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本気を出さない勇者さま  作者: 霊雨
第6章
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第73話 VSクレア

今更ですが予選の分け方の名称が「グループ」から「ブロック」に変わってます。

そして申し訳ないんですが、ホントなら、レイザック戦、アイン戦、リューク戦、そして貴族(笑)ことダント戦もあったんですが……カットで!

「ふふふ……遂に、だよ、アリス」

「嬉しそうだな……」


 俺から少し離れたところに佇むクレアは、嬉しそうにはにかみながら俺にそう言ってきた。なにがそんなに嬉しいのかは俺には良く分からないが。


 これから行われるのは“オール”の決勝戦。ここに来るまでに俺は、レイザック、アイン、そしてリュークと試合をしてきた。レイザックとアインはともかく、リュークはわりと危なかった、オーラもまとっていないのにあの身体能力と反射神経は反則級だと思う、まぁ勝ったがな。

 試合が終わったあと、アインとテオと一緒にいるところを見つけたのだが、遠い目をしながら「あいつは……ダメだろ」と言っていたのを聞いたときは何故か申し訳ない気分になった。すまんな。


 あぁ、それと“マルチ”の決勝で戦ったあの貴族なんだが、騎士に連れて行かれたあとに使ったクスリのルートなどが調べられ、あいつの家がそのクスリの販売に裏で手を回していたのが判明したらしい、その結果、あいつの実家は取り潰し処分になったらしい。

 確か子爵だったか? いかに階級が低かろうが貴族は貴族、そんな簡単に取り潰しが出来るのかとも思ったが、この国は君主絶対主義、少し違うらしいが絶対王政みたいなものらしく今回はその王が直々に貴族を取り潰したらしい。まぁ絶対王政とは言いつつも、俺が知っているような失敗はしていないらしいが……どうやら愚王ではないらしい。


 それは一先置いといて、まずは目の前のことに集中しようか。

 去年、“ソロ”で俺とクレアがやったときのように今回も条件がある。条件とは去年と同じく古代魔法を使わないということだった、しかし今回は現代の魔法なら授業で習っていない魔法も仕様可能というものに変更しておいた、クレアもいくつか授業外で魔法を覚えているからな……というか俺が図書館に行く時に一緒について来てその時に俺が教えただけなんだがな。兎も角、今年は去年みたく、隠蔽工作をして鼻血を出したくはないので、何があっても古代魔法はなしというふうに伝えてある。伝えたのがクレアなだけにちょっと心配だがこれくらいの約束は守れるだろう……


「ねぇ、アリス……なんか失礼なこと考えてない?」

「……考えてないぞ」

「え、その間はなんなの!?」


 大丈夫だろう。




 〈――それでは! “オール”の決勝戦を開始いたします! それでは両者……〉


 俺とクレアの選手紹介が済み、審判が試合開始の合図をした。


 〈始め!〉

「水の精霊よ、その力を我が身に宿せ【ラ・クーア】!」

「いきなり上級魔法かよ」


 開始早々クレアが詠唱省略を使いながら発動させたのは上級水魔法【ラ・クーア】、これは“マルチ”の決勝でジェニーが使った【ウィンドストーム】と同じ系統の魔法で、自分の身体の周囲に荒れ狂う水の塊を出現させるものだ、外見的には渦潮を水中から見たような感じだな。【ウィンドストーム】よりも範囲が狭いが、風の刃のような単発的な攻撃ではなく、常に強力な水流によって攻撃される魔法だ。しかしこの魔法には攻撃以外にも有効な活用法がある、それが防御だ。周囲の水流には隙間はなく、上級魔法故のその威力は強固な盾にも成りうる。さらには魔法が発動している間は使用者の姿が見えないので、相手が次に何を仕掛けてくるか分からないという利点もある。欠点としては上下がガラ空きな点だが、現代の魔法には下から遠隔攻撃するというような魔法は無いし、かといって空中に魔法をうっても山なりに飛ぶ魔法がないのでそれも無理、あとは空を飛んで直接上から攻撃するくらいだが……空を飛ぶわけにもいかないだろう。


「ま、俺も手を抜く気はないぞ」


 普通なら、魔法が終わるまで待ち、その間にこちらも追撃できるように魔法の詠唱をしておくのが定石みたいだが、俺には“魔力眼”がある、今回はこれでいこう。

 “魔力眼”を発動させると、視界に映る水にキラキラとした霧のようなものがかかり、激流と一緒になって回っているのが見えた。そしてその激流の中を注意して見つめていると、小さな霧の塊のようなものが見えた。


「見つけた……【ストーン】」


 魔法を唱えると、俺の手には拳ほどの小さな石が現れた。

 その霧の塊の正体は魔法の“核”だ。簡単にいえば、魔法全体を支えている柱のようなものだ、この“核”を打ち抜かれたり、切り裂かれたりして破壊されると、どんなに強力な魔法でも瞬時に魔法が壊れ、魔力となって霧散してしまう。まぁ上に行けば行くほどこの“核”は小さくなるし、戦闘中なら立ち止まって魔法を凝視することも出来ないので“核”を破壊するのは容易ではない。

 いまのこの状況だからこそ出来ることだ。


「行くぞ、クレアァァ!!」


 元が非力な俺の筋力だけではさすがにあの激流の壁を通り抜けることは出来ないので、流れを読みながら、オーラを一瞬だけ纏って身体能力を強化してから下級土魔法【ストーン】で作り出した石を【ラ・クーア】の激流に投げ込む、そしてきちんと突き抜けたのか、「痛ぁ!」というクレアの声が聞こえたあと、周囲の激流は急速に勢いを無くし、魔法は魔力になって霧散した。

 そしてその中からは少しダメージを受け、腕輪のバーを減らしたクレアが現れた。


「……さっき何したの?」

「石を投げ入れただけだ」


 クレアの質問に俺がそう返すと、クレアは呆れたように溜め息をついて、やれやれというようなポーズをとった。うわ、ムカつく。

 言ってることは正しいんだけどな、石を投げ入れただけだし。


「むぅ、まぁいいよ。でも、次は私の番だよ!」


 そういってクレアは俺に向かって左手を突き出した。


「ここからが本番だよ!」

「はぁ……」


 俺は溜め息をつきながら頭を抑えた。

 目の前に現れたのは数多の巨大な火球、その正体は上級火魔法【ラージファイヤー】おそらく【ラ・クーア】を使った目的は、ジェニーが使った、擬似的な無詠唱を再現する魔法である【アーリーセイズ】を使い、詠唱が長い上級魔法を詠唱するための時間稼ぎだったのだろう。

 普通に詠唱をしても試合である以上待つのだが……まぁ奇襲をかけるという点ではそれで良いのだろうが、まぁこれは俺とかクレアとか、魔力が有り余ってる奴だからこそできる技で、ジェニーやその他の魔法使いならとっくの昔に魔力が切れているレベルだ。

 しかし俺はそんなクレアの攻撃に特に驚きはしない、まぁ……見えてた(・・・・)からなぁ。


「ったく……少しは自重しろよ、面倒事の予感しかしないぞ」


 改めて俺は目の前に迫り来る多数の火球の対策を考える、取り敢えずやりきった顔のクレアにはお仕置きがてら一発お見舞いするとして……まぁ現界まで引き寄せて誘爆なりなんなりすれば……ギリギリ耐えられるか? 


「よし……火の精霊よ、その力を槍とし、突け【ファイヤーピック】」


 流石に上級魔法を詠唱破棄はマズイと思ったので、取り敢えず早口で適当に呪文を詠唱して魔法を発動させる。使った魔法は上級火魔法【ファイヤーピック】、威力は他の上級魔法には劣るが、その強みはロングレンジと、その速度だ。

 俺が発動した炎の細長い槍は一瞬でクレアの目の前までに到達に、呑気していたクレアは寸前までそれに気付かずにそのまま魔法を真正面からくらった。


「よし、成敗完了。さて、お次はこっちだな……」


 あと数秒で魔法は直撃する。俺は意を決して、まずは身体に風の鎧を纏う中級魔法【ウィンドメイル】を使い、その後、迫り来る火球に向けて中級火魔法の【ファイヤーボール】を使う。俺の手から放たれた、【ラージファイヤー】よりも幾分か小さい火の球はそのまま接触に、爆発した。


「おぉわっ!?」


 俺はその爆風に耐え切れずにそのまま吹き飛ばされてしまう。咄嗟に受身を取って腕輪を見てみると既に半分程が削れてしまっている、ついでにさっき発動させたばかりの【ウィンドメイル】もその役目を終えて消滅してしまった。早すぎんよ。

 クレアのほうを見ると、こちらと目線が交差した瞬間に、ニパッと笑ってピースしてきた。なんか良く分からんがイラッときたので追加で【ファイヤースピア】を放っておいた、流石によけられたけど。

 クレアは大声で俺に何かを言っているようだったが、距離が離れているし、歓声も凄いので口の動きしかわからん。が、おそらく怒っているのだろう。サムズアップでもしておこう。


「―――!!」


 するとクレアは怒ったようなポーズをとったあと、再度大量の【ラージファイヤー】を発動させた。


「あいつ……いまの時代の平均的な魔力量知ってんのか……!?」


 流石にもう一度あの攻撃を受けると俺の腕輪のバーが削りきれるので、今度はまだ魔法どうし、少し隙間が空いている内に突っ込むことにする。


「【ファイヤーソード】」


 俺は炎の剣を2本出現させて、火の球の中に突っ込んだ。

 まだまだ隙間が大きいので、始めは避けることができたが、クレアも今度は追加でどんどん放ってくるのでその隙間が埋まっていく、すこし隙間が空いている場合は軌道をズラして隙間を大きくし、隙間が殆ど空いてない場合を2本の炎の剣を使って無理やりこじ開けてどんどんクレアとの距離も詰めていく。

 クレアが焦っているのが分かったが、俺とクレアの距離があと10数メートルになったとき、クレアの魔法の攻撃が止んだ。


「えっ、あれっ!? なんで!?」


 俺がその隙を逃す訳がない、急に魔法が使えなくなり狼狽えるクレアに接近し、炎の剣で数回切り刻んだあと、ラストとばかりに【ファイヤーボール】を打ち込んだ。クレアの腕輪のバーが削りきれたのがチラっと横目に見えた。

 試合、終了だな。


 〈それまで! 勝者、アリス・エステリア選手!! 今年の“オール”を制したのは、なんと魔法科の中等部の3年生であるエステリア選手だぁぁぁ!! 準優勝となってしまったフェイシス選手も――〉


 酷く煩い歓声が響くなか、審判のアナウンスは続いた。




 試合は終わって選手の控え室、クレアの控え室は反対側の筈だが、わざわざこちら側に回り込んできて、部屋の中にあるペンチにドカっと雑に座ったあとに四肢を広げて身体を伸ばし始めた。


「うぁぁ……負けたー!」

「僅差だっただろ」

「全く、どの口が……」


 俺がそう言うとクレアはジト目を返してきた。


「そういえばアリスって“マルチ”と“オール”の二冠だよね、ついでに去年三冠を達成して今年も“オール”の優勝者候補とか言われてたリュークまで倒しちゃって……よかったの?」

「なにが?」

「いや、だって……アリスって面倒事嫌いじゃなかったっけ」

「……大丈夫だろう」


 大丈夫じゃないだろうけど。

 いや、だってさ、クレアが“オール”で戦いたいっていうから参加したは良いものの、俺はBブロックでクレアはCブロックだった。そのあとは同じブロックにアインとレイザックがいたせいで試合をする事になるし、準決勝ではAブロックの代表のリュークと戦うハメになるし……実は“マルチ”のジェニー戦から半ば諦めてた感はあるんだよな。

 正直言っていつまでも実力を隠し通せるわけでもないだろうし、いつかはバレると思ってたからちょっと今回はっちゃけただけだ、多分……まだ大丈夫。まだ常識の範囲内。


「と、いうか、それならお前の方が深刻なんだよ」

「え、なんで?」

「お前、上級魔法使いすぎだろ、この時代の魔法使いは上級魔法数発打ったら魔力無くなるんだぞ?」

「えーっと、まぁ、なんとかなるんじゃない?」

「そうだと良いんだけどな……」


 流石にキツいんじゃないのか……変な輩が寄ってこなけりゃいいが……まぁ来ても追い返すだけだが。


「それよりも! 今日はアリスの二冠達成記念にどこかに食べにいこうよ!」

「話を逸らすな……いや、もういいや……」

「よぉし! 食べるぞー!」

「あんまり食べ過ぎんなよ、今日はおっちゃんに伝えてないんだからな」

「分かってるって!」


 その後、金貨が数枚飛んだ。

カットとか……カットとか……だって、面倒だったんだもの、もう戦闘シーンとか書きたくないでござる……

さてみなさんこんにちは、作者です。今回のでこの章は終わりです、そして次回が最終章、拾いきれてないフラグはありますが、取り敢えず見え見えのフラグだけは拾っていきます!

あと少しですが、お付き合いお願いします!


次回は4日後、かな。

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