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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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楽園 1

 

 トラックの荷台に乗ったレイショウたちは遠ざかる城塞都市を眺め、ジークルーンはトラックを運転し地図を片手に目的地に向かう。

 幸い鬼との遭遇もなく安全な旅路を送っていた。


「地図だとガーデンはこの先ですかね?」

「そうみたい、しばらく来ないうちに道も様変わりしたね。建物もだいぶ崩れてきた、私はチュウジョウに連れられて移動したから道なんて覚えてないよ」


 印刷は色薄れ変色し淵がボロボロの紙の地図を見ながら、車両が鬼と遭遇しないように警戒し静かに廃墟を進む。


「ついて来てくれてありがとうございます、ジュンセイ。でもチュウジョウに何も言わずに出てきてしまっていいのですか?」

「言ったでしょ天翔艦はチュウジョウに渡しちゃったし、私があの町で何かしているわけでもないから、いてもいなくても一緒」


「そうでしょうけど、一言でも言ってきますと報告してからでもよかったんですか?」

「町中にある監視カメラで見てるでしょ、いちいち私が何かしなくても向こうは知ってるよ。それに私がいない方が要塞の中は静かだし、私することないんだぞ」


「まぁ、いきなり斬りかかってくるんですものね。自分に襲って来たのが特別だったのですか? それとも日ごろから?」

「チュウジョウは私が何かする前にナノマシンの制御奪って手足を拘束する」


「自分も持ってきたナノマシンが多ければ、襲って来たあなたを拘束くらいはできたかもしれませんね」

「体は何度となく変わってもナノマシンで体の強化は怠っていなかったし、忘れてるみたいだけどチュウジョウと同じで私も他人のナノマシンの制御を奪えるよ。自分より前に運られたアルケミストのナノマシンだけだけど」


「そうでした……自分にもその方法教えてもらえませんかね?」

「別にいいけど、鬼にやられた人を無料で治療して回らないでよ? 私もチュウジョウに怒られるから。助けられる時間は限られているけど、金属を集めさせて抗生物質という名のナノマシンを売って稼いでいるんだから」


「そういえばナノマシンは自分たちの手を離れると動かなくなりますよね? どうなっているんですか?」

「私らが触れていなくても半月くらいはスリープ状態でお互いているよ。普通の人に鬼化を止めるために抗生物質としてアルケミスト以外の人間の体内に取り込まれても、ナノマシンの活動が停止したら老廃物とともに排泄される」


 廃墟を進んでいると突然開けた場所が見えてくる。

 そこには木が一定の間隔で生えており森が広がっていた。

 広がる森を見てジークルーンはトラックを停車させて地形と地図を見比べ、現在自分たちがいる位置を確かめる。


「これはなんでしょう、地図はこんな森はなかったはず」

「見えたよ、あれがガーデン。昔よりだいぶ広がってるね。これは果樹園かな」


 ジュンセイに話を聞いてジークルーンは驚く。


「ここが? 壁がないんですか?」

「ないよ、理由もすぐにわかるかもね」


 車両は見えてきた森へと近寄ると、森を囲うように金網があり車両が入ってこれないように大きなコンクリートのブロックが置かれていた。

 トラックはその前に停車し皆が降りて調べる。


 車両を止めたコンクリートブロックのあたりでミカドは空の下を駆け回るハジメと遊んでおり、レイショウはジークルーンたちのところにやってきて尋ねた。


「ジークルーン、ここがガーデンって場所なのか?」

「らしいです、少し待っていてください。どこからかこの中に入る方法を探しますので」


 金網には蔦が絡んでおり小さな花が咲いていて、それを見てジークルーンは金網の続く先をみる。


「どうやら電流とか走ってはいないみたいですね、ただの金網のようです。入口はどこでしょう?」

「ジークルーン、向こうに誰かいる」


 金網の前にいるジークルーンたちに気が付き、森の中を籠を背負って歩いている人たちが数名やってきた。


 彼らは皆一応に泥に汚れた服や体、そして明るい表情に包まれていて、たくましい筋肉のついた村人たちはよそ者であるジークルーンたちに話しかける。


「ようこそ、どこかへ向かっている途中ですか、それともここエデンガーデンへ御用ですか?」

「ええ、自分ではなく後ろの三人の村が昨日鬼に襲われまして行くところがないんです。それでここの話を聞きまして」


「そうでしたか、それはそれは。昨日の夜はさぞ悲しく心細かったでしょう、ですがもう大丈夫ですよ。今確認を取ります……」


 そういうとこめかみのあたりに指をあて村人は目を瞑り、数秒たって目を開け手を降ろす。


「いま大司教さまの許可が出ました、中へどうぞ」


 そういうと村人たちは道を塞ぐ金網を取り外し外へと出てきて、村人数人が力を合わせてコンクリートの塊をどかし始める。

 ミカドとハジメは重たい塊をずらして動かすその様子を、驚きながら見ていた。


「さぁ乗り物ごとこちらへ、森の真ん中は車両が通れる道があります。それでこのまままっすぐ向かってください、神殿が見えますその中へと向かってください」

「わかりました、ありがとうございます」


 村人たちに手振られトラックに乗り込むと森の間を抜けて奥へと進む。

 少し走るとトラックは森を抜けて畑の広がる畦道へと出る。


「畑です、すごく広い」

「見えてきた、あれが神殿だ。ここの景色は昔のままか、向こうがこっちまで来てくれるから中心部まではいかなくて済みそう」


「あれが中心ではないんですね?」

「違うよ、あれなんかよりもっと大きな建物が立っている。しかもここから遠い」


 畑で農具を振って地面を耕し働く人々は畦道を走るトラックを、少しの間珍しそうに見るがすぐに仕事を思い出し自分の仕事へと戻っていく。


「そういえば車を見ませんね? 人々も農具を使っているみたいですし、トラクターとかもない?」

「ここは人が多いから、暇しないように皆に仕事を与えているんだと思うよ。便利は人を堕落させるから」


「そうですか、確かに先ほどの招いてくれた皆さんもたくましい体つきでしたね」

「そうだね。畑仕事であそこまで筋肉が付くとは思えない筋肉だよね」


 景色に飽き眠たくなったのかそっ気のない返事をするジュンセイ。

 走行している間にトラックは建物の前へと到着する。

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