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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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城塞都市 2

 迷路のように立ち並ぶ3階建ての集合住宅と複数の店の集まった複合施設の並ぶ町を歩く二人。

 缶詰や生活必需品の入った鞄を背負うレイショウの案内で、缶詰や生活必需品などを売っている店などを巡り次の店を目指す。


「どうだろう、俺はちゃんと町を紹介できているか?」

「ええ、ありがとうございます。今でも紙幣貨幣が使われていたり、食品の加工技術やガラス製品を作る技術があったり見てわかったことがありましたし。急いでいるのに無理言って連れまわしてしまってすみません」


「いいって、俺が楽しくてやってるんだから。それにちゃんと頼まれたものの買い物もしてるしな」

「おかげで今の生活がどういったものかわかってきました。ですが、自分はもっと文明のレベルが下がった場所を想像していたんですけど、維持してきたのかこの100年で持ち直してきたんですかね?」


「どうだろう、初めてここに連れてきてもらった時からあまり変化はないと思ったけど」

「そうですか……、戦中より店に並ぶ商品の種類が減っていましたけどこれも売れるものと売れないもの、大量に作れるものや日持ちするものを限られた生産施設で優先したからなんでしょうね」


 外の壁の機関銃の着いた物騒さとは裏腹に、町の中からは壁の上にある櫓や砲台が見えるが武装した兵士の姿もない。

 赤黒かった威圧感のある壁も内側から見ると白く塗りなおされていて、町の風景にあまり目立つことなく溶け込んでいる。


「思い返してみるとなんだか武装も整い過ぎている気がしてきました。この町は平和すぎます、まるで外のことなんて知らないみたいに」

「いいことじゃないか? 外の脅威に怯えずに生きていけるのは?」


 店の中以外に人の気配がなく、レイショウたちと同じように外から来たであろうどこかの村人と彼らに物を売る店の人間以外に人の姿はない。

 閑散としている町を見てジークルーンは改めて町を見る。


「種類に限りがあるとしても、これだけ物が充実しているのは外から金属を集めているだけではできないでしょう。たとえ過去の技術をまとめたデータがあったとしてもこれだけ。そういえばほとんど人の姿がないですね、この町の住人はどこに居るんですか?」

「町の人間は全員、町の中央部で働いているはず。大きな城の周りにいろんな工場が立ち並ぶ場所があるんだ」


「自分の目で見てみたいです、次はそこを案内してください」

「遠目から見ることができるけど、工場は町の人間以外は入れないんだ。検問で止まるように言われて無理にでも入ろうとすれば捕まる。最悪、今後出入り禁止にされる」


「では遠巻きでいいので連れて行ってください」

「わかった、じゃあこっちだ」


 行き先を変えて二人が町の中央へと向かい始めると、進行方向の先に黒い車が停車する。

 周辺に店はなく二人が不審がって歩きながらも、その車両みていると運転席から燕尾服を着た老人が下りてきて二人に向かって恭しく頭を下げた。


「お迎えに上がりました、ジークルーン・アインホルン様。城までまでお送りします」

「まだここにきてそんなに時間が立っていないのに、それになぜあなたは自分の名前を知っているのですか?」


「驚くこともないでしょう。すべての門の出入り情報は城にて管理してしておりますので。どこに居るかも調べればすぐに、お分かりですね」


 一定の間隔で立つ街灯についた防犯カメラがジークルーンたちに向いているのを確認する。


「……あなたをここへと送った方、自分を待っているのは誰でしょうか?」

「私の主はホシガタ・チュウジョウ様でございます」


 その名前尾を聞いてジークルーンは目を丸くした。


「チュウジョウ、彼女が生きているのですか! ……わかりました、いきましょう。連れて行ってください」


 少し考えたのちジークルーンは返事を返して歩き出しレイショウに振り返る。


「ここでお別れですレイショウさん。案内ありがとうございました、また機会がありましたら何かお礼をしますね」

「待ってくれ、俺もつれて行ってくれ」


「どうしてです。本物かどうかわかりませんが自分は昔の知り合い……に、会ってくるだけです。あなたが付いてくる必要性がありません。ここでお別れです、ありがとうございましたレイショウさん」


 ジークルーンは車両の方へと向かいその背中を見てレイショウが前に出て声を出す。


「なぁ、爺さん。俺もつれて行ってくれないか?」


 車のそばに立ちレイショウに言葉を掛けられた老人は答える。


「構いませんよ。私は主にただ連れてくるようにと申しつけられただけですから。どうぞお二方、チュウジョウ様がお待ちです」


 そうい言われジークルーンの後にレイショウは車へと乗り込む。

 二人が乗ると車両は街の真ん中へと向かって走っていく。


「ここまであなたが自分に付いてくる理由はないでしょう?」

「俺とハジメの父親も母親との出会いは一目惚れだったらしいから、まずは本人に嫌がられないように行動を共にするってさ」


「……そうですか、わかりました……。いいえ、やっぱりよくわかりません。自分はそれほどレイショウさんに好意を持ってはいませんよ。ややマイナス状態ですよ」

「これから仲良くなっていけばいい!」


「それはマイナスの感情を抱いている自分が決めることでは? というか、あなた恋と愛を勘違いしてません? 自分も教えられた情報だけで実体験がなく詳しくはないですが、なんか二つが混ざっている気がします」


 車は町を抜け居住区を抜けると侵入者を防ぐ検問へとたどり着く。

 外の重装備とはまた別の武装した警備員たちに、運転する老人は通行書を取り出し通行を許可される。


 走行中に窓から見える工場の横や上には太いパイプが縦横無尽に伸び、地面にはいくつものコンテナが並んでいる工業地帯を進む。


 車両が停車し降りると目の前には大きな建物。

 城塞都市の中心部に立つ巨大な建造物、厚い壁と天井を太い柱が支える強固な建造物で、柱には彫刻が刻まれている。


「すげぇでけぇ」

「城塞というより神殿ですね。壁が突破された時に砲台や銃座を創る場所が設けられているので城塞で間違ってはいないのでしょうけども」


 ジークルーンは銀色の髪を隠すためにかぶっていたフードと帽子を取り外し建物を見上げた。

 老人の案内で二人は城の中に入っていく。

 建物の中は通路が大きく取ってあり調度品が飾ってある。


「こちらでお待ちください」


 案内されたのは大きなテーブルのある大部屋。

 そこで老人は引き返していき二人が部屋に入ると扉は閉じられ外から鍵がかけられる。


「何! 扉が勝手に閉まった!」

「これ木製の扉じゃない、木に偽装された電子ロックの鉄の扉です」


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