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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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流れ行くもの 3

 大鬼を押さえつけるだけで身動きの取れないジークルーンが尋ねる。


「二人がかりで止まりません、このままでは兵士のところへと行ってしまいます。相手の体を鎖で固定できませんか?」


 ナノマシンの力で筋力を増しても女性二人の体重では地面に鎌のような足の爪を地面に喰い込ませ進む巨体は抑えきれず、鬼はゆっくりと歩を進め彼女たちは少しずつ後ろへとおされていた。


「老朽化した天井や壁が崩れていいのならできるけど、私らも生き埋めになるよ」


 鋭利な爪による攻撃を防ぐため二人は大鬼の腕に、自分たちが来ている服のナノマシンを変化させ爪から手のひらを覆うように巻き付ける。


「やめましょう」

「それがいい」


 両腕を押さえつけられ大鬼は首を振り角や並んだ釘のような歯をジークルーンたちに向けるが、長い角をよけジュンセイが口に服の一部を変化させた猿轡を大鬼に噛ませる。

 ジュンセイが服の袖を伸ばして刃物を作り出し腕を貫くがすぐに戻す。


「うぅ、一本角は体内のナノマシンの量が多いな……すぐに筋肉や骨を強化されて腕を切り落とせない」

「バラバラにしようとする発想はありませんでした」


「体内にあるナノマシンの蝋には限りがあるから銃なら体にまんべんなくダメージを与えて強化でカバーできないようにするのに」

「武器を構えている兵士に任せて自分たちは飛びのくというのは? 自分らは盾を作って身を守ればいいわけですし」


「でもいいけど倒し切る前にたぶん兵士のもとにたどり着いて最悪被害が出る、姿勢を低くして頭や肩にナノマシンを集中させれば盾として機能するから……」


 ジュンセイがジークルーンに説明していると聞きなれた男性の声が聞こえ、話しの途中で口を閉じる。


「ジークルーン!」


 名前を呼ばれ大鬼の暴れ振り回す角をよけながら振り返ればレイショウの姿。

 気を取られた一瞬で大鬼は腕を振り回しジークルーンを振りほどき、空いた腕でジュンセイを殴り振りほどく。


「しまった!」


 ジュンセイは鎖を大鬼に巻き付け引っ張り、ジークルーンもそれを真似て鎖を作り巨体へと投げた。

 振りほどかれないよう大鬼の腕に巻き付けた自分のナノマシンと伸ばした鎖を同化させ一つにする。


「すみませんジュンセイ」


 殴られたジュンセイは鼻から血を流しながら声を上げたレイショウを見た。


「いやいい、それより彼こっちに来てる。せっかく痛い思いして私らが鬼の後ろに来たから射撃指示出そうと思ったのに」


 レイショウは通路の隅に落ちていた鉄パイプを拾い向かってきていて、鎖を引くジュンセイが戻るように言う。


「下がれ村人、これから鬼を撃たせるから! 前に出てくると邪魔なの」


 しかし、レイショウはすでに大鬼の前にいて斧を振り下ろす。

 大鬼はジークルーンたちを振り払おうと暴れながら、振り下ろされた斧の先を太く長い角で受け止める。


「くそ弾かれた! 村を襲ったのより動きが早い!?」


 見かねたジュンセイが残った布地で大きな斧を創ってレイショウに渡す。


「もういい、これを使いなさい!」


 レイショウの持つ小さな手斧ではなく白く長い柄に大きな刃が付いた鉞。

 斧を受け取るとレイショウは再び斧を振り上げその頭に叩き込む。


「これで!」


 先ほどと同じように大鬼は角で攻撃を弾こうとするが、手斧とは違って受け取った鉞には先ほど以上の重さがある。

重たい一撃を受け角で弾ききれずに鉞の刃が頭に刺さった。

 鉞の刃が頭に深く沈み込むと暴れていたその動きを止め、大鬼は力を失っていき膝をつきゆっくりと倒れていく。


「倒した!」

「まったく、危険を冒すことなく倒せたのに余計なことを」


 ジュンセイはレイショウを睨みつけ大鬼が動き出さないことを確認すると頭に刺さった鉞の回収をする。


「すみません……気が付いたら前に出てて」

「あんたを助けに来たのに全部無駄になるところだった」

「あの、助けに行きたかったのはジュンセイではなく自分ですよね?」


 ジュンセイに詰め寄られレイショウは目を合わせないようにそっぽを向いていた。


「それより、その、早く、服を作り直して」


 アルケミストの二人はナノマシンを武器に使い切り、ナノマシンでできた衣服のほとんどを戦闘に使い切っていてジュンセイは自分の姿を見て慌てて大鬼に巻き付かせた鎖を回収する。

 身に着けたナノマシンのほとんどを使い切り下着姿の二人は慌てて衣服を作り直す。


「戦闘に夢中になり過ぎた、離れろ男。それ以上近づけば攻撃をする!」

「ジュンセイ……」


 レイショウを追い払い衣服を作り直したジュンセイは兵士を呼び出口を目指した。

 ジークルーンはレイショウへと近づいていく。


「ジークルーン……」

「無事でよかったです、村を襲うために鬼が向かっていると聞いて助けに来たのですが遅すぎましたね……」


「でも助けに来てくれてありがとう、おかげでハジメもミカドも助かった。俺の治療もしてくれたんだろう?」

「鬼に攻撃を受けて治療したのはジュンセイです」


「そうなのか、お礼を言いたいんだけど……」

「後にしたほうがいいでしょう、今の彼女は機嫌が悪いですから」


 助けた村人を連れた一団は排水路を抜けて川原に出た。

 周囲に鬼の姿はなくジークルーンは排水路を警戒し、ジュンセイは土手を上がって周囲の警戒をする。


「皆早く装甲車に乗って、保護した村人を連れて一度町に戻る」


 了解と返事を返し兵士たちが装甲車に乗り込む。


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