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本気を出さない勇者さま  作者: 霊雨
第6章
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第66話 テンプレフラグが建つ(確信)

 久しぶりに霊獣車に乗った気がする、外は相変わらずだ。


「あのまま行けばいいのに……」

「そうよ、別に女の子の格好で行けばいいじゃない」


 ジェニーの誤解を解いたあと、取り敢えずこれ以上面倒なことにならないように、きちんと扉の鍵を閉めたあと速やかに男子制服に着替えた。その時にジェニーの顔がやけに赤かったがこれ以上変態が増えないことを祈ろう。

 そんなわけでそれが不満なのかクレアとジェニーが残念そうな顔をしている。


「いや、ジェニーでさえ誤解したんだぞ? あのまま行けば確実に女装趣味の変態野郎の烙印が押される」


 ただでさえ面倒なことになってそうなのに……しかも精神的にキツイのはちょっと……

 それに俺が女だということがバレても面倒なことになりそうだからな、自分で言うのもなんだが俺の容姿は割と整ってるし、自己中で勘違い甚だしい貴族のバカ息子とかが手を出してくるんだろうな。女ってだけでかなり下に見られるし、「女は子供を産むための道具」とか言われた日には死人が出るかも知れない。




 霊獣車に乗ること数十分、久々の学院、といっても別にやることはないんだが。

 そろそろ効率の悪い授業を延々と聞くのも飽きてきたし、あのバカでかい図書館で魔導書読みあさろうかな、そうすればクレアにも教えられるし。

 あいつ授業中寝てるから成績あんまり良くないんだよなぁ、特に筆記。

 この学園も一応は教育機関なので所々に考査が入ってくるのだが、クレアは実技は元々得意だったから良いものの、筆記はクラスでも真ん中あたりだからな。筆記考査の点とかも公表はされないが、上位陣20人は実技、筆記ともに張り出される。

 クレアは実技には入るが筆記には入らない、俺はどっちのも入らない。名前は売りたくないからな。

 俺のクラスでは、レイザックとマリアが良く上位に入ってたなあとは貴族(笑)とかも入ってるらしいが、俺はあいつの名前を知らないので確かめようがない。


「アリス……?」


 学園に向かっていると、ふいに声を掛けられた、さわやかな声だな。

 声が聞こえたほうを向くとそっちにはレイザックとマリアがいた。


「ん、久しぶりだな……ってかどうしたお前ら」


 レイザックは俺を見て目を見開いている、目の下には寝不足なのかうっすらと隈が見える。マリアは口を手で押さえて泣きそうになっている、よく見るとマリアにも隈があるな……化粧かなにかで隠してるのか。


「アリス……無事だったのか……」

「勝手に殺すな」


 どうやら俺を心配してのことらしい。マリアに至ってはこんな場にも拘らず大げさに頭を下げてきた、一応伯爵の娘なので、すぐに頭を上げさせたが、その代わりと言わんばかりに手を握ってブンブンしてきた。


「そうだレイザック、聞きたいことがあるんだが」

「どうした?」

「いや、クレアのことだが」


 俺は帰ってきたときのクレアの状態を話し、レイザックがなにかを知っているのかを聞いた。クレアは俺にひっついたままだが……まぁ良いだろう。


「……ごめん」


 俺がそう質問すると、レイザックが苦虫を噛み潰したように顔を顰め、申し訳なさそうに俺に誤ってきた。


「いや、謝罪とかいいから、質問に答えろ」

「あ、あぁ……アリスが消えたあと、クレアを孤児院まで送って、次の登校日も俺とマリアで迎えに行ったんだ」

「マリアもか」

「あぁ、もう体調も良いって言って聞かなくてね。それで、そのまま俺とマリアとでクレアを送って行ったんだが、その時からちょっと様子がおかしかったんだ」


 聞けば、レイザックとマリアがクレアを迎えに行ったところまでは良かったんだが、孤児院から出た途端、クレアが挙動不審になっていたらしい。霊獣車に乗ったてからは、何かに怯えるように膝をかけて黙り込んでいたのだとか。


「それで、ここからが大事なんだ……」

「……なんだ?」

「……クレアが求婚された」


 レイザックは数秒貯めたあと、そんな爆弾を投下してきた。俺にひっついているクレアの身体もビクッと一瞬だけ震える。


「……詳しく」

「求婚というか、愛の告白という方が適切かもしれないけど……兎に角、あの時のクレアの雰囲気から、行けるとでも思ったんだろうね。下級生同級生上級生問わずいろんな人たちが来てさ、クレアもあんな状態だから俺たちも手伝ってたんだけど……大半はすぐに諦めたんだけど、中にはしつこい奴もいてね。そのせいかクレアも学園に来るのを嫌がっちゃって……」

「そうか」

「ごめん、アリスにクレアのことを任せられたのに……」

「いや……今回は仕方がないだろう、しかしなんで急に」

「えっ」

「え?」

「いや……そりゃあ、アリスがクレアの恋人だと思われてるからだと思うよ?」

「なんでだよ」

「毎日仲良く一緒に学園に来るし、どの授業でも一緒だし、ご飯食べるときも一緒だし……誰がどう見ても恋人だよ。あの時のクレアは恋人にフラれて落ち込んでるんだと映ったんじゃないかな、それでクレアを慰めてあわよくば……って感じだと思うよ」

「なるほどな、さっきから視線がウザイと思ってたが……そういうことか……」


 グルリと周囲に視線を移動させてみると、サッと視線をそらす男子生徒が数人ほど、逆に睨んでくる男子生徒も少なからずいた。

 と、いうか、恋人同士だと思われてたのか……まぁ、別に良いけども。


「まだ諦めてないのも居るから……気をつけたほうがいいよ」

「あぁ、分かった」


 しかし視線が鬱陶しいな、なんだよ「死んだんじゃなかったのかよ……」ってだから勝手に殺すなよ。

 学園に着くまでにいろいろと囁かれていたが誰が見ても顔が整ってない非イケメン野郎に「なんだよあいつ、俺の方がイケメンじゃねぇか」って言われたときにはちょっとキレそうになった。そいつには軽い報復として水魔法と土魔法で地面に濁った水たまりを作り、土魔法で地面を隆起させてそいつを泥水の中に叩きつけてやった。ざまぁ。

 しかしそれだけじゃ終わらなかった、学園の門付近で、俺に向けて一人の男子生徒――たぶん上級生――が刃渡りの短いナイフを手に、俺たちのまえに立ちふさがった。周囲の生徒、特に女子生徒が耳障りな金切り声をあげる。


「誰あいつ」

「さぁ、俺も知らないよ」


 聞いてからなんだが、レイザックは特に物怖じてない、なれているのだろうか。

 同じく落ち着いているマリアの方に視線を移すがマリアを首を横に振った、この2人が知らないならおそらくそれほど有名な生徒じゃないんだろうな。


「お、お前ェ、()()クレアちゃんから離れろぉ!」


 そのまま突っ込んでくるなら良かったのだが……アレは予想どうりクレアに惚れてる野郎の一人だったらしいが……ちょっと調子に乗りすぎだな、周りの牽制も兼ねてちょっと張り倒すか。

 ……と、その前に。


「あいつって貴族なの?」

「いや……貴族じゃないと思うよ。ほら、あのナイフ、ちょっと貴族の子息が持つにはお粗末だね」


 言われてみれば、手に持つナイフは装飾が無く、刃も切れ味が悪そうだ。恐らくそこらへんの店ででも買ったのだろう。まぁ貴族じゃないならいいや、特に問題も起こらないだろう、正当防衛正当防衛。


「クレア、ちょっと離れてろ」

「う、うん……」

「僕のクレアちゃんに気安く話しぶぼばぁ!!??」


 抱きつくクレアを離したところで、男子生徒は気でも狂ったのかナイフを振り回しながらこちらに向かってきた。

 俺は全身にオーラを纏って、素早く男子との間合いを詰めたあと、振り回しているナイフを叩き落とし、男子の胸あたりを死なない程度に蹴りつけておく。オーラを纏っていることもあって、男子生徒は少し吹っ飛び、足の感触から骨にヒビが……運が悪ければ折れてるかもしれないが、多分死んでない。大丈夫だろう。

 後押しと言わんばかりに周囲に睨みを聞かせておく、情けない悲鳴も聴こえてきたから多分これで大丈夫だろう。

 しかし、代わりといっちゃあなんだが、女子生徒の中に頬を赤らめてるのが何人かいたから……そっち方面でこんどは面倒になるかもしれない。

3日じゃだめでした、僕です!

なんでしょうね、もうちょっといい感じに進めたかったんですけどね……まぁいいか。これからちょっと時間の流れが早くなります、俗にいう日常パートですかね。

大体いま秋ぐらいなんですが、一気に冬、そして春、夏ときて秋に戻ってくる予定です、そこで使うテンプレフラグを建てておきました。


次は3日後、今度こそ!

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