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第81話 “アリス・エステリア”

めっちゃ展開早いです、ご注意をば。

 取り敢えず部屋の雰囲気を落ち着かせてから、再度話を切り出す。


「それで、教皇の方はどうするんだ? 封印されてたとか言ってたけど……封印は解けてるんだろ?」

「うむ、まだ完璧にとはいかないがの。お主のは儂が直々に解いたが、あやつにはまだ封印はかかっておる状態じゃ。以前ほどの力はでまい」

「そうか」


 教皇……つまり“幻惑”の魔王をどうするか、ということだが。

 取り敢えず、一端はここで切り上げることになった、魔王(クレセリオット)は今回の悪魔の襲撃の事後処理で忙しいらしいし、あいつがいないことには詳細も良く分からないからな、バハムート達も俺と一緒に1000年ほど封印されていたから詳しい事情については知らないらしい、教皇の詳細についてはいろいろと教えてもらったが。

 魔王(クレセリオット)が事後処理で去る前に、俺に一冊の本を手渡してきた。


「お主にかけた封印魔法を作るときに参考にしたものじゃ、お主なら使いこなすことも出来るじゃろう」


 パラパラとめくってみると、それは魔導書のようだった。しかし魔法が載っている訳ではなく……なんというか、辞典か?


「それにはアラン語が出来る以前の言語(・・・・・・・・)について書かれておる。儂も詳しくは知らぬがアラン語はその言語を参考に作られたらしいのじゃ」

「ほぉ」

「また時間が出来たときに呼んでみると良い、今後の役に立つかも知れぬ」

「分かった、感謝するよ」

「うむ!」


 俺がそう礼を言うと、魔王(クレセリオット)は満足したように頷き、今度こそ去っていった。またすぐに来るんだがな。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「なんか……凄い人――竜、天使、悪魔、魔族――たちだね」

「そうか? 俺から見ればクレアも同じようなもんだぞ」

「いやぁ……流石にそれはないと思うよ……?」

「そうか?」


 あれから数日が経った、俺はクレアと何でもない話しをしながら孤児院への帰り道をブラブラと歩いている。学院は建物自体が結局半壊しているらしく、しばらくは休学になってしまった。その為、今日は暇だったので一日中街中をブラブラと歩き回っていたわけだ。

 街中で思い出したが、このノクタスの街で誰かと戦うようなことを言っていたハーメルンの姿をそういえば見ていないな、帰ったのか? 一言くらい声をかけてくれれば良かったんだがな、別に何もする気はないけどな。


「そういえば、アリスってクレセリアちゃんに難しそうな本貰ってたよね? どうだったの?」

「ん? アレか、まぁいろいろと参考にはさせてもらったが……言葉の一つ一つのルーンのクセが強すぎて扱いきれないな、慣れればどうってことないんだろうが……どうにも俺には合わないみたいだ。そうだな、アラン語の魔法の足りない部分を補完するくらいなら出来そうな気はするかな。というかクレア、一応はこの国のトップ(・・・・・・・)だぞ、魔王(クレセリオット)は、クレセリアちゃんとかお前……」

「それはクレセリアちゃんが可愛いから……」

「俺の中でのあいつは紅い髪のおっさんだからな……違和感しかない」


 と、いうか、魔王(クレセリオット)はなんでも、この国、ティリス王国のトップ、つまりは王らしい。知らなかった俺は再度、バハムートら3名から呆れた視線を向けられた。仕方ないじゃないか、あの頃の俺は魔族のことを羊の獣人かなにかだと思ってたんだからな。


「おっさんて……それこそクレセリアちゃんに言ったら泣いちゃうよ?」

「違和感しかないんだよなぁ」



「――随分と楽しそうに話してるじゃないか」



「ッ!!??」

「えっ!?」


 どこからともなく聞こえた声に、俺とクレアが同時に反応する。と、同時に周囲がおかしいことにも気付く。


「クキキキ……油断したな、アリス」

「チッ……全くだ」

「えっ? えっ!?」


 いつからか、俺の目の前には……教皇が立っていた。しかし俺の見知った姿ではなく、こめかみあたりから、短い角が気色悪いほど無数に生えている。

 気づけば俺は、酷く開けた場所に立っていた。転移魔法か……教皇の封印は解けていない筈、いや……解けていたとしてもこの距離は一人じゃ無理がある。この場所、開けた場所自体には見覚えがないが、目の前でケタケタと笑っている教皇の背後に見える風化した建物、あれは……聖十字教の本部だ。たしか本部は大陸から少しはなれた離島の上に立っていたはず、1000年経って殆ど崩れ去っているが、ギリギリ見分けが付くくらいには残っている。


「んん? あの距離をどうやって転移させたのか疑問に思っているのか? 仕方がない、タネ明かしをしてやろう! 君の周囲を見たまへ!」


 教皇への警戒を忘れずに、“倉庫”から雪華を取り出してから、チラリと俺の周囲を見渡す、するとそこには多量の灰があることが分かった。


「貴様……悪魔を犠牲にしたのか」

「クキキ……あの程度の魔法を使って死ぬような悪魔は悪魔ですらない、ただの道具、いやそれ以下だ。それに……アレらは自ら進んで身を捧げたのだ、見上げた忠誠心だとは思わんかね?」

「思わねぇよ」


 “幻惑”の異名を持つ魔王だ、おそらく冥界で適当に悪魔を洗脳して連れてきたんだろう、それを忠誠心と呼ぶのか……笑えないな。


「そういえば、どうやら不必要なものも一緒に転移させてしまったようだね」


 教皇はクレアを見ながらそういった、クレアは教皇のその言葉に反応してそちらを向こうとするが俺はそんなクレアの視線を腕で遮った。あいつらに聞いた話では、耐性がないやつは視線を合わせるだけで洗脳されるらしいからな。


「キハハハ! そうか、今度はその娘が君のお気に入りか!!」

「なに?」

「あっ……」


 教皇が嬉しそうにそう言った直後、クレアの身体が一瞬、ビクッと反応した。俺の身体中から嫌な汗が吹き出る。


「キハハハハ!!! さぁ、こっちに来たまへ!!」

「……ハイ、マスター」


 クレアは無機質な声でそう言うと、俺の背後から素早く、教皇の近くにまで移動した。その瞳には光が灯っていない。


「クレア……?」

「キハハハハハ!! 君ィ、今いい顔してるよぉ!!」

「嘘だろ……? そうだよな……!?」


 クレアが俺の問いかけに反応することは―――


 パチン。


 いや……いまクレア、ウインクしたぞ、ちょっと笑ってるし……え? 待ってどういうことだ……動揺が隠せないんだが……


「キハハハハ!! 動揺してるねぇ!!」


 その通りだよ。

 教皇の少し前にいるクレアの表情は読み取れないのだろう、目に光は灯っていないが、口角は少しだけ上がっているし、それに続けて、クレアは小さく口を動かした。


 ――任せて。


 そんなことを言っている気がした。

 クレアがそう言うなら、任せよう。何をどうするかはしらないが……大体は予想が付く。俺は魔法を使う準備をする。


「キハハハ!! 魔法を使う気だね!? そうはさせないよ、さぁ、下僕……攻撃するんだ!」


 俺が魔法で攻撃をするのかと思っている教皇は、操っていると思っているクレアにそう命令した。そしてクレアの口元が、さらに上がった。


「やだ」

「は?」



 短くそういうと同時に、キョトンとする教皇目掛けて、目に光が戻ったクレアは黒い塊の様なものを放った、ショットガンのように拡散しながら教皇目掛けて飛ぶその黒い塊は、教皇が使用した魔法を壁をも容易く打ち破って、教皇本体にダメージを与えた。“無属性”魔法……だっけ? 話には聞いていたが……ヤバイな、アレ。


「アリス、今だよ!!」

「全く……俺の予想が的中して良かったよ!!」


 クレアは絶対に反撃する、俺はクレアが笑みを浮かべた瞬間にそう確信していた。おそらくそれが話だけは聞いていた例の“無属性”の魔法だと言うことも……それを使えば教皇の動きがある程度止まるだろうということも……最後のはちょっと期待は薄めだったが……それ以上の効果を示してくれた。


「ぐああああああああああああああああ!!!!」


 顔を押さえて絶叫する教皇に向かって、俺は両の手のひらを向け、詠唱を始める。


『縄を解け、枷を壊せ、牢を捻じ曲げ錠を開けろ、我が望むは自由なり――』


 さぁ……ここからは、本当に……ぶっつけ本番の賭けだ。


『【オープンロック】!!!』


 魔法が発動すると同時に、魔力を持たないルシフェルを除く、バハムート、ディアボロス分の、契約によって増えた俺の魔力がごっそりと持っていかれる。独自魔法【オープンロック】はありとあらゆる封印や結界を解く力をもつが、その代償はやはり馬鹿みたいな魔力、その量は解く封印や結界によって変わってくるが……ほぼ全部か……

 一方、教皇の方は苦痛から開放されたのか肩で息をしながらこちらを睨みつけていたが、そこにさらに光る輪っかが教皇を取り囲み、次の瞬間には教皇は眩い光に包まれた。

 そして、再度絶叫をあげる。


「クレア、移動するぞ」

「う、うん」


 俺は今のうちにと、教皇から少し離れた場所に移動する。

 しかし遊んでいる暇はない、このまま行くと教皇は完全復活して俺は死ぬ羽目になる。

 俺は再度、詠唱を始める……いや、これは詠唱というほど高等なものじゃないか。例えるなら、そう……独り言だ。

 ブツブツと、何かを呟く俺は何も知らない人が見たら異常者扱いを受けるかもしれない。その実、俺はひたすらに、時間、空間、生や死、そして転生といったような意味を持つ、または連想させる言葉を呟いていた。その中で使えると思った言葉のルーンには魔力をコメ、俺の周囲にまるでパズルのピースのように散りばめていく。そして一通り完成したあと……俺は魔王(クレセリオット)からもらったあの本の内容を思い出す。


「確か……と……か……あと……も……」


 アラン語以前の言語というだけあって、あと少し足りない、という部分を補うことが出来た。簡単にいうなら……ひらがなとカタカナみたいなものだ。


「ぐあああああああああああああああ!!!!」


 そして、教皇の封印が完全に解けた、まだ絶叫しているが。

 と同時に俺の中で何か失っていたようなものを取り戻したかのような……不思議な感触に襲われる。おそらくだが……使えなかった魔眼やらの類が戻ってきたのだろう。だがしかし、いま重要なのはそこではなく、教皇の封印が解けたことで、俺の身体を構築するはずだった大量の俺の魔力だ。

 魔力眼を通してみると、教皇の周りには非常に高密度の魔力が渦を巻いているのがよくわかった、そしてそれはすぐに俺のもとへと戻ってくるのだろう。まぁ元々俺の魔力だしな。

 しかしながら、今の状態では魔力を制御することはできない、あれは俺の魔力になるはずの元・俺の魔力だ。まぁ何が言いたいかというと、あれはおそらく、一度俺の体内に戻さないと自由に動かせないのだろう。そしてあの魔力の量、俺の魔力量を遥かに上回るあの量の魔力をバカ正直に受け止めると、魔力量の現界を超えて、俺はまた以前、マナ変換を使ったときのように……いや、今度は跡形もなく吹き飛ぶことだろう。

 だからこそ、俺はここで賭けにでた。まずは先ほどの憶測が当たるかどうか、俺の魔力が出て、それが使えるかどうかがまず第1の賭け、そして次は……その魔力を使って……構想は練っていたが、ほぼ即興で作った新しい魔法(・・・・・)が発動するかどうかだ。新しい魔法を作るには、ルーンの現界まで魔力を込めないといけない、果たしてそれがあの元・俺の魔力で足りるのかどうかだな。残念ながら、今俺の“ホーム”のなかにはバハムーt-たちはいない、その為あいつらからの直接的な魔力の供給は受けることは出来ない。イチかバチかだ。


 俺は両手を前に突き出す、そしてその両手から、元・俺の魔力がどんどんと流れ込んでくる。俺はその魔力を必死で周囲のルーンに送り続けた。送り続けながらも微調整を繰り返し、魔力の移動に耐え切れなかったのか、腕の血管が切れたみたいだが、それでもひたすらに送り続けた。

 クレアの声援も……俺は必死すぎて何を言っているのかよく聞こえなかったが……それでも大きな支えにはなった。


「キハハ……キハハハハハ……」


 魔力が残りあと少しと言ったところで、教皇が高笑いを始めた。


「何を使うかと思えば、私の封印もといてくれていたのですか!! キハハハハ!!!! 力が……力がみなぎってきますよ!!!」


 どうやら、封印が解けてもしばらく絶叫を続けていたのは、自分の力が戻ってきた反動か? いや、興味ないけどな。


「キハハハ……! 何をしているかは知りませんが、もう無駄ですよ、私は力を――」

「ごちゃごちゃうるせぇよ」

「何です?」


 丁度だ、ホントに丁度、運命だな。


「いまから一世一代の勝負なんだ、少し黙ってろ」


 俺はそして、魔法名を唱えた。


「【輪廻転生】」


 魔法名を唱えると同時に、魔法が発動する。賭けにはどうやら勝ったようだ。


「な、なんだ!?」


 俺の周囲を光が包む。

 魔法の衝撃からか、大気が震えていた。


 そして次、俺の視界が開けたときには、いつもよりも視線の位置が高くなっていた。


「服装も変わるのか、良かった。あのサイズだとはち切れるぞ、しかも女性用下着つけてたし、変態にはなりたくねぇな」

「な……!!」

「よぉ、教皇。決着を付けにきたぞ」


 いつもの高い声ではなく、低い声(・・・)だった。視界にチラチラと映る髪の色は銀ではなく、()


「時間がないんだ、1分で終わらせるぞ」


 俺はそう言いながら、教皇に人差指を突きつけた。

はいどうも、作者の僕です。

ここで特に重大でもない発表、次回最終回です!!いやぁ、やっとですね、残りはラスボスのエピローグなんで今日中には挙げられるかなと思います、もしくは明日かな?

それでは、最終話でまたお会いしましょう!

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