流れ行くもの 6
レイショウたちの向かう先を決め終わり、席を立つジークルーン。
「とりあえず、追い出されてしまう前に移動しましょうか。その前にチュウジョウに寝る場所と朝食のお礼と出発のあいさつしてきますね、レイショウさんたちはここで待っていてもらえますか」
「ああ、わかった。ここで待ってればいいんだな」
座って待つレイショウたちを置いて部屋を後にするジークルーン。
食堂に残されたレイショウたちは彼女の帰りを待つ間に、昨日の夜のことを思い出す。
高い食堂の天井を見てミカドはため息をつく。
「レイショウ、本当に俺らしかいないのか……」
「夢じゃない、村に鬼が責めてきたんだよミカド。村は全滅した」
「本当に今まで、鬼がバリケードに来たことはあってもそんなことなかったじゃないか……何だったんだよ、あの大きな鬼なんて見たことなかったじゃないか」
「でも実際に起きたことだ……夢だと思いたいよ、あのでかかった奴は本当に……。でも、のこった俺たちは生きていかないといけない」
暗い顔をするレイショウたちのところへジュースの入ったコップを持ってハジメが寄ってくる。
「これおいしい」
「ああ、それはジュースっていうんだ。果物を絞った飲み物、もっと種類がある」
ハジメの首にあった銀色の瘡蓋を指先で撫で、レイショウは彼女を持ち上げ膝の上に乗せた。
「昨日奴らに襲われたとき怖くなかったか?」
「怖かった。みんなおかしくなっていっててすごく怖かった。ねぇ、村のみんな鬼になっちゃったの?」
「たぶんな。助けてあげたかったけどどうにもできなかった。村長の家まで一緒に逃げてきたみんなは残念だった」
「でもお兄ちゃんが無事だったからよかった。長老のところのおばあちゃんがわたしを守ってくれたの」
「ああ、俺もハジメが無事でよかったよ。本当に……みんなは残念だけど。……そうだ、夜はちゃんと寝れたか?」
「うん、ジークルーンさんと一緒に寝たよ、手をつないでくれた?」
「羨ましい……じゃなくてハジメがちゃんと眠れててよかった」
「お兄ちゃん石鹸の匂いがする」
「部屋にあったシャワー借りたから。ハジメも髪がさらさらじゃないか、ただでさえかわいいのにさらにかわいくなったな」
「そうなの、うれしい」
ジークルーンの後を追わずにレイショウたち兄妹のやり取りを見ていたジュンセイが尋ねる。
「知り合いがみんな死んだ割には、反応がどことなく軽いよね? 思ったより悲しくないの?」
「悲しいけど、俺たちの両親も鬼になって死んだからですかね。親切にしてくれた人たちが死んでしまったのは胸が苦しくなるほど悲しいですけど、鬼にやられたのなら仕方がないのかなって。むしろ、あの理不尽な数の鬼の数にいら立ちを感じてました」
「そう、鬼は外にはうようよいるからね。たまたま纏まって行動していることもあるでしょう。村の人間はそういうこともあるって言っていなかった?」
「でも、でもあの数はない! 見たこともない大きな鬼がいて、それも一匹じゃないし! 普段逃げる俺らも止む追えず武器持って戦って、村のみんなを守ろうとしたのに」
「鬼が憎い?」
「辺り前だろ、あんなものさえいなければ。俺らは両親と暮らしていられたかもしれないのに! ……すみません、大声になってしまって」
ハジメが驚いて硬直していることに気が付きレイショウは我に返りジュンセイに謝る。
食堂へと戻ってきたジークルーンが開口一番、レイショウへと向かって心配そうに尋ねた。
「廊下まで大きな声が聞こえてきましたけど、どうかしましたかレイショウさん? 何かトラブルでも?」
廊下まで聞こえていると聞いてレイショウが恥ずかしさから顔を赤らめて答えはじめをギュッと抱きしめる。
「いや、なんでもないんだ。ちょっと、あれで……ここの人が五月蠅いって怒ってたりするのか?」
「この建物は広い割に人が少ないですからそんなことはないと思いますよ。ただ自分が驚いただけです」
首をかしげながらジークルーンは食堂にいた皆を見回し話を始める。
「えッとですね、チュウジョウから売りに出されたトラックをいただきました。ただの車両で武双はありませんけど自分がいますし鬼が出ても何とかなるでしょう。動きますしガーデンまでの移動に使えると思います」
「乗り物か、長い距離を歩かずに済むんだな……ほんと何度もありがとうなジークルーン。ジークルーンが居なかったら今頃、村は全滅して俺は一人ぼっちになるところだった。何度もジークルーンを頼るのは悪いと思うけど、今回もお願いするよ」
「まったくです、自分はレイショウさんへの恩は返したはずなのに働きすぎな気がしてなりません」
「助かるよ、俺は何も返せはしないけど」
「自分は見返りを求めてはいません。自分はただ人を救いたいんですですからレイショウさんたちを見捨てませんよ。自分がちゃんと三人をガーデンに送り届けますから」
「よろしく頼むよジークルーン」
レイショウが頭を下げミカドも頭を下げた。
その日のうちに皆の乗ったトラックは城塞都市を出ていく。
廃墟を走りながら遠ざかっていく城塞都市を見る。
「おうちいっぱいあった」
「城塞都市はいろんなお店もあるんだ。一緒に見て回りたいけどそんな時間なかったから。もしまた街に行く機会があったら一緒に見て回ろうな」
「べつにいいよ、今日これから遠くにお出かけするんでしょ? お兄ちゃんと一緒に入れて嬉しい」
「これから、暮らしていく新しい場所を探しいいくんだ」
「新しいおうち?」
「ああ、もしかしたら城塞都市みたいな安全な場所かもしれない」
「もう誰もいなくならない?」
「ああ、そうだといいな」




