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オダマキ

作者: いたか

毎日日付が回るまでサークル活動がある。土日だって朝から夜までずっとである。それでも部員から不満が出ず、みんな真面目にやっているのは、勝ちたいというただそれだけの理由だと思う。少なくとも私はそう。


「今日うち泊まってかない?」


大学の講義なんてそっちのけ。むしろ講義の時間は貴重な睡眠時間。大会を3ヶ月後に控えて、今私たちにとって欲していたのは卒業に必要な単位より大会での勝利だった。そんな講義が明日の午前中には入っていない。いや、もう今日か。


「明日午前講義ないよな?」


午前に講義がないから徹夜で朝まで活動すると言っていた部員もいた。私はすることがひと段落したし帰ることにした。深夜まで活動しているとさすがに疲れる。下宿先までの自転車10分が辛く感じられ、ちょうど同じタイミングで部室を出た車通学のこいつに家まで送ってほしいと頼んだ。


「そっちから言うの珍しいね。いいよ」


サークルに私情は持ち込みたくない。そういう考えとは裏腹に、私は同じサークルのこいつと付き合っている。もちろん周りには秘密。そんなに人数も多くないサークルだし。周りに気を使わせたり、からかわれたり、そんな部員たちの「感情」は大会を控えた時期のサークル活動には必要ないと思っているから。

だから休みの日にデートなんてものも行かない。サークルに迷惑がかかるから。2人で会うのは、専ら夕飯を一緒に学食で取るとか、お互いの講義の空き時間に図書館で課題の教え合いをするとか。しかし1番多いのは、今みたいに、サークル終わりにこいつの家に泊まりに行くことだ。


「コンビニ寄ってもいい?」


私の家の方向とは違う、自分の家の方向にハンドルを切って私に聞いてきた。


「いいけど、なんか買うの?」


「まぁ、うん。もうなくって」


私たちももう21だ。この「ない」が何を意味するのかはすぐに想像できた。

こいつの家にこうしてサークル終わりに行くことはたまにある。日付を回ってから部室を出て、こいつの家に泊まりに行って、やることなんて1つだ。お互いサークルでは重要な役を任されていて、毎日遅くまで活動して、昨日も朝の1限から講義があって、疲れていないわけがなかった。しかしその体力的な疲れを無視しても、睡眠欲より取りたい「欲」がお互いにあった。


「もう2時になるよ」


私はわざと聞いた。こんな時間、別に珍しいことではない。むしろサークル終わりにこいつの家に行くときは、だいたいこのくらいの時間だった。


「......いや?」


少し不安そうな顔をしたのをルームミラー越しに確認して、私と同じ気持ちなんだと再確認して口角が上がるのがわかった。


「今日まだ眠くないから、2回くらい大丈夫だよ」


話していたらコンビニについた。私は車で待機である。初めての時に買うためにコンビニに行くのをついて行ったら買いづらいと怒られたからである。横を向いて確認した彼の顔は、照れていてやりづらそうな、でもどこか嬉しそうだった。


「ちょっと待ってて」


時計が2時になった。今日の午前の講義はない。サークル活動はまた日付が回るまでになるだろうと思った。



恋愛とは二人で愚かになることだ


サークルに迷惑をかけていないから、愚かになっていても、大丈夫。

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