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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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流れ行くもの 2

 細い廊下の先の扉を開ける。

 開けた直後に中から鬼が現れ咄嗟にジュンセイが鎌を小太刀に変えて頭部を貫く。

 その奥にも鬼が二人いてジュンセイは少し顔を歪めてからその鬼たちを排除し、他にいないかを確認しながら部屋を調べる。


「逃げた村人の中に鬼にやられた人が居たみたいだね」

「ハジメさんは!?」


 埃とカビ臭い匂いに布のかけられた棚や大きな機械部品が並んでいた。

 ジュンセイが手にしたランプで部屋の中を照らしジークルーンが部屋の中を歩き回り小さな体を探しまわる。


「そこで何か動いたよ」


 その動きに気が付いたジュンセイが指さす。

 部屋の隅へと向かうと老婆に守られるように覆いかぶさられていたハジメが藻掻いていた。

 老婆は頭部を貫かれ死んでおりジークルーンが震える小さな体を抱き上げる。


「生きてます、角もない」

「でも腕のところ怪我をしている、その子をこっちに向けて」


 刀に突いた血をぬぐいジュンセイが躊躇なくハジメの首元を浅く斬りつけた。


「ハジメ!」


 頭部に近い切り傷口から鬼化を止めるためにナノマシンを送り込んでいたのだが、部屋の中を見ていたミカドが暗がりの中でジュンセイが首を切りつけていた様子を見て叫ぶ。

 休んでいたはずのミカドが部屋のそばまで来ていたことに驚くジュンセイ。


「いつの間に……。こっちではなくお友達の方を見ていてほしかったんだけど。戻ります、歩けるならあなたは自力でここの村の出口まで行きましょう」


 ハジメを抱いて部屋を出ようとするジークルーンは刀を持つジュンセイの耳打ちする。


「……ジュンセイ、この子のことは感謝しますが、その……治療法もう少し何とかなりませんか? 武器で刺したり斬ったりするのは見る人には衝撃的すぎます」

「これが一番楽なんだもの。でも考えておくよ、ジークルーンが言うなら今度からはもう少し刺激の少ない形にする」


「できれば、他の人に見えないような」

「急いでいなければね、治療は緊急性を伴うから」


 ジークルーンがハジメを抱きかかえて部屋を出てくると、部屋の外にいたミカドが話しかけてきた。


「……ハジメちゃんは、助からなかったのか?」

「いいえ、助かります。驚かせてしまってすみません。行きましょう村の入口に待たせている兵士たちも心配になってきました」


「町の人口に余裕ができるから、人口の問題で頭を抱えているチュウジョウは少しは喜ぶだろうけどね」

「……ジュンセイ」


 奥の部屋からジークルーンたちはレイショウのもとへと戻ってくる。

 鬼がいないかを確かめてからジュンセイは壊れた玄関の方へと歩いていき、ジークルーンとミカドは気を失っているレイショウのもとへと向かう。


「ミカドさん、ハジメさんのことを任せて大丈夫でしょうか?」

「あ、ああ。任せてくれ」


 ミカドはジークルーンからハジメを受け取り背負うと、ジークルーンはレイショウを担ぐ。

 身体強化のナノマシンで力を強化しレイショウを持ち上げと玄関へと向かう。


「助けられる人は助けました、行きましょう」


 村長の家から出てジークルーンたちは真っすぐここへ来た時の入口へと向かう。


 移動中に襲ってくる鬼の姿はなく壊れたバリケードのもとまで戻ってきた。

 彼らは武器を構えて暗闇からやってくるジークルーンたちを狙っていたがその白い髪を見て武器を下ろす。

 周囲を見回しジュンセイは兵士の一人に尋ねた。


「おかえりなさいませアルケミストの方々」

「こっちに鬼は襲って来た?」


「いいえ、奴らは一匹も現れませんでした」

「生存者、彼ら村人三人を保護する。ここでやることは終わった、撤収する」


 負傷者と武器を持つ兵士たちを連れて村を後にする。

 兵士を連れて外に止めてある装甲車のもとへと戻ろうとしていると、トンネルの奥から重たい足音が聞こえてきた。


「停止、何か来る」


 アルケミストの二人は前に出てレイショウたち村人を守るように、兵士たちは武器を構えて通路に広がった。

 通路の天井にぶつかるほどの背丈で角の先が天井に擦れて嫌な音を立てている。


「鬼!? 大きい!」

「一本角だ! それも新しい奴」


「新しい?」

「鬼には使用期限があって、定期的に補充が必要になるんだよ。動きが違うから油断しないで」


「期限……?」

「鬼は最低限の食料しかとらないから次第に体が動かなくなっていく。ここにいる鬼のほとんどは使用限界を迎えている。その証拠に、ここにいる鬼のほとんどが走ってこないでしょ。体が限界なの」


 鬼はジークルーンたちを見ると立ち止まり両腕を広げた。

 大鬼が走り出す前にジュンセイが鎖鎌を投げ首元に引っ掛け、強く引いて首に刺さるように試す。


「やっぱり首元には装甲張ってるか」


 鬼は姿勢を少し低くし突進してくる。

 鎖鎌を外し鎖を服に戻しながら素早く巻き取り強化した体で巨体を受け止めた。

 すぐにジークルーンも突進を止めにかかり、背後にいる兵士たちのもとへと行かないように押し返す。


「何をしようとしたんですか?」

「一本角を簡単に倒す方法。鬼に私のナノマシンを撃ち込むの、そうすれば鬼の体にある月のナノマシンが中和されて角も爪も脳のメモリも破壊できる」


「なるほど、正直に力比べしなくていいんですね」

「駄目だったけどね、手とかの他の血管じゃダメだよ。相手は自由に体の血を止められちゃうから」


 兵たちは武器を構えたが、銃を撃とうにもアルケミスト二人が立ちふさがり引き金を引くことができずにいた。


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