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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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城塞都市 3

 木製の扉に偽装された鉄の扉を調べていると、人の気配を感じジークルーンは振り返る。


「あなたは」


 椅子に腰かけレイショウたちを見ているのは、ジークルーンと同じ白い髪に金色の瞳をした女性。

 金色の装飾の着いた白い礼装軍服を着ている彼女はジークルーンを見てにやりと笑うと椅子から立ち上がり両手を広げて出迎える。


「アインホルン! ああ、懐かしい100年ぶりか! あなたがここにきて挨拶したっきり会うのは二度目だけど。フフフっ、あいも変わらず真面目そうな顔だ長生きできないぞ」

「ジュンセイ! あなた、どうしてここに! ここにはチュウジョウさんがいるはずでは!?」


 部屋の両端にあった箱が爆発し部屋中に濃い密度の銀色の紙吹雪が舞う。

 ライトの光を受けてキラキラと光る紙吹雪が舞う中、お互いがお互いを認識した瞬間、相手に向けて武器を作り出し構える。


「フフフっアハハハ! 今まで眠っていたとは思えないくらい、いい反射神経だ!」

「どうしてここに! ジュンセイ、その姿は! これはチャフ!」


 すぐに手にしていた帽子と迷彩服の一部を軍刀に変えて構えるとジークルーンは尋ね、ジュンセイと呼ばれた女性はなおも嬉しそうに言葉を紡ぐ。

 何が起きているかわからないレイショウはその場に取り残される。


「君を見た途端、嘘かと思って頬をつねったほどさ。嬉しいね、最近じゃあめっきり知り合いも減って寂しくなっていたところさ。さぁ、楽しもう!」

「頭がいかれたか!」


 ジュンセイは自分が座っていた椅子をつま先に引っ掛けて蹴り上げジークルーンへと飛ばす。

 飛んでくるものを軍刀で払おうとするが刃に触れた椅子は火花を散らした。


「どうしてこんなことするんです!」

「楽しいからさ! この100年、退屈だった。星のために戦い、星のために勝ったのに人は変わらなかった!」


 ジークルーンは後ろの飛びのき、金属の椅子はごとりと音を立てて床に転がる。


「何を言って。っく、この建物の置物は皆金属製か」

「ああ、それだけじゃない!」


 テーブルクロスを引きジュンセイの体を隠した布はぐにゃりと溶けてボウガンへと形を変えた。

 ジークルーンは射線から逃げるようにテーブルの裏に逃げ大きなテーブルを倒し盾とする。


「家具はアルケミストの操作できるナノマシンですか」

「でも、国ごとに信号が違うからあなたは私らのナノマシンを操作できない! でしょう?」


「厄介な」

「この城、この町、この城塞都市自体が私たちの天翔艦の慣れの果てだ!」


「壁の上についていた砲台を見たときにそんな気はしていました。この100年のジュンセイの話が聞きたいです、武器を捨ててください」

「楽しんだらね! 私を楽しませて!」


 何故戦い始めたのかわけもわからない状態で立ち尽くしていたレイショウが戦いを割って入りジュンセイを刺激しないように尋ねた。


「なぁ、ちょっといいか?」

「よく無い、誰あんた? よそ者は入ってこれないはずだけど、なんでここにいるの?」


 レイショウの思いがけない行動にジークルーンは身を隠していたテーブルの裏から出て、彼の前に出て守ろうとする。


「何してるんですか! 危ないです、下がってレイショウ」


 だがレイショウはジークルーンが前に出ないように手で制止しジュンセイとの会話を続ける。


「ジークルーンと一緒に来たんだ。あんた見た感じ服装といい、そのきれいな目といい変わった力といい、同じアルケミとかいうやつなんだろ」

「変に略すな、自分の近くにある金属を意のままに好きなように操作し作り出すことのできる力を持つアルケミストだ。よく覚えておけただの人」


「どうしてそのアルケミスト同士て戦ってるんだ、ジークルーンは仲間とかじゃないのか?」

「仲間だよ、でもそれとこれは別。理由はそれは私が戦いたいからだ! ああ、君の言う通りジークルーンはかつての仲間だ。そんなの決まってる新たな刺激を求めてるのさ」


「何で戦う!」

「え、だから私が戦いから……っていま言ったよね? どいて、人間に用はない、私はジークルーンに用があるの!」


 部屋中に舞っていた銀紙は床に落ち、それを踏み前に出たジュンセイは手にしたボウガンの先をテーブルの反対側に逃げたジークルーンから前に出たレイショウに向けた。


「下がってください、ジュンセイは精神を摩耗し過ぎて狂ってしまった。今彼女は自分で自分の行動をできない状態になってしまっているんです」


 そこでロックのかかった扉が開きジークルーンの後ろまた一人、白髪で金色の瞳の女性が増えた。


「そこまでだ。ジュンセイ、武器をおさめなさい」

「チュウジョウ……私」


「まったく、今日は建物内が静かだと思ったら先に来ていたのかジュンセイ。気持ちが昂ると自分でも行動が制御できないのだから、一度落ち着いてまたおいでなさい」


 ジュンセイ手にしていたボウガンも刀も手元でドロリと溶け床に銀色の水たまりをつくる。


「悪いね、彼女は過去の戦いで精神に異常をきたすようになってしまった。ジュンセイは我々の戦友で害が出ないようにこの城に囲っている。悪気はない、どうか許してやってほしい」

「違う、私は会うのが楽しみで……」


 ジュンセイは取り乱し後退りしながら扉からではなく壁をどろりと変形させて退出していく。

 テーブルクロスを直し壁の大穴を修復し散らかった部屋を元に戻すとチュウジョウは倒れた椅子を起こして座る。

 軍刀を下ろすもそれを手放さずジークルーンはチュウジョウを警戒しつつ尋ねた。


「お久しぶりですチュウジョウ、あなたは正気ですか?」

「後で知ることになるだろうけど私も少し病んでいるのかもしれないな、こんなことをしているくらいだし。とりあえず今のことは忘れてくれ、あいさつをやり直そう、一度落ち着いて席について話し合おうじゃない。レイショウ君だったね、君も座りなさい。今お茶を持ってきてもらっているから」


 席に付き三人が向かい合うとすぐに使用人の老人がお菓子とお茶セットの乗ったカートを押してやってくる。

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