第78話 決着!
そ、総合評価が5000pt突破した……!?
う、うおーマジかー!
皆様有難うございます! 今後ともよろしくお願いします!
【フライ】を使い、気配の感じる方向に進んでしばらく。瓦礫が片付けられ、広場のようになった場所の中心にそいつはいた。
逆だった金髪の髪の毛の青年、のように見える悪魔、ベルセルク。額からは一本の鋭い刃物のような角を伸ばし、赤いラインが2本ほど入った黒いバスターソードほどの剣を正面に突き刺して目を瞑り、堂々と構えている。
俺はそれを見てベルセルクの強さを再認識する。全く隙がない、下手に不意打ちをかましてもカウンターを喰らうだけだろう。まぁ……あいつは俺が“勇者”と呼ばれていたことをしっているみたいだし、そんなことをしないと知ったうえでそうしているのかもしれないが……どっちにしろ、俺は目立ったアクションを起こすことなく、“倉庫”から神剣・雪華を取り出してベルセルクの目の前に降り立った。
俺が降り立つと同時にベルセルクはスゥ……と目をゆっくり開いた。
「よぅ、来たな」
それから、軽い笑みを浮かべてそう言った。
「逃げるとでも思ったか?」
「まさか」
俺がそう返すと、クククと笑ってみせた。その間も、一瞬たりとも隙を見せない。
先ほど、初めてコイツと出会ったときに思った“勝目が無い”という判断は未だに覆ることはない。俺がこの身体になって数年間生き残ってこれたのは、この世界全体がもれなく衰退していたのと、俺を襲った刺客がどれも今の俺でも対応できたからこそだ。今回は、明らかに相手がオーバースペックだろう。
まぁ、“勝目が無い”だけで負けるとは言っていないがな。
「ふん……雑談交わす為に来たんじゃないんだろう?」
「それもそうだな、じゃあ早速……始めようぜ」
そう言うと同時にベルセルクの身体を黒い霧が覆った。俺も身体に反動が残らない程度にゼクトオーラを纏わせておく。
「……舐めてんのか?」
そう聞こえた瞬間、俺は反射的にオーラの出力を上げていた。そして次に来たのは鈍い衝撃、ベルセルクの右足による強烈な回し蹴りだった。
ゼクトオーラの出力を上げたのが幸いしたのか、俺は少し飛ぶ程度に収まったが……ベルセルクの右足を受けた左腕の関節は2つに増えていた、否……肘より下がポッキリと折れていた。
「本気でやらねぇと勝負にもなんねぇぞ?」
「ぐっ……! そうみたいだな……」
俺は取り敢えず折れた腕を【キュアー】で治しておく。治るときにバキボキよ豪快な音を立て、同時に酷い痛みを伴いながらも元の腕の形に戻っていった。
「へぇ……やるじゃん」
ベルセルクはそんな俺の魔法を見て関心したようにそう呟いた。
なにをどうやっても隙を作らないのなら……強制的に作ってもらうしかないか……
「10分だ」
「あ?」
「俺が今の全力で動ける予想の時間だ」
「……なるほどねぇ」
俺がそう宣言すると、ベルセルクは剣を構え、黒い霧の量を一層多くした。その姿はさながら鎧を纏っているようだ。
しかし、俺も負けてはいられない。俺はあの事件を全て思いだす、俺の記憶能力を存分に使って過去の心的外傷を呼び起こす。そして俺の身体を、先ほどよりも一層にドスの効いた赤黒いオーラが纏った。
「それが噂の異色のオーラか……クク、楽しめそう――だっ!?」
俺が纏うオーラの色が珍しかったのか、まじまじと観察して感想まで述べるベルセルクの顔を、俺の右の拳が狙った。結果、受け止められたが。
「っぶねぇ……それがお前の本気か?」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ」
全力を出してみて初めて思うが、やっぱり足りない。これより出力は上がらないし、上げられない。本気を出そうにも、出せない。
しかしこれで今はどうにかするしかない、俺は雪華にもゼクトオーラを纏わせる。
「時間がねぇんだ、手っ取り早く終わらせる」
「……いいぜ、その顔」
ベルセルクが獰猛な笑みを浮かべた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
外見からすれば、俺の方が有利に見えるだろうか。
ベルセルクは身体中あちこちに擦り傷を作り、着ている衣服もボロボロになっている。対する俺は数箇所ほど擦り傷を作ってはいるがほとんど無傷……のように見える、ただ、戦闘が開始された当初、6つ付いていた指輪は既に仕様可能なものは1つにまで減っている。
戦ってみて分かったがベルセルクは基本、防御をしない、しなくてもいいからだ。あいつの固有の魔法は恐らく身体能力強化の類だとは思うが、それにしても異様に硬い。戦闘の過程で余計なものに雪華の刃が当たるが、それらは豆腐のように容易く斬れているのに対して、ベルセルクは掠り傷が付く程度、しかもその傷は悪魔特有の高い自己治癒能力によってすぐに治ってしまう。何度か刺さったこともあったがその時は魔法で治された。
戦闘と支援を一手に担うやつほど面倒な奴はいない……なんて昔言われたことがあったが……まさにそうだな。
「というか、お前女だったんだな」
「いまっ……さら、かぁ!」
ベルセルクが澄ました顔で打ち合う俺にそう告げる。
戦闘が始まって何分が経っただろうか、体感時間だけで言えば数時間は立っているように思える。始めのほうは俺もアイツも同レベルの戦闘を繰り広げていたように感じるが、いまは俺のほうがバテてしまい、その均衡は崩れ去った。
オーラは身体能力を底上げしてくれるが体力だけは増えない、だからこそ昔の前衛やオーラを使う奴らは筋力よりも体力作りに専念していた。俺も出来るだけのことはしたつもりだったが甘かったみたいだ、もはや【バイタルアップ】の回復も追いつかない、体力の回復とはいっても即時回復じゃないし、その回復量も本来は安静にしてこそだ、動き回っている状態で使っても本来の効果は出にくい。
さらには俺も無傷というわけにはいかないため、ある程度の傷を食らうと【キュアー】で回復させたりするし、補助的に魔法を使用したりしていると魔力がガンガンと減っていった。
「がはっ!」
「こんなもんかぁ? 俺が聞いた話と随分違うぞ」
遂には俺は首根っこを掴まれて中釣りになってしまった。首を締める力が強くなるにつれて呼吸もしづらくなり、意識に靄がかかっていくような感じがした。
「く……っそ……がぁ!」
ヤケになって雪華をベルセルクに向けて切りつけてみるが、ベルセルクは冷静に受け止めて、雪華は弾き飛ばした。
「こんな状態になってもまだ戦おうとするところは、俺が戦ってきたやつらの中でもトップだぜ、勇者ちゃん」
遂にベルセルクは俺のことはちゃん付けで呼び始めた、既に勝敗が決まったかのような言い方だな。
……まぁ、ほとんど決まったようなものだが。
「だが……これじゃあ勝ったとは言えんよなぁ」
ベルセルクは何を思ったのか、俺が意識を飛ばさない程度に首の力を緩めてそう呟いた。
「お前はまだ負けを認めていないし、そんな奴に勝っても本当の意味に勝ったとは言えねぇよなぁ?」
そしてベルセルクは俺と視線を交わせた。
「お前女だったよなぁ……? クク、女を従わせる手段なんざ一つしかねぇよなぁ!?」
ベルセルクが何を言いたいのかは……理解できた。
「下……衆が……!」
「クハハハハハハハハ!!! 良いぜその顔よぉ! 今からその顔を絶望に染めてから俺の事しか考えられねぇようにしてやんよ!」
そう言うとベルセルクは俺の首を掴んだまま地面に叩きつけ、既にボロボロだったが俺の服を破り捨てた。
「っけ、幼児みてぇな身体だな」
ふつふつと屈辱と怒りの感情がこみ上げてくるがもう腕すら満足に動かせない俺はどうすることもなかった。
ただ……残った俺の下着を脱がそうと手を伸ばす時に言う言葉さえ無ければ……
「クク……そういえばお前、過去に同じような目にあってるんだっけか?」
恐らく、ベルセルクが言いたいことは別のことなのだろうが。何を言いたいのかは理解できた。
アンナのことだろう、国ごと潰した筈だが……どこから仕入れてきたのかはしらないが。
「てめぇらは……ほんっとに、人のトラウマを呼び起こすのが上手いな」
「は?」
あっけにとられたベルセルク、その身体は宙を舞い、鮮血が飛び散った。
俺の右の肘より下を、オーラが槍のように纏わり、それがベルセルクの腹部を突き刺していた。
反動で赤黒いオーラの槍からベルセルクの体が抜けた。俺は追撃をかけようとしたが、しかし―――
「あ…………」
ブシュという嫌な音とともにオーラは霧散し、俺の体は地面の上に崩れた。
掠れた視界にベルセルクが映るが、まだ死んではいないようだった。もうひと押し……といったくらいまでの傷は負っているみたいだったが。
「な、んだ今のは……これがお前の実力ってことか……? いや……でもお前はもう動けねぇ、さっきのが最後の手札だったみたいだな。俺はまだ動ける、俺の勝ちだ」
ベルセルクがそう高らかに宣言した。
もはや使える指輪も残っていないし、俺自身の魔力も、バハムートからの供給分も使い切っていた。
それでも諦めまいとギシギシと嫌な音をたて、激痛を伴いながらも、俺は体を動かし、ベルセルクを睨みつける。
「っ! ……お前、まだ動くのか」
「死んで……たまるかよ……!」
「……やっぱりお前は、危険だ」
ベルセルクは顔を強ばらせると自前の剣を天高く振り上げた。
「さっきのは無しにしてくれ、俺の悪い癖だ。お前は、俺の剣でカタを付ける」
そういうと、ベルセルクは剣を振り下ろ―――さない?
「アリス!!」
聞きなれた声が聞こえた……クレアか?
ベルセルクは、俺に振り下ろされるはずだった剣で何かを防いでいた、一応……魔法みたいだが。
「ぐ……くそ、んだこりゃぁ!?」
傷を負っているとはいえ、魔王に対して魔法だけでここまで……何かあったみたいだな。
しかしそれよりも重大な事が一つ。
「隙有り」
「ガハッ……!?」
未知の魔法を防ぎきったベルセルクの胸には、光輝く短剣が刺さっていた。
独自魔法【ディバインインフェルノ】、対悪魔用の特効魔法、デメリットはその効果範囲の短さ、相手に刺されば短剣ほどの長さに伸びるが、発動させた時には15センチほどの長さにしかならない。ただし、一度突き刺されば、大抵の悪魔は即死する。
「お、お前……既に魔力は空だった筈だぞ……!」
驚愕に染まった顔でベルセルクはそう言った。それに対しては俺は自嘲の笑みを浮かべてネタバラシをした。
「この世界には……マナって言う魔力があるだろう?」
「まさか……マナ変換か!? お前、死ぬ気か!?」
マナ変換。大気中に漂う魔力、マナを体内に取り込んで強制的に自らの魔力として扱う禁忌された技。なぜ禁忌されているのか、それは簡単だ……使えば死ぬからだ。そもそも使える奴じたい少ないこの技だが、マナを体内に取り込むと、体が拒絶反応を起こして体内で魔力が暴走して血が逆流、体中から血を吹き出す。以前マリアが瘴気に当てられたときの症状は、これを軽に軽くしたものに似ているらしい……
「ぐあああああああああああ!!!!」
ベルセルクは俺から離れると、断末魔の叫びを上げながらそこらの家屋を壊しながら暴れまわり、そして……その叫び声を聞こえなくなった。
俺はクレアの方を見た、先ほどのマナ変換によって応急処置程度だが【キュアー】をかけておいたのでなんとか2本の足で立てている。
クレアは安堵したような、ホッとしたような……そんな顔を浮かべていた。
「……」
もはや口から声が出なかったが、クレアには伝わっただろうか。
世界が赤で染まった。
終わりそう、もう……終わりそう。出来れば最後は連続投稿とかしてみたい作者です。
うーん、最後はこう……スパパっと決めたいですしね、出来ればそうしたいんですが……最近目が痛くて執筆するのがつらたんです。
がんばるぞい!
さて、次回も一応4日後になりますが、ストックは貯めていく予定です。