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6

――――。


「…わかりました。“協力”させて下さい。」


斎藤の心は決まっていた。自分の気持ちをこれ以上抑えておくことに限界を感じていたことは確か。その上、青麗の校則に鬱屈していたということもまた確かなのだ。

まさに結び屋からの提案は願ったり叶ったりといったところだった。しかし、告白を実行するのは斎藤であり結び屋ではない。

手助けなどなくとも坂本にはいずれ告白していただろうし、その覚悟もあった。在学中にチャンスをくれたことには感謝するが、一方的に任せようなどという気持ちは毛頭ない。それはもう意地やプライドの部分だ。

故の“協力”である。


「OK。交渉成立だね。今後の計画のことは部活後に、でいいかな?」

「はい。」


掛けてある時計を見ると結構な時間が経ってしまっていた。急いで戻らなくてはならない。

斎藤が視聴覚室のドアに向かって歩き出そうと踵を返す。そのタイミングで最後にカエルはこう言った


「“結び屋からの依頼”を受けてくれてありがとう。」




部活後、斎藤は近藤から呼び出しが掛かった。

近藤はそこで結び屋のひとりであること、視聴覚室でのカエルの声は私であることを打ち明けると、最初は驚愕していた斎藤だったが、安心したと同時に納得し、笑みを浮かべながら今後のことを話し合うのだった。


「そんなに私わかりやすかったですか?」

「気付いていないのは俊一ぐらいなもんだよ。罪作りな奴だよねー。あいつも。」

「本当ですよ。でも鈴先輩、おそらく恋人になるって確証はどこにあるんですか?」

「うーん、とね…。感!あいつ絶対美園ちゃんのこと好きだって!」

「なんですかそれー。もう。」


――そうして目標としていた先輩と一緒に恋バナに花を咲かせる。

斎藤はこれだけでも結び屋に協力してよかったと思うのだった。




「臨時結び屋会議を始める。」


生徒会室にはいつもの5人のメンバーとプラスひとり、逆井ひばりが同席していた。

彼女自体は結び屋ではないが、関係者であることには違いない。この会議への参加ももちろん許されていた。


「で、今回は誰と誰をくっつけるつもりなのかしらぁ。」


開口一番逆井が発言する。

ストレートなセミロングヘアとインテリ風の四角い赤眼鏡、とぼけた様な口調が彼女の特徴だ。あとはメモ帳とペンを常日頃持ち歩いているところだろうか。


「それは鈴から説明する。」

「はいはーい。」


指名された近藤は今回の依頼内容について述べていく。


「なるほど。陸部内の子同士なのねぇ。」

「そそ、ぶっちゃけ言うとあたしたちが干渉しなくてもカップルにはなっていただろうけどね。」

「でしょうねぇ。あのふたりなら。」

「知っているのか?ひばり。」


既に見抜いていたと言わんばかりの返答に反応して会話に加わる佐久間。しかし、逆井相手にその質問は愚問だと、口に出してから気付いた。


「私を誰だと思っているのかしらぁ。逆井ひばりよ。青麗の内部のことなら知らないことはないと自負しているわぁ。今朝、あなたの靴箱に――。」

「わかった!わかった!!ごめんひばり。失言だった…。」

「またラブレターでも入っていたんですか?春臣君も隅に置けませんよね。」


佐久間が話題転換を図る前に、間髪入れず差し込んでくる相葉。


「でもいいことですよね。みんな結び屋の出現で、恋愛に対しオープンになってきているってことでしょうから。」

「こいつの場合それ以前からモテているけどね。ほんと外面“だけ”はいいから。」

「“だけ”は余計だ。」


佐久間は苦虫を噛み潰した様な表情で、自分の頬を突いていた舘川の指を振り払う。


「――話が脱線している。」

「烏丸の言う通りだ。戻すぞ…。まず、坂本はその斎藤って子のことをどう思っているんだ?」

「気にはなっているんじゃないかしらぁ。それが腐れ縁としてなのか恋愛感情なのかは置いといて。でも、他に想い人がいるとかいう話は聞かないわぁ。」

「鈴…。お前その状態で告白すれば付き合えるとか抜かしたのかよ…。」

「えー!だってあれは絶対好きだって。美園ちゃんとの会話に聞き耳たててると、そういうオーラがほら!節々に、ね!」


近藤の楽観的意見と根拠のない自信にため息を吐きつつ、佐久間は話を続ける。


「あとは校則に対して坂本がどこまで寛容的なのかって問題だな。」

「そこまではリサーチ不足だわぁ…。申し訳ないのだけれど。」

「いやいや…、お前の前でクライアントとターゲットの名前出したのはじめてだっていうのにそこまで知ってるだけヤベェよ…。」


はっきり言って逆井の持ってるデータと情報網は異常だ。対して親しくもない人物に対してもこの情報量。

逆井を頼もしく思うと同時に、恐怖を覚える佐久間であった。


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