第67話 冬
時が進み今は12月の終盤、もう数日で1月だ。
秋頃にナイフを持った男子生徒が暴れるという事件が起こったあと、表立って事件は起こっていない。そういうのも、俺があれほど戦えるというのを知らなかったのかどうなのか、真正面からぶつかるのは危ないとでも思ったのか暗殺者を送り込んでくる人物が多数いた、そのほとんどが貴族だったが。
送られてきた暗殺者は、通称“暗殺者ギルド”と呼ばれる無法者集団に貴族が報酬を支払って依頼された人間たちだった。俺を暗殺するだけには留まらず、クレアを攫おうとしたり、挙句にクレアまで殺そうとしてきやがった、まぁもちろん全部殺りましたけど、慈悲はない。
黙って見ているとどんどん調子に乗ったので、懲りずに暗殺者ギルドから送られてきた刺客から【インセプション】で記憶を読み取り、ギルドに依頼している貴族たちを軽く始末させてもらった。
そのせいで学園では貴族の子息が数名突如行方不明になるという事件になっており、学園七不思議なるものに“神隠し”という形で加えられてしまった。学園も必死になってさがしたようだが、最近はめっきりそんな噂も聞かなくなったから大丈夫だろう。
まぁ貴族ついでにノクタス、シルバニア周辺の暗殺者ギルドも潰しておいたから釣り合いはとれたはず、良し。
と、そんなわけで近頃はのほほんと暮らせており、すごく平和だ。
しかし、俺が件の男子生徒を格闘のみで倒してしまった弊害というのか、何と言うのか。単刀直入に言えば俺にあだ名がついた。
「今日もかっこいいわね、“銀騎士”様?」
孤児院の食堂で朝食を摂っていると、まるで日頃の習慣のようにジェニーが俺をからかってくる。
銀騎士、というのは俺のあだ名……らしい。俺に直接行ってくるのは孤児院の連中と、レイザック、マリアくらいのものだが、あいつらが知っているのなら俺は影でそう呼ばれているのだろう。なんでも、あの時あの場所にいた貴族の令嬢たちが俗にいうお茶会で俺のことを話したところ、一気に学園の女子たちの間で俺の噂という噂が広がりつづけ、ついにこうなるまでに至った。
当初は銀騎士ではなく“銀の貴公子”だったらしいのだが、俺が貴族じゃないことから銀騎士になったらしいけどすごくどうでもいい。というか教室にまで見に来るやつがいるし、男子からの視線ウザイし、クレアは嫉妬して俺に抱きつく力が強くなって痛いしで特に良いことなんてなかった。
ちなみにだがレイザックにも同じようなあだ名がついてるらしいのだが、全然教えてくれない。頑なに拒否するため、【インセプション】は使わずにあいつの口から聞き出すことがいま俺が学校にいく数少ない目的の一つになっている。
「毎日飽きないな」
「えぇ、噂の銀騎士様とひとつ屋根の下って他の娘から嫉妬されるくらいよ、つかれるわぁ……」
「八つ当たりじゃねぇか……」
どうやら俺のことでよく同じクラスの女子たちに絡まれるらしい、悪い意味ではないと思うが。
ジェニーは俺が女だということを知っている数少ない存在に数ヶ月前になった、そういうこともあって俺のことには反応しづらいのだろうか。
しかしだなジェニー、お前がよく俺の部屋にわざわざ本を読みに来て、その際にチラチラと俺のことを見ているのは知っているし、風呂に入っているときも個人浴場の扉の前でウロウロしているのを俺はしっているぞ。しかもその視線がすごく感じなれた視線だった、おいジェニー、お前もか、お前までもか。
「お前モテモテだなッ」
「そう思うなら代われよアイン」
「断固拒否するぜ、面倒だしなッ!」
アインも酷く暑苦しい雰囲気を漂わしながらそう茶化す。こいつ年が経つに連れて暑苦しくなっていってないか? この世界にテニスというスポーツがあれば活躍できそうだ。
それは兎も角、俺もやっと歳も14になり――まだ14だった――1月からは中等部3年だ。高等部には一応行かなくていいみたいだが、基本的にはみんな行くらしい、そっちのほうが箔がついて就職もしやすいのだとか。
シイラも高等部に行き、アインやジェニーは高等部の2年、リュークたちはもう3年だ。
まぁこれで俺とクレアだけが中等部、というわけじゃないんだがな。
俺たちよりもさらに下の子供たちの中から2人、新たに中等部に上がる子供がいた。片方が言ってはなんだが貧弱そうなタレ目の女の子、フィレス・メーゲン、そして釣り目で少し気性が荒い女の子のメイリ・メーゲン、2人は双子だ。姉がフィレスでメイリが妹らしいのだが、普段は立場が丸っきり逆だ。フィレスがどちらかというとインドア派でよく本を読んでいる、メイリは真反対のアウトドア派でよく近所の子供たちと一緒になって遊んでいる、しかもポジションがガキ大将らしい。
それでも2人はよく一緒にいるし、仲が悪いということもない。ちなみに、フィレスは普段は静かだが、怒ると怖いタイプだ、以前メイリが悪ふざけで大怪我を負いそうになったときは後ろに闘神が見えた、メイリも流石に冷や汗ダラダラだった。
その日からフィレスは近所では“裏のボス”と密かに呼ばれているらしい、それが本人にバレないことを祈ろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1月。
ついに中等部の最後の1年となった訳だが、ぶっちゃけて言うとかなり前に図書館で魔導書を読みあさったため、既に高等部で習う範囲まで全て覚えてしまい、魔術学やその他科目も元から知っていることばかりなので、遂に授業を受ける意味を完全に失ってしまった。
今となっては横で居眠りをかますクレアの寝顔をのんびりと観察するか、窓の外を眺めてボーッとするくらいしかない。
たまに授業で当てられるときもあるが、どの教科も授業を受けなくても解ける問題しか出さないので本当にやることがない。
魔法実習でも、あまり実力を出しすぎると面倒なことになるので、周囲をみて、平均気持ち上くらいの力で頑張ってやっている。まぁそうした結果、周りにレイザックやクレアがいるせいか、俺が如何せんショボく見えたらしく、よく勘違いした男子が突っかかってくる、投げ飛ばすけど。
久方ぶりの実力測定の結果なのだが、まず見て欲しい。
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氏名:アリス・エステリア
性別:女
魔力:253125
筋力:E+
体力:D-
適正
火:SSS
水:SSS
風:SSS
土:SSS
光:SSS
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こうだ。魔力はまぁいいだろう、まぁ魔力のほとんどはバハムートの魔力が眷属契約で俺の方にプラスされてるだけなんだが。俺だけの魔力だと多分50000くらいだな。
そして相変わらずの身体能力の低さ、ちなみに今のクレアは――
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氏名:クレア・フェイシス
性別:女
魔力:4502515
筋力:C
体力:B-
適正
火:S
水:A+
風:SSS
土:S-
光:SS-
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こんな感じらしい。さすがの魔力だな、そして筋力体力ともにクレアのほうが上……と。
【ステータス】や冒険者ギルドで使われるこの“ランク”だが、ひとつランクがあがるごとに、次のランクまでの上限がかなり伸びる。とはいってもFやEクラスまでは大したことはない、しかしCやBからはそれが実感できるようになってくる。まぁゲームとかでレベルアップすると、次のレベルまでの必要な経験値が上昇するアレみたいな感じだ。
何が言いたいかというと、今の俺とクレアの身体能力の差が半端ないことになっているということだ。筋力は大体4、5倍くらいはあるんじゃないか? 体力は10倍くらいかな? 日常生活で不備がないのは俺がオーラを使えるからだ。まぁさすがに女子全員がこんな値という訳ではないが……クレアは種族的には精霊――多分――だからな、そのせいもあるんだろうが……どっちみちマリアにも劣っているから脆弱なことに変わりはなかった。
進め……もっと進め……
ここはあまり筆が進まないです……内容スッカスカですがゆるして下さいなんでも(ry
次はおそらく3日後です!