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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
28/102

流れ行くもの 1

 ジークルーンとジュンセイは村の中を走る。

 暗い地下の村の中、向かう先で何かが崩れる大きな音が響く。


「物音が聞こえました、ものの崩れた音です」

「鬼かも」


 あちこちの炎から上がる有害な煙の先に村長の家が見えてきて、そこに大きな影が見えた。

 近づいて見えてくるその大きな影の頭には大きな一本の角。


「鬼だ!」


 巨体は長い腕を振り上げ入口が小さく入れない建物を破壊している。


「襲っているということはまだ誰か建物の中にいますよね」


 ジークルーンが軍刀を構えて走り出し、ジュンセイが立ち止まり腰を落として鎖のついた鎌を振り回し建物の入口より大きな影に向かって投げた。

 鎖はジュンセイの衣服のナノマシンを使って長さを変えて伸びていき、飛んでいった刃が鬼の肩に引っ掛かる。

 そして彼女の体内のナノマシンで強化した身体能力で思い切り引くと巨体はバランスを崩して仰向けに倒れた。


「先に進みます、鬼の相手お願いできますか!」


 倒れた大鬼の横を通り過ぎジークルーンは村長の家だった建物の中にはいっていく。

 起き上がろうとする大鬼に向かって鎖を巻き付け引っ張るジュンセイ、彼女は新たに刀を作り出すと両手でつかみ鎖で身動きを封じられた鬼の首に向かって振り上げた。


「返事を聞く気はないじゃないジークルーン」


 村長の家の中、外の炎の明かりがぼんやりと照らす室内に倒れる二本角の鬼、明かりの届かない部屋の先に動く人影を見つけジークルーンは駆け寄る。


「大丈夫ですか!?」


 人とも鬼ともわからないが動くものに声をかけると、暗闇で動く人影は疲れ切った弱弱しい声で答えた。


「そのこえ、じーくるーんか?」

「レイショウさんですか? よかった無事で、他に無事な人は?」


 声を聴いて相手がレイショウだとわかりジークルーンはほっと胸をなでおろし、再び気を引き締めて辺りを見回す。


「奥でハジメと他に何人かが休んでる……、逃げている途中とここで何人かやられて、ハジメの無事しか考えられなかったから一緒に逃げて来た人の数は数えていない……。でも数名しか残らなかった」

「そうですか、助けに来ました。ここから逃げ出しましょう」


 部屋の中は激しい戦闘の後があり数本の手斧が散らばり、鬼と化している途中でとどめを刺された村人が倒れている。

 レイショウから離れた場所でミカドが息を切らして壁にもたれかかっていた。


「馬鹿が……、自分の身の方が大事だろうが……」


 ミカドのつぶやきを聞きながらジークルーンがレイショウのもとへと向かっていると、外から明かりを持って外の大鬼を倒したジュンセイが合流する。


「まだ鬼がいたってことはこのあたりにいるかも、早く離れた方がいい。あんまり時間をかけると置いてきた兵隊が襲われる」

「わかりました」


 明かりに照らされたレイショウの姿は血まみれで血の滴る右腕はだらりと下げ、壁にもたれかかるようにして立ち左手に手斧を持っていた。

 ジークルーンはレイショウへと近寄ると彼は逃げるように一歩身を引く。


「迎えが町に入り口に来ています。一緒に逃げましょう、レイショウさん以外に怪我人はいますか?」

「いや、もう俺だけのはず……」


「止血しますよこちらへ来てください。その怪我は鬼にやられたものではないんでしょう?」

「ハハッ……何とかでかいやつ以外は倒し切ったんだけどな、最後に油断しちまった。……殺してくれ、最後にジークルーンに会えてよかった」


 近寄るジークルーンレイショウは血の滴る右腕を上げて自分がもう助からないことを見せつける。

 鬼の爪に切り裂かれた深い切り傷があり、傷口の血を黒く固め腕を根を張るように浸食していた。


「この怪我は鬼にやられたんですか……そんなこと言わないでください、まだ助かる可能性はあります。外で待っている兵隊のところへ……」


 前に出てきたジュンセイが躊躇なくレイショウの首に鎌を当てる。

 刃は深く刺さり首から血を流し倒れるレイショウを見てジークルーンはジュンセイに向き直った。


「なっ!」

「鬼にやられたらすぐに薬を打たないと手遅れなんだよ」


 ジュンセイを睨みつけ首に鎌の刺さったまま倒れたレイショウを見る。


「ジュンセイ、どうして! まだ兵士のところへ連れていけば助けられたかもしれないのに!」

「連れて行ったって助からない。ナノマシンの体の乗っ取りは早く、連れて行っても兵士たちのもとに連れていく前に鬼化が始まってたよ」


「……ミカドさんとハジメちゃん、あとは他の村人の人を連れて帰りましょう」

「それより、治療したんだから感謝してくれてもいいんじゃない?」


「治療?」


 ジークルーンはレイショウの傷を見ると、腕の傷と首の傷は銀色の金属の瘡蓋と変わり、ゆっくりと大きな傷はふさがっていっていた。

 レイショウの首から鎌を抜きジュンセイはミカドのもとへと向かう。


「あなたは怪我は?」

「俺は、無事だ……治療って、レイショウは助かるのか?」


「助かるではなく、助けたの」

「そうか……レイショウを手にかけず助かった、それにハジメちゃんを悲しませなくて済む」


 大きく息を吐きミカドは壁にもたれかかったまま散らかった床に座り込んだ。


「他の村人は」

「その扉の向こうだ。へへへ、恥ずかしいことに腰が抜けちまって俺は動けない」


「そう、銃もなくよくこの数の鬼を倒した。誇っていい」

「大人たちが体を張って守ってくれたからだよ……」


 ミカドの疲れ切った声を聴きながらジュンセイは奥の部屋へと向かう。

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