0:愚者 王子を幸福にした燕の加密列。
0:愚者 王子を幸福にした燕の加密列。
「…え? なんで? どうして帰っちゃうの?
ずっと僕と一緒に居てくれるって さっき 言ったよね?」
「あの… 私の勤務時間 17:00迄ですから 今日はもうおしまいなんです」
「嫌だよ… ねぇ 今日は僕の部屋に泊って行って?
夜になると ココ 怖いんだよ… オバケが出るんだよ…」
「ビア様、私 家に子供が居りますので…
少しでも 子供と一緒の時間を作ってあげたいので…」
「やっぱり 君も 時間制限付きなんだ…
そんな 嘘吐きな愛情なんか 要らない! もう 顔も見たくない!
…やだ ごめん 今のは嘘だから… ねぇ 誰か! 朝迄ココに居て?
居なくならないで! 僕を独りにしないで!!!」
ビア様の寝室にて
「何処にも行かない、お前の側に居る!
俺の居場所は ココにしか無いぞ? 居なくなり様が無いぞ?」
「…ダイキリ君?」
「また 例の夢か… 最近は落ち着いてたのにな
大丈夫か? 取り敢えず 水飲めよ」
「ありがと… ごめん 起こしちゃったね」
「俺が起こしちまう事だって あるじゃん こんなの お相子だぜ?」
「君 朝 早いでしょ? 寝なきゃダメじゃない」
「寝かしてくんなかったのは 何処のどいつだ? お前 盛り過ぎ!
明日 シーツ交換して貰えよ、あちこち汚れてっからな」
「あー やっぱり 頑張らせ過ぎちゃったかな… 君がかわいいから ついね…」
「…落ち着いたか? その調子なら 大丈夫そうだな」
「君がキスしてくれたら 早く立ち直れる気がする」
「んっ… まったく ワガママな王子様だな
もっと色々な人間に甘えろよ 俺だけでなくってさぁ…」
「…アレ? お前 いつもと違う匂いさせてんな
今日は“アレ” 着けてねぇの?」
「アレって ブドワール? 寝る時迄は着けないよ
ブドワールは “僕がステキな王子様を演じる為の香水”だからね
僕が素の僕で居られる時に あんな偽物 着けたくないよ」
「そうだな アレ お前に似合ってねぇよ
すっげぇ無理して背伸びしてる感じがする…
ていうか 良いのか? 俺に素のお前を晒して 平気なのか?」
「僕が、君に見せたいんだよ 素の僕をね
君なら どんな情けない僕でも 笑って抱き締めてくれるだろう?」
「お前は立派だよ すっげぇ頑張ってんじゃん?
…あぁ だからなのか お前も 誰にも素の自分を晒せなかったんだな
一緒だな 俺達」
「僕はね 深海魚なんだよ」
「…何? また何かの喩え話?」
「うん 喩え話
僕は 冷たくて暗い 海の底でしか 生きて行けないんだ
酸素ボンベとか フル装備で会いに来てくれる人も居たけど でも そういう人達って
お仕事で仕方無く 面倒臭い事を引き受けてくれているだけだったんだ
だから 酸素が無くなれば 海の上へ帰ってしまう
基本的に 僕は ずっと独りぼっちなんだって 思ってたんだよね」
「…思ってた? 過去形?」
「君は 多分 キレイな水が流れている 穏やかな小川に住んでる蟹カニだね
そんな君が 何故か 僕が住む海底迄 来てくれたんだよ
そして 夜空には月があって 星があって 本当は少しも寂しくないんだって
僕に教えてくれたんだよ 世界はとても優しいって事をね」
「そうか? 俺が蟹だったら ずっと潜ってるのは不可能な筈なんだけどな」
「君が 海底の僕に気付いてくれた 君が 僕に世界を教えてくれた
だから 君には 僕の全てを晒け出せるんだよ」
「…あ 思い出した!
なぁ 今から お茶淹れるけど 飲んでくんねぇか?
夜中だから 砂糖もミルクも無しだけど ストレートでも大丈夫だから」
「え? お茶? …まぁ 淹れてくれるなら飲むけど …お茶?」
「おぅ ちょっと待っててくれ 取って来る!」
「えぇと コレって… 紅茶とは違うお茶? 日本茶?」
「まぁ ハーブティの一種じゃね? 日本茶ではねぇな 多分 産地はドイツだと思う」
「ドイツ? んー 何か リンゴみたいな香りだけど… あぁ でも 知ってる気がする
いただきまーす… アレ? 知ってる! 知らないけど知ってるよ コレ」
「あー やっぱ お前が詳しいのって 紅茶だけなんだな
どうだ? 美味いだろ?」
「うん 何かホッとするね… 甘くておいしい 良い香り で コレは何?
知ってる気がするんだけど 降参 分からない 教えてよ」
「カモミール。
お前が今 着けてる香水 コレの香りだろ? ピンと来た!
ジャーマンカモミールは 東の国では カミツレって名前の薬草だな」
「カモミールティかぁ… よく気が付いたね
今 僕が着けてるのはね コレ かわいいボトルでしょ?」
「…ブルガリ? カミカゼの奴と似てるけど 全然違うな」
「ブルガリ プチママン オードカモミール
ダイキリ君 よく分かったね コレ カモミールティの成分 入ってるんだよ」
「へー あー こっちの方がお前に似合ってるよ
普段から コレ1本で良いんじゃね?
って コレで王子様を演じるのは ちょっと無理っぽいな」
「… あぁ 僕は 君に恋をした “幸福の王子”だね 今 気付いたよ
君は 僕に 本当の幸せを教えてくれた 小さなツバメ君だったんだ!」
「『幸福の王子』? オスカー・ワイルドの?」
「僕の両目には サファイアが嵌め込まれていたから 世界の本当の美しさを
ずっと知らずに生きて来たんだよ 君がどこかに捨てて来てくれる迄は。
剣に嵌ったルビーも 全身を覆っていた黄金も 君が剥ぎ取ってくれたから
君が見ている美しい世界と 同じものが 今の僕には 見えるんだよ
君の前では プライドも何も要らない、全身を覆う黄金なんて 邪魔で仕方なかったよ
僕の目にサファイアが埋まっていて 全身が黄金で覆われていると思っている人達の
為に 昼間はブドワールを纏っているけどね
本当は鉛で出来ている 灰色のみすぼらしい僕には 小さなツバメ君が居てくれれば
それで 充分に幸福だよ ね ダイキリ君?」
「アレって そういう話じゃなかった気がするんだけど」
「うん だから コレは僕の喩え話
僕が 君の為に 暖かい温室を作ってあげる だから エジプトに行かないで?
ずっと僕の側に居て、小さなツバメ君
君のキスは さよならのキスではないんだろう?
僕の鉛の心臓が割れてしまう日迄 僕が死の国へ行く日迄 僕の唇にキスをして?」
「んっ… 本当に ワガママな王子様だな…
俺は何処にも行かない お前の側に居てやるよ」
0:愚者 ビア様の7つ道具
ウィッタードのアールグレイ ボルトレッティのガラスペン ビスコンテのインク
ブルガリプチママン リージュのオルゴール チェンバロ フレックの短鞭
ビア・フール Beer Fool
本名:ビア・モーリス・ヴォルフガンク・フィロントタロン
Beer Morris Wolfgang Firrontotallon
名前のモデル:ヴォルフガンク・フォン・トリップス(←F1レーサー)
3月11日生まれ 魚座 A型 9歳 フィロントタロン(←現在のシーランド公国)出身
ジャスティス:イエローチャリオット(←バイク) 小アルカナ:バイヨネット・ダイキリ(←ワンドの7)
テーマカラー:白・銀(←銀のコインに白文字でゼロ)
能力:愚者(正位置) ⇒ 自由・型にはまらない・無邪気・純粋・天真爛漫・可能性・発想力・天才
⇒ 覚醒回数無制限・ラスボス
口上:「我生まれ 我ここに立ち そして我歩む、ビア・フール。」
モンチョゴメリーズ 及びグリフォンハンター総帥
プロチェンバロニスト
もう少し本気を出せばビリヤードもプロとしてやって行けるレベル
関係の深いキャラ:
・ダイキリ(←お互いの苦しみを理解し合っている)
・ピナコラーダ(←最愛の人)
・カンパリ(←妄信的に崇拝されていて煩わしいと思っている)
・フーガ(←主人公)
カミツレ、ジャーマンカモミール
日本には江戸時代初期に オランダから 薬草として伝わり
鳥取や岡山で栽培される様になりました。
現在では その香りに鎮静効果があるとされ アロマテラピーで利用されています。
また 一緒に植えた他の花を元気にする効果があるので お花のお医者さんとも呼ばれ
枯れた花を土に混ぜても 同様の効果があります。
ドイツでは 子供の万能薬とされ 民間療法ですが 重宝されています。
そして 高温多湿に弱く 余裕で越冬し 夏には枯れます(←苦笑)。
ヴィヴィアン・ウエストウッド ブドワール edp
パウダリーでスパイシーなフローラル、かなり個性的です。
王子様という感じも する様な… 気難しい香りではあります。
ブルガリ プチママン オードカモミール edt
ベビーパウダーとカモミールの 甘くてほんわり優しい香りです。
ママとベビーの為の香り というコンセプトで 初心者向けでもあります。