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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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流れ行くもの 5

 夜が明け次の日、目が覚めると迎えに来た使用人によって食堂へと案内される。

 助けられてからずっと気を失っていたハジメも一晩立って目を覚ましレイショウたちが来るまでジークルーンの隣に座っていた。


「ハジメ、よかった目が覚めたんだな」

「お兄ちゃん!」


「体、どこか痛くないか? ここにきて咳は出ていないか?」

「大丈夫だよ、息も苦しくないし体が軽いくらい。すごくげんき」


 レイショウを見てハジメは席から立ち上がり走り出す。

 近くに座っていたジュンセイがレイショウのもとへと歩いていくハジメを捕まえ小さな頭を強く撫でる。


「この子の肺炎は直したよ。こんな小さい体でだいぶ弱ってたよ。あんな場所で汚い空気吸わされて可哀そうに、あのまま生活していたら肺の機能が弱り切って死んでいたよ。今の状態を直したけどまた空気の悪いところへと戻れば再発する長生きできないよ。長生きさせたいのならちゃんとした場所で暮らすこと」

「鬼のいる外にはそうそう出せなかったんだ、本当はもっと空気のいい場所に居させてあげるべきだったんだけど鬼がいるから」


「わかってる、知ってるよ外の様子は。私が何年生きてると思ってるのさ、面倒くさい、私に話しかけないで。あなた私の知り合いじゃないでしょう」

「え? え?」


 ハジメの頭を撫でるのに飽きたジュンセイは席に座りなおして朝食を待つ。

 皆がそろったところでパンを主食とした食事が運ばれてくる。


 長机に並べられていく食事を見て目を輝かせるハジメ、食べきれない量の食べ物に驚くミカド。


「朝ごはんですね、チュウジョウはこないみたいですし自分たちだけでいただきましょうか」

「これは食べていいのか?」


「ええ、そのためにチュウジョウが用意してくれたんでしょう。食べないと食事がもったいないですし」

「そうなのか、なら食べよう」


 用意された食事に飛びつくレイショウたちを見ながらゆっくりと朝食を食べるジークルーンとジュンセイ。


「さて、これからですけどここに長居できないと昨日チュウジョウに言われましたね。レイショウさん、どこか行く当てはありますか?」

「いいや、他の村とのかかわりもないし。本当に行くところがない……俺たち親はいなくても、村で親戚とか寄り添って暮らしていたから」


 レイショウとミカドは眉間にしわを寄せて考えるが、思い当たるあてはなく二人そろって首を振る。


「そうですか……困りましたね。世界に疎い自分は全くどうすることもできませんし、ジュンセイは何かありませんか?」

「ならここから少し遠いけど、ガーデンに行けば?」


 食後のジュースを飲むジュンセイはお代わりを求めながら答えた。


「ガーデン? ジュンセイ、詳しい説明をお願いします」

「エデンガーデン。ここ以外にあるアルケミストの作った町で、少し厳しい規則があるけど難民を受け入れてる。他の村人が進んでそこに行かない理由から少し覚悟がいるけど」


「特にどんなことですか?」

「完全縦社会、時間に縛られ自由時間はほぼない。部屋は寝る場所に必要な最低限なスペースだけ、日中は外での労働……あとは忘れた、チュウジョウのお供で何回か話し合いについていっただけだから」


「ところでそこを管理しているのはどなたですか?」

「私がチュウジョウと行ったときはスイセイだったけど、昔の話だし変わっているかも」


「天翔戦艦のスイセイですか、自分がこの国に来た時には既に軌道上に上がっていて面識ないんですよね。ジュンセイは仲が良かったりはしませんか?」


「残念ながら、私は天翔戦艦のアルケミストは誰一人として親しい人はいないよ、お互いナノマシンの発する電波で誰が誰だかの確認は取れるだろうけど」

「そうですか」


 ジュンセイの話を聞いてジークルーンは悩んでいるレイショウに尋ねる。


「……ひとまず、そこ以外今話行く当てもありませんし行ってみますか? 聞いた感じ人の受け入れはしてくれそうですけど……決めるのレイショウさんです」

「そうだな、行く当てもないし……行ってみてみないとわからないし」


「ガーデンという場所、レイショウさんは知っていましたか?」

「いいや、初耳だ村長からも村の誰からも聞いたことはない。俺らはこの城塞都市以外いくつか鉄くずを取り合う近くの村の場所くらいしか」


「そういえば、昨日自分たちが助けた人たちの村に行きませんか? 力になってくれるかもしれません」

「んー……、よそ者は歓迎されないからなぁ。もし村で暮らしていいといわれても暮らしていきずらいって聞いてる」


「死なないよりはいい気がしますが、ハジメさんのことを考えると少し厳しくてもガーデンという場所に行った方がいいのかもしれません」

「俺もそう思ってはいた、ところでこの城塞都市を出たら俺らは歩きでそこを目指さないといけないのか? トラックは村の前に置いてきたままだったはず」


「車両を借りられないかチュウジョウに聞いてみます。昨日のこともありましたし難しいかもですけど」

「お願いするよジークルーン。奴らに怯えながら荷物を持って移動していたら何日かかるか……あ、食料とか買いそろえていかないとだめか……金が足りるかなぁ」


 難しい話についていけずレイショウやジークルーンを見ながら静かにジュースを飲んでいたハジメが尋ねた。


「ねぇねぇ、ジークルーンさんも一緒に来るの?」

「自分は、皆さんを送り届けたらそのまま世界を見て回ります。スイセイ……、自分と同じアルケミストが管理しているのなら大丈夫だと思うんですけど」


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