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放浪屍鬼の世界 デーモンオーガディストピア  作者: 七夜月 文
1章 --終末世界に鬼が住む--
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城塞都市 1

 赤黒い門の方角から向かってくる人影を見て、レイショウも窓を上げて向かってくる人影に手を振る。

 厚着の兵士の姿を見てジークルーンが尋ねた。


「すごい服装ですね、熱くないんでしょうか?」

「あの城塞都市の兵士が来ている服装は、奴らに噛まれたり引っかかれたりするのをある程度防いでくれるんだ。そりゃ、たぶん熱いだろうけど」


「あの兵士が持っているのは銃ですよね?」

「ああ、すごく高価でほとんど売ってもらえない。村にも一つあるけど扱えるのは村で村長だけだ」


「銃に対する知識や訓練とかは教えてもらえないんですか?」

「城塞都市は一日停泊するだけでも、かなりのお金がかかる。うちの村では銃を持っているのは代々村長の家系の人間だけだ。今も城塞都市のどこかに村長のとこの息子がいると思う」


「なるほど、なんかよそよそしいですね?」

「威張り散らすようなやつであんまり仲は良くないからな」


 近寄ってきた厚手の服の兵士は額に描いた汗をぬぐってレイショウに話しかける。

 後ろを振り返り道に倒れる鬼を指さす。


「すまないな、昨日の襲撃の片付けがまだ済んでいないんだ。この道は通れない」

「そうみたいですね、お疲れ様です!」


「奴らを踏まないために迂回して別のゲートへと向かってくれ、タイヤに穴を開けたくないだろ。西南西の門ならこの時間すいているはずだ、そちらに回ってくれ」

「ありがとうございます、そうします」


 トラックは来た道を引き返し城塞都市の壁が見える道を走る。

 別の出入り口へと向かう途中で武装されたトラックと装甲車の一団が先ほどの場所へと向かって走っていくためにすれ違う。


「悪いなあと少しのところで。……しまったジークルーンだけなら歩いて門までたどり着いたか」

「別にいいですよレイショウさんのせいじゃないですし。ところでですけど、レイショウさん」


「なんだ?」

「もしよろしければ、あの町の中を案内してくれませんか?」


「ああ、任せてくれ。多少なら町の中を案内できる」

「返事が早くて驚きました。後ろの荷物を売却した後でいいですよ?」


「ああ、手続きさえ済んでしまえばあとは手数料払って、重さや種類別ごとに清算は自動でやってくれる。城塞都市は法律がしっかりしてて、ちょろまかしたりもされないし信用できる」

「そうなんですか? こんな世界になってしまった今、法律がうまく機能しているとは思えないですけど。ここは、自分が口出しできることではないですね」


 遠回りをしたトラックはようやく巨大な赤黒い門の前に到着する。

 門の上にある櫓が城塞都市に近づくトラックの接近を感知し、門の周辺にあった8門の機関銃の銃口が動きだし車両を狙う。


『接近するトラック、停止せよ』


 スピーカーから低い男の声が聞こえ、レイショウの乗るトラックはもうから少し離れた場所で停車する。

 トラックが停車したことを確認すると、先ほどと同じ消防士とよく似た厚手の服で守られた兵士たちが武器を持ち箱型の車両を連れて壁の向こうから出てきた。


「何ですかあれ?」

「検査車両だ、奴らに傷を負わされていないかを調べる。うちの村と違ってここはきっちり調べるからな、男女別だから安心してくれ」


「それもまぁ、当然ですか」


 分厚い衣服をまとい手には大きな銃を持った兵士はトラックを囲むと話しかけてきた。


「二人か?」

「はい、後ろは積荷です」


「通行書は?」

「ここにある、確認してくれ」


 ダッシュボードからファイルに挟まった書類を見せる。


「後ろの荷物も確認させてもらう。その間二人には検査を受けてもらう、車両を降りろ」

「わかりました」


 二人は車両を降り案内に従い順番に箱型の車両に乗り込んでいく。

 そして順番に検査を終えて車両から二人が出てくると、トラックの荷台を確認し終わった兵士が口を開いた。


「確認は終わった、罪にも問題ない。町に入っていいぞ。中で身分証を受け取れ」

「どうも」


 重厚な扉は重たい音を立てて開き、レイショウたちの乗ったトラックは城塞都市の中へと入場する。

 門をくぐると開けた空間の一本道の通路がありまた門があり、通路の壁沿いには外と同じように機関銃が付いてた。


「……何ですかこれ」

「すごいだろ? ここは周囲の村で集めた金属で何十年も強化し続けてきたんだと」


「枡形虎口のようになっているんですね」

「何だそれ?」


「こうなると町の中が気になりますね、どうなっているのか」

「すぐに中に入れるさ。あの門の向こうが町だ」


 二人は身分証を受け取りそれを首にかけると門が開かれる。

 そして二つ目の門を潜り抜けそこに見える景色にジークルーンは戸惑う。

 そこには荒廃した廃墟の街とは対照的で近代的な街並みが広がっていた。


「ジークルーンがいた文明が壊れる前の風景ってのはこんな感じか?」

「……はい、並ぶ建物に変に統一性がありますが、昔見た見慣れた景色に近いです」


 辺りを見回し一定の間隔ごとにある、街灯に付く監視カメラや電光掲示板を見る。


「あのジークルーンと出会った廃墟も昔はこんな感じに人がいたのか?」

「はい、いましたね。もっと多くのお店と家が並び、公園は子供の声で賑わっていました」


 街中を走る電気自動車を見てジークルーンは首をかしげた。


「この街の中だけ、本当に自分がいたときの時代に近いです。でも100年たってどうしてここは維持できているのでしょう」

「どうしてって、ちゃんと整備してるからじゃないのか?」


「車を作る工場がないのにですか? それともこの街にだけ供給される車を作る工場があると? 私たちのようなアルケミストなら頭の中の記憶から部品だけでなく精密機器を一つから複数と好きなだけ作ることができますが、この街はどこか違和感があります」

「まぁとりあえず、売り払う鉄を置いてからだな」


 トラックは壁のそばにある小さな工場のような施設へと向かっていき、荷台に乗せられた鉄屑の山を下ろして近くの駐車場に停車する。

 工場はすぐに稼働を始め防塵マスクをかぶり厚手の手袋をつけた作業員たちが鉄の山の仕分けを始めた。


「後は終わったころに報酬を受け取って帰るだけさ。あの量だったら夕方前くらいかな?」

「そうですか、ならそれまで町の案内をお願いします」


「わかった、どこがいいか……まずは花屋か?」

「なぜです?」


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