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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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城塞都市 5

 人が通れるほどの配管のような滑り台を二人は滑り落ちてきたのは天井の高い薄暗い部屋。

 普段から鬼に追われ転んでもゆっくり倒れていられない生活を送っていたレイショウは体が勝手に反応してすぐに立ち上がり一緒に滑り降りてきたジークルーンのもとに駆け寄る。


「大丈夫かジークルーン?」

「ええ、ついてきたのはあなたです、今回は巻き込んでしまって悪いとは思っていませんよ」


「わかってるって気にしてないから」

「少しは気にしてください、心痛むんですよ」


「どっちなの?」

「それより自分たちはどこに落とされたのでしょうね」


 立ち上がり壁に空いた滑り落ちてきた滑り台へと近づくと前かがみになって出口を除く。

 這って配管のような滑り台を少し上ろうとしてすぐにやめてレイショウに振り返る。


「ここから上に上がっていくのは無理でしょうね」

「外じゃないみたいだ。暗くてじめじめしてるけどカビ臭くはない、でもいい場所じゃない気がするけど、とりあえず俺から離れるなよ」


「民間人を守るのは自分の仕事です、そっくりそのままお返しします」

「それとだ」


 レイショウは先ほどの上着と合わせ今度はシャツを脱ぎ差し出す。


「なんですか?」


 日々重たい金属の塊を背負って持って帰っている鍛えられた筋肉と古傷が浮かぶ上半身を見てジークルーンは少し身構える。


「服はいただきましたよ? 何する気ですか?」

「動けば下が見えるからな、腰巻に使ってくれ」


 顔を赤らめるレイショウを見て敵意は感じられず、複雑な心境のジークルーンはシャツを受け取りながらお礼を述べた。


「ああ、ありがとうございます。本当にあなたは自分をよく見ていますね。悪い意味で」

「ジークルーンが無防備なんだ」


 シャツを着て上着を腰に巻きジークルーンは辺りを見回す。


「とにかく外へと出ましょう、ここにいると何されるかわかりません」


 レイショウはジークルーンの前に腕を伸ばした。

 そして腕に巻かれたブレスレットの形をした発信機を見せる。


「ところでこれ使えないか?」

「自分が付けた発信機ですか。これだけでは何とも」


「俺にもっとたくさんつけてくれていればよかったのにな」

「いかに姿形は変わっていても金属です、手枷や足枷にする気はなかったですから」


「でも何かに使えるかも?」

「確かに、身体強化のナノマシンとして体内に入れれば……」


 ジークルーンは発信機に向かって手をかざす。


「あ、駄目です、自分の操作を受け付けません。今の自分は完全に力を奪われています」

「そうなのか?」


「無理なものは仕方ありません。とりあえず進みましょう、チュウジョウのもとへと戻らないと」

「またあの人のところに戻るのか」


 何か武器を探すが二人のいる部屋には何もなく部屋を出て廊下を調べる。

 暗い廊下は換気扇から聞こえる送風の音だけが聞こえるだけ。


「サイズ合わないだろうけど靴貸そうか?」

「いいえ、床は綺麗ですしこれなら足を切ることもないでしょう。注意して歩きます」


「俺が背負ってもいいんだぞ?」

「なぜ、そこで鼻の下が伸びるのか。あなたはそういうところがマイナスです」


 服から靴までナノマシンで作っていたジークルーンは裸足で歩く。


「何でしょう何かの施設なのでしょうけど。どうして話をしていただけなのにこんなことに……」

「気を付けて進もう、作業服か何かジークルーンが着れる物があればいいんだが」


「自分が先を進みます、ついて来て下さい」

「俺が先を言った方がいいんじゃあないのか?」


「自分にはこの国の人々を守る義務があるので、レイショウさんを守る側です」

「その国ももうないんだし、ジークルーンが無理に前に出なくてもいいんじゃないか?」


 その言葉に彼女は眉を吊り上げ無言で廊下を進みだした。

 速足で進む彼女に後をレイショウは追いかける。


 廊下は長く途中にある部屋も武器にできるようなものは置いてなく、部屋の隅に寝具のようなものが置いてあるだけ。


「部屋多いな」

「そうですね」


「上に続く階段見つからないな」

「そうですね」


「辛そうだけど大丈夫か?」

「ええ、体の制御をしていたナノマシンを操られていたので少し体が重いだけです。ですが大丈夫、一通り武術はたしなんでいるので……学習装置での学びだけで実践経験はありませんが戦えるように体は動きます」


「なぜ、そんな怒ってるんだ」

「知りません」


 同じような部屋がひたすらに続き上に続く階段もない。


「ここが最後の部屋みたいですね」

「ここに階段がなければ完全に閉じ込められたことになるのか、どうなってるんだ」


「チュウジョウのアルケミストの力でしょう、さっきの部屋と同じで建物の構造を作り直したんですよ、もしかしたら本当にに出口がないのかも」

「すごいな、本当に」


 他の部屋と同じように躊躇なく扉を開けた。

 扉の向こう側はベルトコンベアーから流れてくる部品を組み立て作業をする大勢の男の背中姿が見えた。

 男たちは皆髪を刈り上げた同じ髪形をして黙々と作業をしている。


「工場か?」

「の、ようですね。何かの部品を作っているみたいです」


「通り抜けるか? 向こうにも扉があるみたいだけど、ここを進むしかなさそうだ」

「こっちにもう道はないですし、通り抜けましょう」


 男たちは作業に夢中でこっそりと歩くレイショウたちには気が付いていない。

 二人が部屋の真ん中あたりを過ぎたころ、天井にあるスピーカーから柔らかな音色のチャイムが鳴る。

 突然の音楽にレイショウたちは驚き跳ね上がった。


 作業をしていた男たちが一斉に持ち場を離れて動き出し、部屋の真ん中にいたレイショウたちは見つかる。


「なんだ? 誰だこいつら?」

「新人じゃねぇな、どこからか忍び込んできたのか?」

「裸の女がいるぞ!」


 注目が一気に集まり男たちが取り囲むように集まってきてレイショウが拳を構えた。

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