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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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慟哭の夜 7

 二人は酒が入っているため運転手に兵士を一人乗せ、ジークルーンとジュンセイは装甲車を借り静かな廃墟を走る。

 廃墟は暗く満月の月明かりと星を覆う輪が暗闇を照らす。

 廃墟の先を見据えギュッと服の裾を掴む落ち着きのないジークルーン。


「これ以上、早くは走れないよ」

「わかっています、瓦礫でひっくり返って事故を起こされても困ります。安全に迅速に」


「それより、道はこっちであってる?」

「ええ、暗くて見ずらいですけど見た景色です。間違いはありません、このまままっすぐもう少し行くと川が見えてくるはずです」


「確かに地図では川があるけど……今から行って助けられると思うの?」

「助けます。たとえ一人でも二人でも……見捨てて言いはずはないんです」


「全部は救えない……諦めることも大事だよ、ジークルーン」

「ジュンセイ、あなたたちが何を見て来たかわかりませんけど、自分はまだこの世界を見ている途中です。自分の使命は人を守るために戦うことです」


 廃墟を進み角を曲がると村へと向かう装甲車の前方に、暗闇を切り裂く眩いヘッドライトの明かりが見えてきた。


「明かりが見えました」

「見ればわかる、ゆっくり近づいて」


 装甲車は速度を落とし慎重にライトを照らす車両に近づく。

 停車している3台の装甲車が道をふさぎジークルーンが村へと行くのを妨げていた。


「これはうちの装甲車。この車両向き、さっきの彼を村に届けた帰りで襲われたのか?」

「そんな……身を潜めているだけで誰かまだいるかもしれません」


「装甲車から出ないが一番安全なんだよ、見た感じ扉が開いているようだけど」

「自分が確認してきます。ジュンセイはここで待機を」


「私も行くよ。昔はこいつらと戦ってきたんだ、まだ戦い方は体が覚えている。それに体も動かしたいし」


 装甲車が停車し道を塞ぐ車両の様子を確かめにジークルーンが飛び出す。


「装甲車は私たちが戻ってくるまでしっかり戸締りしてて、何かあっても反撃はせず私らの帰りを待つように」


 車内に一人残される運転手に指示を出しジュンセイがジークルーンを追いかけて外に出ていく。

 月明かりに照らされていても廃墟は暗くいたるところが闇に包まれ、足元に穴が開いているかさえわからない。

 周囲に鬼の姿も見えず蹴とばした小石の音が反響するほど辺りはとても静まり返っていた。


「こんなので怪我はしないでよ、ジークルーン」

「ええ、慎重に行きます」


 服の一部を軍刀に変化させジークルーンは車両の前に立つ。

 車両は戦闘の一両が瓦礫へと乗り上げそこへ後続が追突、同じようにがれきに乗り上げスタックした状態で停車していて、事故の衝撃でフロントガラスが割れていたり走行が拉げていた。

 事故を起こした車両は無数のひっかき傷で覆われ、血に濡れた車内を見てジークルーンは顔を歪める。


「なんでこんなことに……」

「やっぱりこの車両は彼を送り届けた装甲車かな。帰路についてから襲われた感じでしょ、こんな日に外に出されてついてなかったねこの人らも」


 車両のそばには銃で撃たれ排除された鬼が転がっていて、ジュンセイは死骸が動き出さないかを確認しながら転がる薬きょうを蹴り飛ばしジークルーンを追いかけた。


 武器を構え、開かれたドアから装甲車の中をのぞくジークルーン。

 しかし生存者は誰の姿も見つけることはできずキュッと唇を噛む。

 先に行くジークルーンに追いついたジュンセイは彼女のそばに立つと、先に装甲車の中に血の跡を見た彼女はぽつりと尋ねた。


「これは、自分のせいでしょうか? 自分がレイショウさんを村に返すようにお願いしてしまったから……」

「星の巡りが悪かったって、チュウジョウならいうだろうね。誰が悪いを言って言ったら切りがない、たまたま巻き込まれてしまった自分を恨むしかない」


 装甲車にもたれかかり眉間を撫でるジークルーンを見てジュンセイは近くの装甲車の中に入り隅々まで見てから見たままを報告する。


「戦闘の跡はある、ここで襲われたのは間違いない。血の跡もあるし、けが人は出た」

「鬼になってしまったのですか?」


「誰もいないところを見るとたぶんね、自決しても頭を破壊しなければ鬼として蘇ることになるし。そもそも頭を吹き飛ばしたような大きな血の跡もないし、戦って自決する暇もなく一気に襲われたんじゃないかな。今日は満月だから」

「……やっぱり自分には今の状態が正しいとは思えません。ここにいた人たちにも家族はいたでしょう……戦争は終わったのに家族を失い辛い思いをする人が出るなんて、こんなこと……」


「でも人同士の争いは無くなった。戦時中に加速した何百隻と打ち上げる天翔艦の燃料での大気汚染、問題視されていた環境問題も改善の兆候が見られてるってチュウジョウが言ってた。人の行動が制限され使うエネルギーが減ったからって」

「そんなことをしなくても化学が発展していけば環境問題は解消されていたはずです、それこそアルケミストのナノマシンが町や工場を作ることができたように……」


 二人の背後で瓦礫の崩れた音がし二人は音の聞こえた方角を見る。


「誰かいる、鬼かも。ジークルーン下がって、古い奴なら対処は楽だけど、新しい奴は厄介だから」

「新しい、古い? また自分の知らない話を」


 音の聞こえた方向は近くの建物の中でその方向から足音が聞こえてきた。

 そして暗闇から月明かりに照らされジークルーンたちに近寄る人影が浮かび上がる。


「アルケミストの方々、ですか?」


 銃を担ぎ仲間を支えて兵士たちが出てきて、彼らは月明かりが反射し白く輝く頭髪を見て思わず見とれその場に固まった。


「装甲車に乗っていた兵士か、何人やられた?」

「負傷者はいますが皆無事です、噛まれたやつもすぐに薬で治療し鬼化はしていません」


「そうか、幸運だったな。この向こうに私らが乗ってきた装甲車があるそちらに乗れ」

「助かります」


 兵士隊は建物の中から出てきて負傷者を背負い、事故現場の向こう側にとまっている装甲車の方へと歩き出す。


「行こう、ジークルーン。今回は運がよく皆無事だった、ここにもう用はない」

「そう、ですね。レイショウさんたちもきっと無事なはず」


 兵士たちを追いジークルーンも乗ってきた車両へと戻っていき、一人残ったジュンセイは村のある方向を見てつぶやく。


「ここに倒れている鬼は二本角ばかり、やっぱり残りは村に集中するか」


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