怯えてしまい無言になってレイショウに担がれる。


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