城塞都市 7
扉の向こうはエレベーターとなっていてジークルーンを連れて中に入れると、刀で男たちを追い払い傷ついたレイショウを片手で引きずってエレベーターに乗せた。
エレベーターを操作しようとジュンセイが手を伸ばすと、彼女のの登場で真っ赤だった顔を真っ青にさせていた男が問いかけてくる。
「待ってくれ、この二人を回収する? それならどうしてここに送ってきたんだ、この女は好きにしていいんじゃないのか?」
男の問いかけにジュンセイはボタンを押そうとする腕を止めて問いに答えた。
「誰がいつそう言った? あなたたちの勘違いでしょう、客人をこんなにして……ここが外だったら法廷もなしに現場判断で私がこの場で首を刎ねていたのに、まったく法律というのは」
睨みつけ檻の内側にいる男たちを牽制しながらジュンセイはエレベーターの扉を閉じる。
顔も上半身も痣だらけのレイショウの姿を見てジークルーンは彼のそばに近寄りシャツの袖で彼の流れる血をぬぐう。
「ありがとうございます、レイショウさん……。自分の代わりにこんなになってしまって」
「……ジークルーン、無事なのか?」
レイショウのそばに膝をついて彼の怪我の具合を確かめる。
「おかげさまで……本来なら自分があなたを守らなければならないのに、すみません」
「よかった。いいんだ謝らなくて。俺の好きでやってることだから」
「ついてこなければこんな目には合わずに済んだのに……」
「ついていかなかったらジークルーンがひどい目に合うところだった」
エレベーターが上がり始めジュンセイは壁に寄り掛かり話を聞いていて、ジュンセイはジークルーンのもとへと歩み寄った。
彼女はレイショウには視線を向けず彼を心配しているジークルーンの顔を覗き込む。
「大丈夫? 助けに来るの遅れてごめん、私がその場にいたらこうはさせなかったのに。知らなかったんだチュウジョウがこんなことするだなんて」
「あなたは出会ったそばから自分を襲って勝手に逃げて言ったでしょう? 方向性が違うだけで二人とも普通じゃないですよ」
「チュウジョウにはあとで抗議しておくから。ジークルーンを打ちのめして屈服させるのは私だから安心して」
「あの場所はなんだったのですか? それであなたは何を言ってるんですか、なにがあって頭パッパラパーになったんです?」
「あの場所はこの町で犯罪を犯した者を隔離しておく場所。刑務所的な役割を果たしていて、外から運び込まれてくる金属を溶かして外の人間に売りつけるために作った鍋やフライパンとかを組み立ててる」
「ベルトコンベアーで流れていたのはその部品だったんですね」
「刑期も出口はないけどね。それなりの設備があるけど彼らはあの場所で永遠と働かされて奴隷と変わりない生活を送っているから彼らには不満が溜まりやすい。そんなところにジークルーンが送られたらどうなるか見なくてもわかるってのに」
「酷い、なぜチュウジョウはこんなことを。何かしらの犯罪を起こしたとしても彼らだって人です、人としての扱いは埋めるべきです」
「襲われかけていたのによく言う」
「それとこれとは別です。彼らだってちゃんと更生させればあのようなことはしなかったでしょう」
「ジークルーンはちゃんと外の世界見たよね? 今の世界にそんな余裕ないから、鬼にもならず雨風しのげる場所で食わせてやっているだけ感謝してほしいくらい」
「今の世界ならそうなのでしょうかね……? 本当に自分が別の世界に来てしまったかのようで寂しい気持ちです」
エレベーターが上の階に上がってくるとジュンセイは扉が開くと同時にジークルーンの手を引いて通路に出る。
「待ってください、レイショウさんが」
「私のジークルーンについてきた男か、体も頑丈そうだし治療がひつようには感じないけど……誰か呼ぶからいいよ、チュウジョウのもとへと行こうジークルーン。治療を終えたら彼はジークルーンを連れてきたお礼も含めて護衛付きで安全に村まで送るように言っておくから」
カツカツと足音を立てて歩くジュンセイが廊下の奥へと声をかけると建物の奥から数名の使用人が出てきてエレベーターへと向かわせる。
手を引かれて歩くジークルーンは後ろを振り返り、エレベーターの床で横になっているレイショウの方を見た。
振り返れば彼はジークルーンを追いかけようと壁にもたれかかりながら立ち上がろうとしている。
「そうですか……ではここでお別れですね、道案内をありがとうございましたレイショウさん。……お元気で、ハジメさんにもよろしくお伝えください」
「待って……俺も」
立ち上がるレイショウを見てジークルーンはそれを止めた。
「寝ていてください、レイショウさん。これ以上はどんなわがままでもあなたを巻き込めません、先ほどと同じように命にかかわりますから一般人のあなたを連れてはいけないんです。巻き込んでしまってごめんなさい。あなたのことをここまで突っぱねていましたけど。自分は変わってしまった世界で生きていくことが恐ろしく心細かったのかもしれません」
集まってきた使用人たちに担がれレイショウはジークルーンとは別の通路へと運ばれていく。
ジークルーンは連れていかれる彼に手を振り別れる。




